三度目の応援歌〜三つの三行日記
自分の誕生日が好きではない理由の一つに、昔からいつもそれは春休み中にやってきて、しかも春休みとは新年度の始まる前の期待と、不安で始まる嵐の前の静けさのような一種不気味な、どこか宙ぶらりんの気持ちを引きずったままの、何とも言い難いそわそわする時期であるからかもしれない。
そんな時期のせいか、友達から「プレゼントは何が欲しいの?」とか、「バースデーケーキはどんなのがいいの?」とか、「どんな風にお部屋を飾り付けるの?」等と聞かれたこともなく、むしろ家で洋裁をしながら家計を助けていた母は、いくら誕生日だからと言って、小さな団地の部屋に広げている布地を片付けるわけにはいかず、「クラスが変わっちゃうからお友達呼んでも来てくれないでしょ。」と言ってバースデーパーティなどはしたこともなかった。
そのせいかどうなのかは定かでないが、なんとなく自分の誕生日がいつなのか他人に言うのを避けるようになり、日にちが近づくにつれ毎日焦るような自暴自棄になるような、それは年を重ねることになのか、誰も自分の誕生日など気にせずにきっとその日が過ぎてゆくのだろう、というややもすれば恐怖のような、そんなふつふつと煮えきらない大きな鍋にただアクばかりが浮いて出てくるのを見つめている、まだ春浅い満月の夜。
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初めて腕にした時は横にも縦にもサイズがただただ大きくて、重さもずっしりとしてコンナのと仕事ができるのかと疑問に思ったものだったが、使い始めてから二年ほど経った今では特にそれ程気にかけることもなくなった、直径43mm、30気圧、存在感のあるセラミックバゼルに、ほのかな海中を思わせる爽やかなグラデーショングリーンダイヤルの、仕事用機械式ダイバーズウォッチ。
男でも「イカツ過ぎる」と敬遠するこの手のタイプを、何故それ程愛着を持って使いこなせているのかと言えば、数年前に初めてこの店で採用の面接をして以来、妙な信用を置いて仕事を共にし、今ではそのマニアック過ぎるほどの知識と人望でブランド総括を任されている上司に「ベルトをミラネーゼにすればキミにぴったり、コレでいけ。」と太鼓判を押されるようにあてがわれてから、同時に売上もじりじり上がり、とうとう店で一番の稼ぎ頭となったからだった。
なんとなく幸運をもたらすダイヤルのような気がして離れがたいのも素知らぬ顔で、ここに来てこのダイバーズがカタログ落ちすることが決定し、突然別のパートナーを探してくれと誕生日を前に宣言されたら、新しいヤツに乗り換えられる嬉しさよりもこの愛着あるイカツいヤツに未練たらたら、いっそコイツと月まで逃げて行ってしまおうか、と空を見つめている、まだ春浅い満月の夜。
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そろそろ日本じゃ桜も終わるという頃なのに、ここではウールが手放せなくて、人肌恋しい一人寝の夜は、アナタにもらったフリースジャゲット頬へ擦り寄せ時々泣いて、ぎゅっと抱きしめふるさと思う。
火の玉みたいに燃える男が横に居なくて、冷たい足を持て余しながらなかなか眠れずモコモコくつ下履いて寝るけど、最近暑くて「ダレか触って」と言わんばかりに、ねぼけまなこでくつ下脱いでふと気がついたらどこいった?
うつらうつらと夜明け前から、まさぐりながらくつ下探して、疲れた頃には足先冷たく、これじゃあまたもう寝らんない、このまま起きたら寝不足ねむねむ、仕事にならないもうちと寝かせて、気がつく頃には空も白やむ、まだ春浅い満月の夜。
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姐さん、再び歳を重ねて。
今年も希望を重ねたい。
アナタと胸を重ねたい。
いやん♥
あはん♥
また一つ、オトナになっちゃいましたん😘
今年もよろしくどーぞ。
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