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読書日記 不毛地帯

見事なサラリーマンの最後だった。
実際にシベリア抑留された私の実の祖父から直接話を聞いたことはないが主人公、壹岐正から祖父の辛い体験を垣間見たようだった。商社、政治家、自衛隊と組織は違えど出世や保身の為に自分の人生や家族を犠牲にして生きた戦後の作中の人々。令和となり、仕事や生き方に対する価値観は変容し様々な選択肢がある時代となった。一方で、傍から見ると政治の世界だけはずっと変わらず金と地位に固執する伝統を守りつづけている。

社会人になってから沈まぬ太陽と女系家族を読んだことがあったが、それらに比べるとエンディングがさっぱりしていて爽やかな読了感。社長が壱岐を雇う際に託した組織改革は予期せぬ形で身を結ぶことになるところが最もエキサイティングな場面。トータルおよそ2600頁の長編ではあるがシベリア抑留以外は読みやすいので是非とも読んでいただきたい。

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