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私の「何度でも読み返したくなる本」


以前こちらのnoteで紹介した一冊。


『成瀬は天下を取りにいく』/宮島未奈著(新潮社)が2024年本屋大賞にノミネートされた。

大賞は4月10日に発表される。
同僚の図書館司書たちの間では、『星を編む』/凪良ゆう著(講談社)を有力視する声が多い。
私も読んでみて、確かに本屋大賞に値する作品のように感じた。


だが私は『成瀬』を推したい。

個人的には、ノミネート作品の中で最も"何度も読み返したい"作品と感じたのが、この『成瀬』だ。

主人公が突飛なキャラクターとして描かれる作品はほかにもたくさんあるが、なかでも本書の主人公、成瀬あかりは間違いなく唯一無二だ。

初めは単に「ぶっ飛んだ子だな」という印象で、特に好きでも嫌いでもなかったのだけれど、成瀬の行動の意図や思考が明らかになっていくたびに、いつのまにか彼女の虜になっていた。

成瀬の抱く数々の願望は、いつだって予測不能で非現実的なことのように思えるけれど、それでも成瀬は成し遂げてしまう。

実在する場所も多く描かれているので、聖地巡礼をして成瀬の足跡を辿りたくなる。

そんな現実離れした「成瀬」という存在と、滋賀県を舞台にした「リアルな世界観」の化学反応に私は魅了されているのだと思う。


成瀬の空気感、滋賀の街並み。私はまだ滋賀県を訪れたことはないのだが、読むたびになぜだか懐かしさを感じる。

本は、時間や空間を超えて、読者にさまざまな世界を体験させてくれる。

成瀬の物語に出会ってから、日常のふとした時に「成瀬に会いに行きたいな」と思うようになった私は、まさに滋賀に行くために、成瀬に会うために、本書を開く。

そうすれば、日々の喧騒を一旦忘れて、いつでも『成瀬』の世界に浸ることができる。

この、成瀬という愛すべきキャラクター、魅力満載の滋賀という舞台。
やはりこれが「何度でも読み返したくなる」魔力の正体だろうか。

今年の1月には、待望の続編も出版された。

『成瀬は信じた道をいく』/宮島未奈著(新潮社)


カバーイラストには"びわこ湖大津観光大使"のタスキをかけた成瀬の姿が。

「成瀬がついに観光大使に…?」と想像がふくらむ、なにやら気になる表紙だ。

続編でもそこには相変わらずの成瀬がいたので嬉しくなった。


大学生になった成瀬。そこで出会った新たな人々や成瀬の両親も登場し、物語はさらにパワーアップしている。

内容は全5篇。ざっくり紹介すると、

・成瀬にファンができる話
・大学入試で出会った見ず知らずの受験生を成瀬宅に泊める話
・アルバイト先の万引き犯を捕まえるために成瀬とクレーマーが手を組む話
・成瀬がびわ湖大津観光大使に応募する話
・成瀬が失踪する話

こんな感じだ。これだけでもすでにその面白さが伝わるのではないだろうか。

私が特に好きなのは、4篇目の「コンビーフはうまい」。
「急にコンビーフの話題?」と思いきや、成瀬がびわ湖大津観光大使に応募する話だ。
しかしながらタイトルの伏線回収が見事だった。

今作も、まだ終わってほしくないと思いながらあっという間に読み終えてしまった。

すでに続々編を待ちわびているが、たとえ出ないとしてもそれでいいのかもしれない。
私はいつだってこの2作品を読み返して、成瀬に会いにいくことができるのだから。




うーん…でもやっぱり続々編も読みたい!!!


1・2作目ともにこちらから試し読みができるので未読の方はぜひ。(2024年3月現在)

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