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毎日しんどいあなたのための本

とある図書館司書である私が密かにやっているストレス解消法、それはずばり「絵本を読むこと」。

大人になってから、絵本をじっくり読む機会は意識してとらない限りはそうそう訪れないだろう。


「絵本って子どもが読むものでしょ?」
「大人が読んで楽しめるの?」
と思われる方もいるかもしれないけれど

大人こそ絵本を読むべき!!!!!

と声を大にして言いたい。


あなたも、絵本を読んでいる間だけは日々のあれやこれやを忘れて、物語の世界に思いっきり浸ってみてはいかがだろうか。

■大人も考えさせられる絵本

□『それしかないわけないでしょう』ヨシタケシンスケ著(白泉社刊)

子どもから大人まで楽しめる絵本の代表格が、ヨシタケシンスケさんのシリーズである。
なかでもおすすめなのが本書。

お兄ちゃんから「みらいのせかいは たいへんなことばかり」と聞いて、不安でいっぱいになっている女の子に、

「だーいじょうぶよ!みらいがどうなるかなんてだれにもわかんないんだから」

と返すおばあちゃん。

それを聞いた女の子は、楽しくて素敵なみらいをどんどん思い浮かべていく、というストーリー。

・ロボットがだっこして どこでもつれていってくれるみらい

・おとしたいちごを ギリギリで ひろってくれるみらい


など、ユーモアあふれる様々なみらいにクスッと笑えて、何にも囚われない子どもの発想の豊かさに元気をもらえる。

大人になってからも「それしかないわけないでしょう」の考え方を忘れずにいたい。

■文字のない絵本

□『漂流物』デイヴィッド・ウィーズナー作(BL出版刊)

少年が浜辺で拾った一台のカメラ。現像した写真に写っていたものは…。

文字のない絵本だけれど、一枚一枚の写真から徐々に物語が広がっていく様子が見てとれる。

主人公の少年の心の中をのぞいているかのような、精緻なイラストが想像力をかきたてる。

一部コマ割りの手法がとられているのも新鮮。

□『しま』マルク・ヤンセン作(福音館書店刊)

オランダ出身の作者による、大胆でありながらも繊細な色使いが特徴の絵本。

ページをめくるたびにガラッと変化する、島の上の人々とカメと、それらを取り巻く海の鮮やかさに目を奪われる。

文字のない絵本だからこそ、ストーリーだけでなく、絵そのものの魅力がより感じられる。

■美しい描写を楽しむ

□『うさぎのニコラス』リチャード・スキャリー絵/オーレ・リソム作(好学社刊)

写実的なタッチで、季節とともに移り変わる風景を描いた作品。

どのページにも、リアルで生き生きとしたいきものたちが登場する。ページをめくる手を止めて、いきものたち一つひとつの美しい描写に魅入ってほしい。

そして、豊かな自然を満喫するうさぎのニコラスの愛らしさたるや…

この本を読んだ後は外に出て、ニコラスのように周りの風景をじっくり楽しむようにしながら散歩してみてはいかがだろうか。

■ちょっと切ないけれど素敵なストーリー

□『おもいで星がかがやくとき』刀根里衣著(NHK出版刊)

「あなたは、そのひとが 
この世に 生きていたあかし。
あふれるおもいでで、
大切なひとを てらしつづけてあげて」

大切なひとを失ったピナを諭す、お星さまのこの言葉に胸を打たれる。

物語に花を添える、幻想的なイラストも刀根里衣さんの魅力だ。
私の大好きな絵本のうちの一冊である。

■童心に帰る

□『ぬいぐるみのおとまりかい』風木一人作/岡田千晶絵(岩崎書店刊)

子どもの頃、あなたにもお気に入りのぬいぐるみやおもちゃがあったのではないだろうか。
ぜひその時の気持ちを思い出しながら読んでいただきたい。

ぬいぐるみと一緒に絵本の読み聞かせに参加したり、疲れて眠くなったぬいぐるみに布団をかけてあげたり…

夜の図書館で遊ぶぬいぐるみたちの描写がとにかく可愛い!


□『ともだちのひっこし』宮野聡子作(PHP研究所刊)

自分が小学生の頃を振り返ってみると、引っ越しに伴うクラスメイトの入れ替わりが頻繁にあった覚えがある。

そこまで仲がよかったわけでもない同級生でも、もう会えなくなるのかと思うとじわじわ寂しさが押し寄せてくるようなあの時の気持ちを思い出す。

この物語では、仲のいい友達同士のお別れが描かれている。私にはその経験がないけれど、きっとこういう気持ちになるんだろうなぁ、と想像してみる。

少し切ないけれど、この子たちは近い将来再会できたんだろうな、と思える良い終わり方だった。

読み終わった後、子どもの頃は仲がよかったけれど、最近会っていないあの人たちと久しぶりに連絡をとってみたくなった。

■憎めないおもしろキャラ

□『ぶたのたね』佐々木マキ作・絵(絵本館刊)

走るのが遅くて、ぶたを捕まえたことのないおおかみが、なんとかしてぶたを食べようとするお話。

「ぶたのたねで、ぶたのなる木を育てる」という発想が秀逸だし、木にぶら下がっているぶたたちの絵がなんともシュールで面白さをより引き出している。

個人的に、佐々木マキさんの絵のタッチが大好物である。
おおかみの表情もコミカルで憎めない。むしろ応援してあげたくなる。

『ぶたのたね』シリーズは現在4作まであるので、おおかみはぶたを食べることができるのか気になる方はぜひ。



今回は8冊の絵本を取り上げたが、ほかにも紹介しきれないほど素敵な絵本はたくさんある。

上記のうちどれか1冊でも心に響いたものがあり、そこから新たに自分のお気に入りの本に出会う機会がみなさんのなかに生まれてくれれば、図書館司書としてこれ以上の喜びはない。

気が向いた時にはぜひお近くの図書館や書店に行って絵本を手に取ってみてほしい。

「大人が絵本をカウンターに持っていくのはちょっと恥ずかしいかも…」な方、図書館司書が利用者と絵本トークで盛り上がることなんて日常茶飯事!なんならおすすめの絵本紹介させてください!という感じなので気にせず利用してもらいたい。

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