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夏の機嫌は取りにくいお話。

そういえばもう少しで夏が来る。日本の四季を考えていくならば“夏が来る”と言うことは特別なのだ。当たり前じゃない。僕にとってはとりあえず誕生日が来る。

「想像以上に生きれてるなあ」


と思いながら意外と…まあ…よくも見捨てられず更生時期を迎えられたものだ。そういえば昨年は誕生日の1ヶ月前に事故で運ばれてるんだから尚更奇跡だ。

「親族には感謝をしないとなあ」

と思いながら僕は今、文字を打っている。


夏ということで思い出した話がある。序盤は夏について語るけど後半はきっとその思い出話をと思いながら。しかし、この思考だけでタラタラと連ねていくので、そんな緩さのものかと思って欲しい。


話は戻るが、夏が来ると花粉は落ち着くのに、強敵の蚊とかいう害虫に襲われる。ベープ育ちだからマブダチ。韻を踏みたくなる。蚊も踏みたいようにね。蚊の大群が現れるとキンチョールで一気に処分したくなる。日本の和に似合うものはそう言うものより蚊取り線香だろうけど、アイツとは相性が合わない。だからベープ。あとは暑さが敵。“夏生まれ”の癖して僕は夏とは相性が悪い。


夏の期限を取るのは難しいからね。


ほら、冬は寒ければ肝臓近くにカイロを貼ってユニクロのヒートテックを着てその後色々と服を着込む。


ただ、夏はそうじゃない。脱いでも暑い。

だからクーラーはマジで神


なんて思って、小学生の夏休み時期に読みもしないハリーポッターとかの分厚すぎる小説は読むフリをするものには丁度いい。

学生といえど、年齢的に大人になるとクーラーが当たり前になってしまい、あまり外には出なくなった。

(※一部を除いて。)



当時好きだった人が夜に電話で

「ねえ悠介!!今から歩きに行こうよ!!」

なんて誘ってもらった時には自宅からその人の家の近くである5km先まで歩いて行った。


若き恋はマジで無敵。


失敗しても良い経験だよ。失敗したら臆病になるより次をどうしようか考える。成功したら成功体験なだけ。告白しない選択は僕には無いけど、告白しないことでどうなるか何かしら経験値は溜まる。


夏といっても、昼の太陽がアスファルトに少し暑さを残した状態での涼しさなので、暑すぎず寒すぎず湿気をも残すけど昼よりかは“丁度良い”というその気温からはまだマシな方。だから、エアリズムと半袖の白Tシャツ黒の短パンで問題がない状態。

2人で歩くといっても、その子はポケモンGOをしながらなので毎度、特に行く場所は決まってなかった。


「就職どこに行くの?やっぱ遠く?」

「そうだね…でも悠介は沖縄でしょ?」


そんな話があったのも懐かしい。ちなみに僕はこの当時本気で沖縄での就職を考えていた。

「夏とは相性が悪いのに」だ。しかし、その後の実習で殺されかけ、病気を発症し地元で就職することになる。いや、その地元就職の安定も最終的には無理だった。若い時に目標を決めておくのは大事だった。

自分の夢の方が追い越してくることなんてないんだよね。その夢を諦めて目を背けることは簡単だけれどね。


近くのコンビニへ到着し、僕は瓶のお酒を買う。その子は缶チューハイ。公園に到着し瓶のお酒と缶チューハイで乾杯をした。夏の華金は最高だ。


誰にも邪魔されない

この時間と空間が特別過ぎた。


その後、その子はポケモンをGETしてそれがまたピカチュウだったので更に喜んでいた。たかが電気ねずみに嫉妬しそうだったけど、アイツは世界で人気な奴だから諦めてる。別の話ではマックのナゲットに嫉妬している過去があるからめちゃくちゃ愛は重たいと思う。


その傍らで僕はここ数日のイベント情報をiPhoneで探していた。場所的にとても小さいとはいえ花火が見られる夏祭り。

でもこの時期のこの場所はいつも豪雨や台風だ。

夏の機嫌は悪くなる一方。

日本の四季にホルモンバランスが悪くなる時期があるといえば夏としか思っていない。

結果、誘ってはみたもののやはり豪雨で中止になってしまった。


最後に過ごす“ふたりきり”の最初で最後のこの夏だからこそこの結果に、天気に悲しくなった。それはあまりにも悲しすぎるよ。


人間の機嫌は取れても、夏の機嫌は取りにくい。


夏の機嫌なんて取れるのは誰であり、何だろうか…?あの祭りの日が近付くにつれ必死にティッシュペーパーで沢山作ったてるてる坊主も全て無駄だったのか?

それとも本当に「今から晴れるよ」なんて言って本当に晴れさせる晴れ女を探すべきだったか?あまりにも悔し過ぎて何を間違ったのかの答え合わせをしたくなった。もちろんこの時に答えなんて見つかるわけがない。“自分のせい”ではなく“夏の機嫌が悪かった”なんて言っちゃってるんだから。3割は正解だけど7割は間違いだよねって煽りたくなるね。

過去の僕へ現在の僕より。想いよ届けfor youって感じで。

まあタイムマシーンなんて無いから声なんて届けるのは無理だけど。


そういえば、僕がこの子と“ふたりきり”の夏休みを過ごすにあたってずっと着ていた、白いTシャツはその子から僕への誕生日プレゼントだった。

この夏はほぼ毎日と言っていいほどにすぐに洗濯をして綺麗に乾かしてアイロンをして大事に着ていた。

「悠介さー。それ500円のシャツだよ?」

と、くれた本人から笑いながらバカにされても、僕にとってはそれ以上の価値だ。値段よりも価値が高い。お金で買えない価値がある。プライスレス。


しかし洗い過ぎも良く無い。夏が終わる頃には首回りが少しずつよれていった。たまに2人でコンビニで買った食べたブドウ味のアイスの実のシミが小さく、それで目立ちはしないのが幸いだけど、真っ白のTシャツにはきちんと跡として付いていた。一種のアートじゃん。「紫色のシミかあ」とアイスの実を恨むときはこういう時。アイスの実が悪いんじゃなくてそんな時にその子から相談をされて驚いてしまった僕のせいだ。


大事ならばそのTシャツがよれないように、洗う回数を減らせば良いと言うのが正解なんだと思う。

だけど、夏の機嫌は取ることが難しい。

暑さも同様に機嫌を取ることが難しい。だから夏の暑さは僕のTシャツに汗を残す。汗臭いとは思われたくないのは相手が相手だからと意識しているから尚更だ。

首元のよれには、僕の首元に滴る汗が見えるようになっていた。ワンコインの限界かと言いたくなるけど、使い過ぎれば消耗するから当たり前なことを。

そういえば、汗をかく僕に対し、この子はそんなに汗をそんなにかかないタイプだった。互いに肌は白いのに。少し羨ましさを感じながら。

その後少しの間、夏の機嫌はまた取れなくなった。雨に台風と九州は天気も悪ければ、夏休み故の“互いの都合”という部分でも夏は機嫌が悪かった。運命的な悪さだ。僕はしばらくTシャツを着なかった。着る理由が無いからだ。


それから少しした後、夏の夜の暑さは更に少しだけ涼しくなり過ごしやすい日を作ってくれた。どうも夏の機嫌が良くなったらしい。天気も暑さも。きっと穏やかになる頃。多分夏が消えかかる合図の気がする。セミは変わらず鳴くけれども。セミの鳴き声に安心感を得られるのは、まだ夏だと教えてくれている気がするから。唯一残す夏の合図の様な気がしてる。ただそれだけ。雨の匂いも感じない。

再び、歩きの誘いが僕のLINEに来た。

たかが数日といっても、この誘いが来た時、ベッドに居たぬいぐるみたちの首を絞めるくらいに抱きしめた。ぬいぐるみに対して歪んだ愛になりそうだったと今では反省している。とても久々に箪笥から首元のよれているTシャツの袖に腕を通した。

でもきっとこの夏は最後だと思っていたるわけだ。

だからある種、僕にとって、この子と過ごす夏休みの正装だった。

豪雨で中止になった夏祭りの花火の日、悔しさが強過ぎたんだと思う。その日、傘を差し、走ってコンビニへ行った。煙草を買うついでにレジ近くにある花火セットを見つけて購入していた。豪雨で中止になった花火を見れない代わりに、いつも乾杯をしていた公園で酒を飲みながらでもその花火をしないかと誘った。

当たり前だけど改めて思う。夏祭りの花火よりもめちゃくちゃ小さい花火だった。本当にしょうもない。

でも楽しくて仕方が無かった。

初めて夏の機嫌を取れた気がする。

最後の”ふたりきり“の夏で。

最後の一種類。唯一何故か静かに受け止めなきゃいけないような気がする線香花火。多分線香花火というものに火を付ければ、蕾から静かに咲き乱れて散っていくのが分かっているから。だから静かにしていないと咲かずに終わっちゃうんじゃ無いかと分かってしまうから。”大事にしなければならない“と思ってしまうのはそういうところだと思う。

その線香花火が最後の一本としてそれぞれ手にして火を灯し、弾けていく流れはやはり。もしこれが、最後のこの一本が消えれば、きっとこの夏は終わると僕は確信してしまった。


別に大きな別れではない。夏休みに入って“ふたりきり”で過ごしたのは全て偶然だった。あと数日後に、たった数日後に学校が始まれば僕らは普通に戻るだけだから。きっと隣の”席“のその子は変わりなく僕に対しても“みんなと平等に”話してくれるはずだ。そしてその子の隣に居るのは僕じゃなくて違う人なだけだ。だからあの時アイスの実を落としてしまった。

だから、別にもう会えないわけでもない。

ただ、この夏が終わるだけだから。

それでもこの思い出だけは失いたくは無かった。

その“ふたりきり”の思い出が消えるのが怖くて仕方がない。僕らに来年は存在しないから。今しか無いのが分かってるから。

夏の機嫌は取りにくい。

そういう僕の願いは届かずに、ふとした小さな風でその灯を消した。

「ありがとね悠介。一緒に過ごせて楽しかったよ。」

そう言われた時、僕は汗をかいていたと思いTシャツの袖で沢山拭った。

珍しく汗が止まらないなあ。

と思っていたその汗が、実は涙だったことには気付きたくは無かった。

夏の機嫌は取りにくい。

だけど、それ以上に取りにくいのは夏のせいにしていた僕の機嫌だ。とても弱く、脆すぎた。線香花火の脆さ以下だ。

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