#宿命の守護烙印 第Ⅸ章第85節
これまでずっと敵対してきた存在の話を聞いて、あまりの壮絶な物語に誰も何も言えなくなってしまいます。
(今回もまだ少しキツめの表現がありますので、お気をつけくださいませ m(_ _)m)。
ファウストとメフィストフェレスとは、ドイツの文学作家であるゲーテが書いた『ファウスト』に出てくる主人公と誘惑の悪魔のこと。
(ここでようやく、第Ⅰ章第3節の『ファウスト』関係の引用が回収されているわけですね。)
ファウストはメフィストフェレスと、私の人生における全ての欲望を満たす事が出来たら死後の魂をメフィストフェレスにやろう、みたいな契約をします(かなり昔に読んだ為に記憶が曖昧なので、アバウト解説)。
ロルカのセリフからして、多分クラウドもサタンと何かしらの契約を執り行なっているのでしょう。
クラウドがロルカを仲間に引っ張り込んだのは、キマエラを作るのに必要な材料を集めさせる為、そしてロルカ自身の願いがキマエラにしてほしいというものであった為に実験材料として最適と思った為でしょう。
(場所とタイミングが合ったということもあり、このロルカの後者の願い(たぶん無意識なものですが、アウラとロランをどんな形ででも良いから生き返らせたいというもの)に、サタンが反応したからクラウドと共にやってきたのかもしれません。)
このロルカの話の舞台となっているシュヴァルツヴァルト国グレートヒェン市というのは、ドイツのフランクフルトをモデルとしています。
フランクフルト(・アム・マイン)は、『ファウスト』の作者であるゲーテの出身地ですね。
ドイツはゲルマン神話世界に含まれており、元々北欧神話はゲルマン神話の一角を成すものとして認識されているとの事なのでユグドラシル大陸に入れています。
ただし厳密には、両神話の体系や内容は別物と考えた方が良いようです。
(ロルカが狼王子と言っているのはライズの事、鹿様と言っているのはライサンダーの事です。
つまり、ロルカが自信を新聞記者と偽ってライズにライサンダーの話をした時の事を言っています。)
ロルカが特にアリストに対して話をしてきたのは、もちろんサタンが最も狙っている炎天属性の継承者だから。
しかし実はそれだけでなく、赤と白の闘争を描く事によってアイルランド伝承に出てくる「牛争い」という物語の赤牛と白牛の戦闘をイメージとして取り入れたかったからです。
この牛争いのお話はまた後々解説したいと思いますが、赤と白の闘争的なものがもう一つあります。
それはケルト神話の魔法使いであるマーリンの予言のお話で、このお話では赤竜(夏の象徴)と白竜(冬の象徴)が戦って赤竜の方が勝つ描写があるのです。
(牛争いの牛も、最後は赤い方が勝ちます)。
ここではこれ以上書きませんが、この赤(夏)と白(冬)の闘争は様々な神話や伝説で時々現れるようですね。
それだけ自然界において、重要なシンボルなのかもしれません。
ライサンダーさんがアリストを遠くから見守ってきた描写は、アイルランド伝承における光の神であるルーが息子で半神半人のクーホリンを遠くから密かに見守っているのをモチーフにしています。
しかもルーは時々現れてクーホリンの代わりに戦ったりする事もあったので、ライサンダーさんも所々でちょこちょこ登場させていました。
そんな中でライサンダーさんが自我を保てなくなってきていると言うのは、この話を書いていた頃に高校の授業で習っていた中島敦の『山月記』からイメージしたものでした。
『山月記』の主人公は詩人になりたかったのになる事が出来ず、悩みすぎるあまり虎になってしまい、たまたま近くを通りかかった学生時代の友人を襲ってしまいそうになったところで気がついて思いとどまり、虎になってしまった経緯を友人に語り聞かせるというお話(アバウト解説2)。
『山月記』の主人公は虎になってからというもの、人間だった頃の意識も薄れつつあり、最後にはどうしようもなく虎として生きる道を選ぶこととなります。
・・・ただ、ライサンダーさんはそうはしないようですが・・・。
今回も、ご愛読いただき誠にありがとうございます m(_ _)m
中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。