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父の世界


私は父の世界の住人だった



両親の仲はよく子供たちもみんな明るく育ってた

家の中は笑い声が絶えなくて

家族でのお出かけ

イベントは常にみんなで楽しんだ



それが父の世界
父だけが望んで作った世界

私たちはその父の世界という舞台で
父の望む役をずっとして生きてきた




物心ついたときには妹がいて
少し年の離れた兄は私をよく可愛がってくれたように思う

兄弟仲はよかった

ただ両親の愛情のかけ方が歪んでいただけで

私は間違えて妹を恨んでいたし
兄には親から得られることのない、親の愛情を求めてしまっていた


今になって語ることもないが
私たち兄弟はみな父の世界の住人だったのだと思う


父の世界では父が絶対的な存在で

すべてが父の言うように事が運ぶ
それが父のシナリオなので、それ以外のものは何も起こらない

思うことがあっても口にしてはいけない
うっかり父の望まないことを発したときは、まるで反逆者のような扱いをされて存在自体を否定される
事実、私はよく父の思う通りの行動をとるためと思われる説教をよくされた
父のシナリオ通りに動けない役者は必要なかったのだと思う

不思議なもので、違和感を感じていたことも
繰り返し説かれていくと、納得させられていく
今はこれが洗脳だったと思えるが
当時の私はまだ子供で、違和感の中で苦しむことしかできなかった


何年も何年も

父の思う役を演じて
自分を殺して
常に笑顔で

役を演じきらなければ必要のない存在になってしまう
私の居場所はなくなってしまう

それが怖くて、違和感が苦しくて
死を選んだこともあったが
現実から逃げることはできなかった

逃げたくて、逆に父に手をかけることも考えたが
妄想から幻覚を見るだけで
実現することはなかった


結局私にはなにもできない

何からも逃げられない


私は一生この役を演じていくのかと
この束縛に縛られたままなのかと


諦めたまま
何も望まないように
感情をなるべくもたないように

溢れ出る感情は文字に吐き出して
ノートは何冊も溜まっていった






大人になってやっと
私は父の呪縛から解放された


もう抜け出したい
この監視された世界から



やっと父に言えた

自分に向き合って
自分の心を解放するための言葉を見つけ
伝えることができた


理解してくれたかはわからない
ただ
それまでの行動からは一歩引いたようには感じられるほどになった

今はこの距離でもいい

近すぎた距離が少し離れただけでも心は軽い


父に向き合って私の想いを伝えたとき
私は私の自由を求めてるにも関わらず
父を苦しめている罪人のような気持ちになった


これはきっと
父を絶対的な存在として
疑うことを許されずに育ってきた結果なのだろうと思う


そこから離れられたことに今
心からホッとしている




父との関係を切ることにしても
また自分の存在を否定してしまう思いが残ってしまうようで怖いから
今はまだこのままで


ここから始めてみようと思う



今はそれが私の第一歩

父の世界から抜け出した新しい一歩になる



𓂃꙳⋆

「お前はいつからそんなに弱くなっちゃったんだ?」

この時に父から言われた言葉

弱いから病気になった
強くなれば病気は治る
前はそんなじゃなかったのにな、と
過去を持ち出し、今を否定する

必死に向き合っても
私の言葉は届かない




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