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連載 #夢で見た中二物語 47

☆The Blue Lagoon & Monochrome World☆

主人公(性別不明)は、夏休みに初めて連れてこられた故郷らしき田舎の島に一ヶ月間滞在することとなる。

親しい知り合いもおらず、親も久しぶりに帰ってきた島の事で忙しそうにしていて、「この島は危険なことも少ないから」と言って自由に過ごしていいと告げられる。

宿題も早々に済ませて暇を持て余した主人公は、他にする事もないので家と島の探索に乗り出す。



主人公の宿泊地は祖母の家らしく、その家は横長の長屋風に作られていた。

家の中の左の扉を開くと、室内にも関わらず海辺の岩礁地帯が拓けて見える。

天井代わりの青空と抜けるような透明度を持った海の風景に、主人公は思わず息をのんだ。

更にその向こう側の扉を開くと、ところどころ穴の空いた岩場が広がり、その穴は深海へと続く海水で満たされていた。

主人公はこの場所をとても気に入り、島生活のほとんどをこの場所で遊んで過ごすこととなった。

浮き輪を持って海面に浮かび気ままに過ごしたり、美しい海中に潜って探検したりして楽しみが尽きない。



しばらくして他の所を探索する気になった主人公は、今度は家の中の右の扉を開く。

田舎風な襖や障子の続くその扉の先には多くの人の気配があったが、何故か人の姿は一切見えず、人影らしきものだけが時々視界の隅をかすめるだけ。

どことなく不思議で不気味な雰囲気を怖れつつ、主人公は狭く長い廊下を歩き進める。

微かな人の気配と、時折人ならざるものに見られているような気配を感じつつ、廊下の端まで辿り着く。

そこには小さな物置場があるだけで、特に何があるわけでもなく外に通じる扉も無さそうだ。

ほんの少しだけ日が射し込む小窓の他には何もないその場所で、主人公はひと時を過ごすことにする。

いつの間にか眠ってしまっていたようで、ふと目を覚ますと日が蔭ってきていたので元の部屋に戻ることにした。



しかし長い廊下を戻って開いた扉の先は、何故かロケットやエンジンなどが展示された科学博物館のような所。

暗い展示室は迷路のようで、主人公は何かに追われているかのように闇の中をさまよい歩く事になる。

そんな中でも展示品は素晴らしく、宇宙や星々の写真などに励まされながらようやく博物館を抜け出す。

抜け出した先は夜の海辺で、空には満天の星が人工の光に邪魔されることなく輝いていた。

そんな中で主人公は誰かに声をかけられたような気がして振り向くと、そこには一つの人影があった。



どうも子供らしいその人影は主人公相手に追いかけっこをしたいだけらしく、主人公はそれを了承して鬼役になり人影を追いかけ始める。

ぼんやりとした人影は砂浜に足跡だけを残し、その不思議な光景に主人公は驚くやら呆れるやら。

そうして随分長いこと浜辺を走り回っていたが、追いかけていた人影が突然消えた。

主人公は驚いたが、ふと視線をあげてみると見渡す限りの大海原が目の前に広がっていた。

主人公の前にはもはや砂浜も道もなくなっていて、生き物のように揺らめく真っ黒な海がただ恐ろしげに佇んでいた。

その事に怖れを感じた主人公は元の場所に引き返そうとしたが、後ろを振り向いてみるとそちらも道がなくなっていた。

ほんのわずかな足場だけが残された海のど真ん中で、主人公はただ何をするわけでもなく呆然と立っていた。



・・・ふと目を覚ますと、ごく普通の古民家の縁側に寝ころんでいた。

もう何度目になるか分からない故郷への帰省、夕暮れ時の凪とその後に吹く涼しげな風。

古風な蚊取り線香に食べかけのスイカ、昔ながらのウチワといった夏に欠かせない物達。

すべてが夢物語だったと言うには、妙にリアルな夏の夢だった気がする。

夢でも現でも、夜空に打ち上がった花火が夏の終わりを告げた。

・・・視界の端で、姿の見えない人影が草履で歩いているような音を聞いた気がした・・・。

☆☆☆



雰囲気的には自然が支配する世界に対する畏敬の念と、少々ホラーチックな世界が融合したような感じ。

はっきりと姿を持った人がほとんどおらず、人影のみにとどまっている部分もその雰囲気を強めている気がします。

個人的な話ではありますが、最近ホラーアドベンチャー的なゲームを見たりやったりする事が多かったのと、どこかの島に行きたいと思っていたのが夢に反映されたのだと思われます。

タイトルは実際に夢に出てきたタイトルテロップや、夢を見た直後にパッと思いついた単語やイメージからつけています(今回は後者)。

なので、タイトルがない夢物語もたくさん(というか、ほとんど)あります。




中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。