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アメリカ ルート66を巡る旅 13 ニューメキシコ州 西部

シカゴの起点を出発しニューメキシコ州アルバカーキまでやってきました。とても長い旅ですが、各町にはそれぞれ色があり、住人の生活があり、日本では伝えられていない「真のアメリカ」を感じるものとなりました。日本人向けのパッケージツアーやガイドもないので、実際にルート66を旅することは簡単ではないかもしれませんが、短期間のツアー旅行では得ることの出来ないものを心に溜めることができました。

さて、今回もニューメキシコ州を紹介します。前回までは、テキサス州からニューメキシコ州に入りツゥクムカリ、サンタ・ロサという懐かしさの漂う2つの町を通り過ぎました。そして、美しい観光地サンタ・フェ、久しぶりの大都市アルバカーキを紹介しました。アルバカーキを出発し、アリゾナの州境までのニューメキシコ州は、山岳地帯となります。シェラネバダ山脈を登るのです。いよいよ本格的に山を登り始め標高はグンと上がっていきます。シカゴから続いたグレートプレーンズは完全に終了し、ここからはしばらく高地となります。

今回はニューメキシコ州の州都アルバカーキからアリゾナ州との境のギャラップまでの22kmを紹介します。止まらずに走ると3時間10分の距離です。

※コラム:太陽を追いかける
ご存じの通り、アメリカには国内に時差があります。西に向かって走る我々は時間帯のラインを越えると時間を1時間戻すということをしました。タイムゾーンが変わると1時間得するのです。大きく地球規模で考えて見てみると、我々は太陽を追いかけて走っているのです。でも太陽の速度(地球の自転)のほうが車の速度よりも早いので、時間はどんどん先に行ってしまいます。ただ、ちょっとだけですが時間のマジックが起こります。太陽は先に行ってしまいますが、通常我々が定点で感じるよりもちょっとだけ太陽に追いついていくのです。
夕方に重なると、かなり長い間マジックアワーを楽しめることになるのです。マジックアワーというのは、日が暮れる時に見られるオレンジ色の世界。普段は15分程で終わってしまいます。我々が体験したのは、1時間以上も延々とマジックアワーが続くのです。夕日を追いかけ20分くらい経つと、空は赤くなります。速度を上げ西に走り続けると、40分以上この美しい夕焼けを見ることが出来ます。そして赤い空は紫色になりました。この不思議な色の空も20分くらい続きます。そしてやっと暗くなり、夜へと向かうのです。この空のマジック。真西に走る高速道路で、晴れた日ならば世界中どこでも体験できますが、かなりの距離をまっすぐ西に進まなければならないため日本では不可能です。アメリカなど東西に長い土地があり、しかも平らであることが条件となると、実はそれほど体験できる場所がないような気がします。皆さんもアメリカ横断する際は、是非この1時間以上もある魔法の時間を体験してみてください。

旧道ルート66
ニューメキシコ州の旧ルート66は、州間高速40号線に塗りつぶされています。結果我々は高速道路を走ることになります。州間高速40号線は、周辺に特にみるべきものも少ないです。ニューメキシコ州に入ってから標高は高くなっていますが、アルバカーキを過ぎるとアリゾナに向かいさらに登っていきます。そして、そこはメサが立ち並ぶ景色となります。丁度アメリカ大陸のコンチネンタル・ディバイドがある地域です。ここを境に雨は西海岸と東海岸に別れて流れていくのです。景色はグランドキャニオンやモニュメント・バレーのような奇妙なものに変わってきます。このあたりはグランド・サークルと呼ばれるアメリカ国立公園郡の東端ということになります。山と言うより垂直に切り立った壁のようなメサ、その上に住む人々、深く削り取られた渓谷が現れてきます。急に別の惑星に来てしまったような景色に驚かされますが、このような不思議な景色は、この先アリゾナ州が終わりカリフォルニア州に入る手前まで続くのです。

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グランツ・カフェの看板

<Grants Cafe>
Grantsは、地球ではないような景色の中にポツンとある町です。町の景色は乾いた山脈の西部劇の街みたいです。人口は9000人。かつて鉄道建設のために作られた町だそうですが、現在は農業が主要産業だそうです。そんな町にルート66が通ったので、宿場町という顔も持つことになりました。町は長閑で古き良きアメリカを残しています。グランツ・レストランもそんな佇まいの食堂です。
このレストランは、既に閉業してしまっているようです。ルート66らしい建物がまたひとつ消えてしまいました。写真の看板はまだ残っています。この看板、ルート66観光客の間では有名ですので、いつまでも残してほしいものです。

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<Route 66 Sign>
グランツには、ベタな写真撮影スポットがります。観光目的で作られたゲートは、なかなか下品ですが、こういう文化もルート66観光で見られるスポットです。

※コラム:冬のルート66
グランツからは、さらに標高が上がります。冬は、猛吹雪になることもあります。前回お話したアルバカーキ手前の山越え以上の雪となり、クラッシュしている車は数知れず、なんだか大変なことになってきますのでご注意を。私は、冬ニューメキシコ州の端まで行こうと決意し、西に向かいました。結果、事故に遭遇することもなく無事予定通りルート66を走破しましたが、今振り返ってみると冬のグランツ-ギャラップ間はとても危険でした。もし冬にこの辺りを旅する計画を立てる場合は、雪と事故の対策を必ず行って下さい。

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<Roadrunner Motel>
ニューメキシコ州最後の町Gallupにあるなんともかわいいモーテルです。隣にカフェも併設されています。ギャラップは旧ルート66がメインストリートになっていますので、観光は簡単です。テーマはルーニーチューンズのアニメです。確かにあのアニメの舞台はこの辺りです。コヨーテが罠を仕掛けている景色にそっくりです。ギャラップの町は、町の東側にこのロードランナー・モーテルがあり、西側に次に紹介するエル・ランチョがあるので、その間を散策すれば観光は終わりです。古き良きアメリカ、60年代のアメリカ文化の色を残しつつ、西部開拓時代の色も併せ持っています。この2つの相容れないデザインセンスが混じっているのが面白かったです。東側が60年代のアメリカ、そして西側が西部劇のようです。それがグラデーションとなって変わっていきます。

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<Motel El Rancho>
かつて西部劇が全盛だった1937年にグリフィスによって建てられたのがエル・ランチョです。この町には、西部劇映画の撮影のベースが作られました。エル・ランチョはハリウッドからやってくるキャストやスタッフを収容する豪華なホテルとして繁栄したのです。現在は古い史跡のような場所になっていますが、宿泊も可能です。ホテルに入るとここに滞在したスターの写真が飾られています。映画史に残る有名人の殆どはこのホテルに来ているのではないでしょうか。ジョン・ウェイン、ロナルド・レーガン...彼らがここにいたことを考えるだけで楽しくなります。
観光客の多くは、ここを訪れ写真を撮りレストランで食事をしたりしていますが、宿泊している人はあまりいない感じでした。とても古い建物なので、ちょっと怖かったです(ホーンテッド・マンションみたい)。

※コラム:6州を走破して
イリノイ州、ミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州と6州を横断したルート66の旅、遂にここギャラップで6州目が終了です。ルート66にはいくつものエリア分けが存在します。例えば州毎に8個、例えば旧開拓地とフロンティアで2つに分けるなどなどです。私が実際に旅して感じたのは、これまでの6州と、この後の2州にも大きな変化があるということです。今までは、どちらかというとアメリカの歴史を感じ、ちょっと寂しげな住人達の先祖の話を聞き、中西部という独特の文化を感じてきたように思います。
この後、アリゾナ州に入りカリフォルニア州サンタモニカの終点までは、美しい大自然、明るい街、住人たちの笑顔、希望、勇気が感じられるようになります。おそらく標高や地形なども関係しているように思いますが、アリゾナから先はミッドウエストではなくウエストコーストを感じるのです。

次回はニューメキシコを終え、次の州アリゾナです。お楽しみに。

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