丸山 篤郎

丸山 篤郎

マガジン

  • 空よりも軽い

    これはすべて、現実のこと。

  • パースペクティブ

    冒険は、日常の中にあるのだ。

  • 森とクジラ

    都会を離れて海辺の町へやってきたミトは、海岸沿いのカフェでオオノと、森のなかでキタムラさんと出会う。静かに降り積もる時間とそれぞれの思い。

  • Game Start

    子供と一緒に始めたオンラインゲームのなかで、ぼくは知らない男に声を掛けられた。彼に託されたものは…。

  • 神様がきた

    郊外の町を舞台に、日常に差す光を描く小説です。

記事一覧

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出会うタイミング

書店に行くと、読みたいと思う本、面白そうだと思う本がたくさんある。 青山ブックセンター本店が好きなので、月に一度の散髪のあとに立ち寄ることが多い。美容師さんに髪…

丸山 篤郎
4年前
67

緑の生活

丸山 篤郎
3週間前
4

僕たちのできること

丸山 篤郎
1か月前
4

空よりも軽い (4)

 部下の子がね、泣いちゃって、もう泣くなんてやめなよって思ったけど会議室で二人だったからうんうんって話すのを聞いた、わたしも若い頃あったな、あれ、つらいとか口惜…

丸山 篤郎
2か月前
5

空よりも軽い (3)

 毎朝六時に起きて、顔を洗って中公園に行くのは大変だ。もっと寝ていたいのに外が明るい。ビニールの紐が通された青い台紙に白いざらざらした紙が貼り付けてあって、ラジ…

丸山 篤郎
2か月前
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空よりも軽い (2)

 私が出会った小学生のなかで、広田くんは一番いろんなことを知っていた。学校の勉強は苦手のようだったが、彼は私の知らないことをいっぱい話してくれた。広田くんには中…

丸山 篤郎
2か月前
4

空よりも軽い (1)

   空よりも軽い 丸山 篤郎   光が流れ落ちてゆくのを見ていたら、それは明るい雨のようだった。  ゆっくりと光が白く溶けて、私はキッチンの壁を見上げてい…

丸山 篤郎
2か月前
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タイミング

丸山 篤郎
3か月前
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選択

丸山 篤郎
3か月前
4

賀正

丸山 篤郎
4か月前
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Season's Greetings

丸山 篤郎
5か月前
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季節巡り

丸山 篤郎
5か月前
8

秋深し

丸山 篤郎
6か月前
7

調和

丸山 篤郎
8か月前
3
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広隆寺

丸山 篤郎
9か月前
9

美と光

丸山 篤郎
1年前
5
固定された記事

出会うタイミング

書店に行くと、読みたいと思う本、面白そうだと思う本がたくさんある。 青山ブックセンター本店が好きなので、月に一度の散髪のあとに立ち寄ることが多い。美容師さんに髪を切ってもらったあとはフレッシュな気分になるので、そのフィーリングのまま店内に入っていくのが好きだ。 入ってすぐ左手に洋書のファンション誌コーナーがあって、いつもそこで立ち止まる。男性誌の表紙を見渡し、気に入ったものがあれば手に取ってページをめくる。ファッション誌特有の重みも、指先に吸いつくような紙質も、心をワクワ

僕たちのできること

空よりも軽い (4)

 部下の子がね、泣いちゃって、もう泣くなんてやめなよって思ったけど会議室で二人だったからうんうんって話すのを聞いた、わたしも若い頃あったな、あれ、つらいとか口惜しいとか、そういうんじゃないんだよね。なんだかわからないかたまりがブワッてあふれてくるの、自分でもどうしようもないんだよ、それで泣いたらあとはスッとするんだよね。浄化っていうの? そう、わたしたちは自分で浄化できるんだ、それって側から見たら滑稽かもしれないけど、美しいことだってわたしは思うんだよね。  キッチンで話し

空よりも軽い (3)

 毎朝六時に起きて、顔を洗って中公園に行くのは大変だ。もっと寝ていたいのに外が明るい。ビニールの紐が通された青い台紙に白いざらざらした紙が貼り付けてあって、ラジオ体操が終わると大人がハンコを押してくれる。元気そうな男の子のハンコ。七時前には太陽が高く上って公園の広場にほとんど日陰はない。広場を取り囲む森から蝉たちの合唱が響いていて、池田くんも大木くんも初日だけ来て、あとはずっといない。大木くんの弟は毎朝来ている。まだまだ先だと思っていたらいつの間にかハンコはいっぱい押されてい

空よりも軽い (2)

 私が出会った小学生のなかで、広田くんは一番いろんなことを知っていた。学校の勉強は苦手のようだったが、彼は私の知らないことをいっぱい話してくれた。広田くんには中学一年のお兄ちゃんと、小学二年のコウタくんが弟にいて、時々彼の話に出てきた。  ゴールデンウィーク明けの教室は窓の外がやけに青くて、日の差さない室内は暗かった。短い休み時間に私の隣にやってきた広田くんは、しんちゃん、バイクに乗ったことあるか? とたずねた。私は首を振った後、あ、でも、お祖父ちゃんのバイクの後ろに乗せて

空よりも軽い (1)

   空よりも軽い 丸山 篤郎   光が流れ落ちてゆくのを見ていたら、それは明るい雨のようだった。  ゆっくりと光が白く溶けて、私はキッチンの壁を見上げていた。壁には五十音のポスターが貼ってあって、〈く〉だと茶色くてまるいクマ、〈ふ〉だと白いカバーに包まれた布団、そうやって文字の横にイラストが描いてある。  これは? あ。これは? い。  母親が指さす文字を見上げ、私は答える。私が文字を読み上げるたびに母親はおかっぱの髪を軽く揺らし、嬉しそうな顔をして、そう、

タイミング

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Season's Greetings