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記憶のない結婚(4)


それまで彼が私を思い通りにするためにしてきた方法は

〈私を他者と関わらせない〉
友人と会うのは許可制でよほどのことがなければ許可してもらえなかった
友人だけではなく家族とも極力関わらなくなるように仕向けてきた
家族が私にとって悪い影響を与えてるなどと言ったり、家族のことを否定してきて私にもそう思い込ませた

〈1人で外出させない〉
病気であるから危ないので1人では出かけないようにと指示された
心配しているような形にみえるが、彼がいないと外出できなくなるように、彼がいないと何もできなくなるようにするためだった

〈私を常に否定する〉
否定されることによって自信がなくなり、私が考えたりすることすべてが間違っているのではないかという不安をもたせ
彼の意見を聞かなくては何もできなくなるようにするためだった

〈私を褒める〉
彼の言う事をきいたとき
彼の思い通りになったとき
とにかく褒められて大事にされているという実感がもてるようなことをする
その行動が正しいもの、と私に認識させるためのものだった


こういう事が日々繰り返され、私はすべてを手放すことになったのだが
病状が回復するにつれ、彼がしてくるそれらのことからの抜け道を探すようになった

少しずつ、少しずつ
それでも確実に
私は彼の「洗脳」を解いていき

彼の「思い通りにならない私」になれてきていた

そうなると
彼はさらに私を否定することを徹底してきた
元の何も考えられない「私」をつくりたくて


考えておこした行動は否定
私の考え方と私を否定する

私がどれだけ間違ったことを考えているかを訴え
彼の考え方通りにすることがどれだけみんなが幸せでいられるかという彼の自分勝手な理屈を説かれる

『そんなことない!』

負けまいと必死に抗う私に
押さえつけようと彼も必死に次の手を打つ

そんな戦いのようなことを繰り返していたら

────彼が壊れた


優しいと思っていた彼は

何かあれば怒鳴り散らし
物に当たる

イライラして棚ごとひっくり返したこともあった
私の言葉が気に入らなければテーブルを蹴飛ばす
私と言い合いをして、終わったと思い布団に入れば
気持ちが収まらないのか髪の毛を掴んでベッドから引きずり下ろされる

『このままではダメだ』

霞んでいた脳内が少しハッキリしてくると
物事を正常に考えられるようになってきた

私はもう籠の中の鳥のように繋がれたくない
私は否定されるだけの存在でいたくない
私はちゃんと笑いたいんだ

やっと周りが見えるようになって
やっと記憶が繋がるようになって
光が戻ってきた

それでも
これまで続いた支配がすぐに私の中からなくなるわけではなく
終わらない戦いの中で彼に対しての恐怖は消えなかった

彼が切れる合図となる「舌打ち」は
今でも震えるほど怖い

いつスイッチを踏んだのかもわからないまま
急に怒鳴られていたからか
いきなり大きな声を出されたり怒られたりすると
震えるに留まらず、過呼吸になってしまう

そんな傷痕は残ってしまったが
私はこの結婚を終わらせることが私の回復にも繋がると信じて

彼との最後の戦いに臨む




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イラストお借りしました♡︎
ありがとうございます(ㅅ´ ˘ `)☆*。


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