マガジンのカバー画像

糸を手にしてから織物ができるまで。

41
日々の仕事風景をすこしづつ切り取って、つづっています。 下絵→図案→紋意匠図→紋図→糸を選ぶ配色→機場で製織→完成! これらの工程で込められている思いや祈りなどに触れてもらえる機… もっと読む
運営しているクリエイター

#和工房明月

工芸の新しい潮流をみた

工芸の新しい潮流をみた

先日、京都府乙訓郡の”大山崎”に行ってきました。

京都市内の地下には大きな水がめがあり、”おいしい水”もあるので、京都の南のほうには酒造メーカーが多数あります。

大山崎町にもいくつか酒造メーカーがあるのですが、先日行ってきたのは、

『アサヒビール大山崎山荘美術館』

という、JR大山崎駅から徒歩10分くらいの、天王山登り口から山手へとあるいたところに位置する、山の中の美術館です。

今回の目

もっとみる
”おもいで織り”第2期分、織りあがりました。

”おもいで織り”第2期分、織りあがりました。

2020年秋から2021年春にかけて行われた、京都精華大学の”コラボレーション演習”という授業内で誕生した”おもいで織り”というサービス。

過去記事👇 よろしければご参照ください。

2021年の7月に京都精華大学と京都リサーチパークとの共催シンポジウムが行われたときに、

コラボレーション演習授業にお声をかけてくださった、国際文化学部の米原有二先生が登壇されていて、”おもいで織り”の出来上が

もっとみる
椿の柄

椿の柄

先日、墨濃淡の図案をパソコンでぽちぽちと描いているのが楽しいということを記事に書いていました。

週があけて本日もまた、新作予定の”椿の柄”の紋意匠図をぽちぽちと描くことにとりくんでいます。

私たちが携わっている西陣織の機は、2400本もの長い経糸のがたてに通っているところへ、約6~10種類ほどの杼(ひ)をつかいわけて、緯糸(よこいと)を通し、ひと櫛ひとくし、筬(おさ)で抑えながら、約34センチ

もっとみる
スミ濃淡を織物でつくる

スミ濃淡を織物でつくる

和紙に墨汁と筆とで描かれる濃淡には、独特の面白さがあるように感じています。

ちまたにはたくさんの画材がありますが、アクリルガッシュやポスターカラーや油絵具などのように、何度も上から色を塗り重ねられる画材とはその質感が全く違います。

”画材”として同じ目的のために存在しているにもかかわらず、その材質の違いが絵そのものの描き方も変えるし、同じような構図で同じような色味をえらんだとしても、全く異なる

もっとみる
表と裏の世界

表と裏の世界

最近は自分たちの”創作”に取れる時間がふえてきていて、少しづつだけれど、織物でやりたいことが形になってきています。

今回は、龍の柄について書いてみます。

私たちの作っている織物は、経糸(たていと)2400本くらいを使用しています。

その2400本をざっくりと4分割して、緯糸(よこいと)をその経糸にからませて表と裏との”2層”の奥行きがある一枚の布へと作り上げていくのです。

【 表の層 】

もっとみる
ジュエルフラワー

ジュエルフラワー

雑誌などでふとめにすることがあるヨーロッパなどのアンティークの金工やアールヌーヴォーのラインを持つ宝石たち。

湾曲した有機的なラインなんかは、モチーフとされている植物だけでなく、あふれでてくる生命そのもののやわらかさや動きなどもそのなかに見て取れるきがします。

宝石そのものの美しさが、宝石を包むラインによって色気をもたされ、生命の躍動がにじみでているような金工作品たちに対する憧れはつきることが

もっとみる
期間限定・おもいで織り受注いたします!

期間限定・おもいで織り受注いたします!

以前より記事にもかかせていただいておりました、京都精華大学×和工房明月のコラボ企画で誕生しました”おもいで織り”の受注を期間限定で承ることといたしました!

”おもいで織り”とは思い出の写真をA4サイズの額にはまるよう引き伸ばして、緯糸になるように細く裁断したものを織物として「織り込む」ものです。

※以下の記事を参考にご覧ください。

こちらのお写真は、春の受注会で承ったねこちゃんのお写真を引き

もっとみる
『月で読書』試作の配色。

『月で読書』試作の配色。

ありがたいことに、詰まりすぎていた機場のお仕事に、すこしだけ余裕が出てきたみたいです。

ずっと以前から温めていた図案のひとつ。

ウサギさんとかえるさんとが月に仲良く座って、星を見ながら読書をしている図案があります。

今日は緯糸(よこいと)を選んで、ようやく、試作の製織へとまわせる段取りができました。

さて、こちらは紋意匠図といって、織物を織るときの設計図のようなものです。

↓↓↓

よく

もっとみる
北極星を加えた北斗七星の帯

北極星を加えた北斗七星の帯

以前より制作していたもののなかに北斗七星の帯があります。

ドットの中に北斗七星が隠れていて、見る角度をかえることで、その星たちが姿を現す仕掛けをしています。

上の写真の中にある北斗七星を探してくださいね。この写真は、帯のお太鼓部分です。

私が締めているこちらの帯は、お太鼓と同様腹部分にも北斗七星の一部が見え隠れするようになっているのですが、以前よりずっと改良を加えたくて、今回ようやくそれがか

もっとみる
京都精華大学×和工房明月コラボ企画 続編

京都精華大学×和工房明月コラボ企画 続編

今年の三月に、京都精華大学の学生さんとのコラボ企画のご案内をさせていただきました。

それは、都精華大学の学生さんが私たちの『西陣織の技術を用いた商品開発をする』講義の成果発表&商品受注会のご案内でした。

一週間ほど前にご案内させていただいて、あわただしく当日の2021年3月13日(土)を迎えました。

十分な宣伝などは出来なかったのですが、会場の京都市岡崎(平安神宮近く)のみやこめっせ内、京都

もっとみる
染色作家さん&引き箔作家さんとのコラボ企画②

染色作家さん&引き箔作家さんとのコラボ企画②

↑ こちらは前回の記事。

まずは、前回の記事でチラリとご紹介させていただきました、スペシャルな引き箔作家の村田さんについて。

村田さんとは、私が以前所属していた『京都職人工房』で出会い、これまで交流させていただいてきました。

西陣織では分業が進んでいて、村田さんは、西陣織の緯糸として織り込む『引き箔』を専門的に制作されています。

その引き箔の素材感は、独特の美しさと深みを持ち合わせていて、

もっとみる
星と神話

星と神話

今年はとても変化の大きい年で、春の訪れとともに、これまでに経験したことのない「自粛生活」がやってきました。

新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めるための対策だったものの、あらゆるところの流通や生産活動が止まってしまったために、私自身も発信の方法を変える意味合いで、このnoteをはじめました。

この『星と神話』と名づけた帯を制作したのは、2019年の年末。

和工房明月の屋号で仕事をするときに

もっとみる

長いものはなんでも

織物の面白さについて、何が面白いのかを伝えるのはむずかしいもの。

いつもパッションだけが先にあって、具体的なことがちゃんと相手に伝わっているのか疑問が残ります。

なので、からんだ糸をほぐすようにして、一筋づつ取り出すようにしてみたいです。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

織物の一番基本的なことは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)による交錯とからみ方で平面を作るということ。

西陣織の帯は約3

もっとみる
和工房明月、はじめました。

和工房明月、はじめました。

和工房明月は、京都市の北郊外にあるちいさな工房です。

家業が帯のデザイン製造卸業を営んでおり、私と年子の姉とで、家業を継承していけるかどうか?瀬戸際に立ちながら試行錯誤の上で、2018年2月に立ち上げた「帯地にとらわれない」織物ブランド和工房明月(わこうぼうめいげつ)。私と姉のユニット名みたいなものです。

明月(めいげつ)というのは、明るい月と書きます。

父が作詞家の故岩谷登紀子先生から、名

もっとみる