グリューワインと蜜

尾ひれの折れた銀色のイルカの魔法を
信じて信じて 下駄箱の前で座って待っていた
青い上靴の少女が ハイヒールを履く
六本木のクリスマスマーケットは色付いていた

パラレルワールドの きみは内気で
絵筆の水彩絵の具を 水道水に溶かしてしまう
錆びれた滑り台に右手をかけて
映り込む姿は ぐにゃり 歪んで 鏡の世界へ

言えないことだらけね
何度目かの冬の涙は 睫毛の先で凍えた
こんなことをするために
生まれてきたんじゃない
真っ青なカクテルが 彼女の喉を
毒々しく染めてゆく

壊れた誰かの落とし物 拾って
手のひらで温めて 自分だけの宝物

寒空の街で 煌びやかな光 集めて
枠に収めて みんなが羨む 宝物

本当に欲しいものが
眠っても 眠っても 届かない

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