見出し画像

【妄想突撃インタビュー!】 ③ 波乱万丈、英 一蝶(はなぶさ いっちょう)

大好評を頂いている、江戸のマルチタレント、反逆のアウトサイダー、英一蝶画伯への突撃インタビュー!



今回は、第三弾!
そろそろ終わりにしたいですっ。

一蝶「ん〜〜、この一杯に生きてるね〜〜。久々に呑むと美味いんだ。ヱビスビールって。」

「てかもう二杯目ですよ、画伯。そろそろ三宅島から江戸へ戻った頃のお話聞かせて頂きましょうかね。そ、恵比寿描きにヱビスビール呑ませるとなんかイイネタ出るかなー、と思って。」

一蝶「ですよねー。だーいぶ引っ張っちゃっいましたからねー。出すと言えば、ネタと言う訳じゃないですけど、ちょうど初エッセイの『朝清水記』っていうの出したら、7代将軍が亡くなりました。」

「え。エッセイまで。ホントマルチタレントですよね〜。ま、島ぐらしで時間だけはいっぱいあったってことですね。
それで、江戸に戻ってすぐ描いたのが、この絵。」

一蝶「これはね、『四条河原納涼図』っていうタイトルで、京都の四条河原の川床で夕涼みする人を描いたんですよね。まあ、いわゆる都市風俗画です。当時結構流行りのモチーフで。」

「まずこれ非常にゆるゆる〜。それでいて、軽やかでリズミカル。背景の処理も空間が実に巧み! コレって巻絵慣れしている正統派絵師のお仕事ですyo! こんなに流れるような感覚って、やっぱり天性のモノなんでしょうね〜。さすが画伯っ🤩」

『四条河原納涼図』

一蝶「いや〜。あざっす。照れるな〜。なんでそんなに巻絵っぽいかって言うと、コレ人物の配置。皆夕涼みでだら〜んとしてるところ、一番右のおんぶされた人だけが、急いでるっぽいですよね。さっと画面外から入ってきたみたいで、やっぱり見てる人もそっから入っちゃう。で、そこから後のお話が始まる。」

「自然と左へ導きますよね。そう、右から左なんです。日本の絵巻って。で、どんどん長く、続いていきますよね。日本人の目の動きって、縦書き右から読むんでそうなんですけど、確かそれを知らない欧米人が、横文字本を読むように左から見ていって全く話がわからんかったってねえ?」

一蝶「そうです。日本は右に重心かかってる感じあるでしょ。車は他の島国と同じくイギリス式で左側通行ですけど、舞台なんかもそう。『上手(かみて)』って言ったら舞台向かって右。神手(かみて)もカケてるのかな。それで、最初のお台の中心にはあんまし楽しんでないような旦那を置いて、周りには盃を運ぶ女性、ミュージシャンなんかを配しちゃって、味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚(いやん♡)なんかの五感を刺激。左の台にはそれに相反するように女を鏡のように配し、憂いを表現。最後の左端の男は呑みすぎちゃってマーライオン。」

「あー、それで一応、起承転結、完了してるんですね。その頃マーライオンが有名だったとは思えませんが、やっぱスゴいわ。これだけで宴の全貌と男と女の気持ちの表と裏、描き分けちゃってますもんね。」

一蝶「あざっす(笑)。そうこれはね、ちょっと前に群馬県立美術館で『江戸の風雅』っていう展覧会やった時に出ていた作品ですね。」

展覧会図録
作品リスト

「あー、結構沢山ありますね。画伯の作品。お、師匠の安信センセや狩野探幽と同格じゃないですかっ!」

一蝶「え、ま、一応😅」

左頁、上段左の絵に注目

「あ、ココにありますね。あの噂の絵『朝妻船』が。」

一蝶「あ~、いやいや、姐さん。そんな傷口に塩を擦り込むような。」

「でもね、姐さん好きなのはもう一つ別にあるんです。」

一蝶「え! 宴図が好きだと思ってたけど、実は違うんですか?」

「えー、だって画伯が画伯であることの意義って、"元狩野派"ってだけじゃないですよね。それは過去の栄光であって。画伯の魅力ってのは、やっぱりアウトロー的な感覚で破門されちゃった、ってとこにあって、それは何故かと考えてみると異端児的にブラックユーモアを描き続けたってことでもある。」

一蝶「いや姐さん、そんなにはっきり言ってくれなくても(苦笑)。そりゃあね、NGだった吉原風俗や古典パロディの方が描いてて楽しいし、スキでしたよね。それにその頃の人たちもそう言ったアレンジの軽妙洒脱な感じがスキだったから。」

「でっしょ〜。じゃあ、コレ見てくださいよ。」

「御室法師図」

一蝶「あ、コレね。でもこれなんかは事後の図ですよ。ビフォーアフターの "アフター" の方。だったらまずコレ見てくださいよ。」

もちろんこちらがビフォー

「え、コレ何です? 宴たけなわじゃないですか。屋根とか天井描かない吹抜屋台式ね、ちゃんと障子襖で外界から仕切る、正に絵巻風。すやり霞までは無いですけどね。でもコレは画伯の作品じゃないですよね。」

一蝶「うん、違いますけど、当時結構よく知られたお題でね。それじゃー、ココでいきなりクイズですっ! 呑み会には付き物でしょ?
でんっ。Q) 日本の三大古典随筆と言えば、何でしょう!?
ヒント:その中のエピソードを一枚目の絵にしましたっ!」

「えー、それってマジな高校入試の問題みたいじゃないですか。」

一蝶「え、でも答えられます?そうこれズバリの中学古典。

一つ目は、『春はあけぼの』の枕草子 by 清少納言。
二つ目は、『ゆく川の流れは絶えずして』の方丈記 by 鴨長明。
そして三つ目は、『つれづれなるままに』の徒然草 by 吉田兼好。
ですヨ。姐さん。大丈夫ですか? 娘ちゃんのテストに出ますよ。」

「出るでしょうね! でもテストするのは娘ちゃんですヨ🙄いつも手伝わされてるけど。まあ、何とか上の学年いけること決まったんだからいーじゃないですかっ。夏休みも近いことだし、呑も呑もっ!」

一蝶「いーんですか。ママりんそんなことで。
いや呑むのはいいんですけど。」

「あー、そ~だ、そ〜だ。さっきのビフォーアフター!
で? 画伯が描いたのは『徒然草』第何段? そういやここ右上に "仁和寺" って入ってますけど、当時そんなにスキャンダラスだったんですか? 仁和寺って。芥川龍之介センセも書いてらっしゃいましたけどね。これちょっと良くわかりませんね。」

一蝶「ハイハイ、53段ですね。まずビフォーの絵でノリノリの宴会中、拍手喝采のお坊さん達、いいんでしょうか。酔い酔いでウケを追求するあまり、一人のお坊さんが、近くにある三本足のカナエを頭に被る。窮屈なので、鼻をペタンと押して顔を無理矢理ねじ込み踊りだす。参加者一同、大ドッヒャー😆
踊り疲れて、足ガナエから頭を取り外そうとすると全く抜けない。そこで一同「ヤバい」と戸惑う。メチャクチャに引っ張っていると、あらあら血みどろに。仕方がないので叩き割ろうとしても、そう簡単に割れないどころか、叩けば叩くほど、音が響いて我慢ができない。なんてったって青銅製。もはや手の施しようも無く、カナエの三本角の上からスケスケの浴衣を掛けて手を引き、杖を突かせて医者へ。
こんなアホなシーンがありますかっ!
そろそろアホアホ祭りじゃないんですかねぇ。

で、ボクはその医者へ行ったところを描いてみたんです。アフターのほうね。
コレ記事になりそだな。

道中、人に気味悪がられた後、医者と向き合っている異様な姿想像したら、面白すぎてよじれ隊! 何か言ってもカナエの中でこもっちゃって、聞き取れないし。すると医者に「こんな症状は、医学書にも治療法がないし、過去の症例も聞いたことがありませんね」とか言われちゃって。途方に暮れながら仁和寺に戻る。友達や、ヨボヨボの母親が枕元に集まり悲しんで泣く。しかし、本人ただただ放心。で結局、みんなで首が取れそうなぐらい思いきり引っ張ると、イエイ、抜けたーっ🙌 かなり危ない命拾いだったー。耳と鼻が陥没したけど。
んで、おしまい。」

「ひえ〜、スゴいお話じゃないですかっ! 耳鼻陥没してんですね! そりゃあ思わず描いちゃうのもわかるっ!
楽しいことも度がすぎるとイタイ結果が待っている、って教訓ですね。確かにこの頃って "鼻" になんかこだわりがあったんでしょうかね。仁和寺の和尚の鼻に対する執着も凄かったですけど。」

一蝶「あー、あの芥川センセの『鼻』はかの夏目漱石センセにも絶賛されてましたからね。てかね、あの頃、やっぱり身体的欠陥があるっていうのがかなりダメージだったんですね。しかも軽い刑だと労役で、その上になると耳鼻削ぎ刑、その後は死刑ですから。だからそれをどうやってユーモアでオブラートに包むか、ってのに力量かかってるのかな、と。」

「画伯なりのチャレンジだったわけですね。」

一蝶「しょーゆーこと。いや〜、姐さん、よくぞわかってくれましたん。ところで姐さんの絵も見せてくださいよ。」

「そうおっしゃるなら見てみましょうか。今回はね、江戸の町ってよりその周辺ですね。」

いも洗ひ 川越え光る 月水面


え! 今頃気づいた水面の月!
これはきっと新河岸川でしょ。


突然の雨はドラマティックレイン。
奥にいるのは芭蕉ちゃん?


雨の季節のワンシーン


万年キャンプ生活ですヨ
自炊が得意なんです




どことな〜くウサン臭いんですよね〜。
この指の先には何が?

「うん、やっぱりね、姐さんがなんで画伯の絵が好きかというと、この距離感ですね。いつも近いんですよ。敷居が高くない。よく見ていると、画伯が何に興味を引かれているのかがわかるようなね。今まで普通の庶民は好きで描いたけど、まだ縁起物の七福神なんか未経験なんで、姐さんもこれからチャレンジしちゃおうかな、なんて。福を呼ぶために。」

一蝶「そうなの。大先生の立派な作品は良い所に良い状態で保管してあるけれど、意外とこういう庶民派のほうが後々、資料として役に立ったりするわけなんだな。
いいじゃないですか! 縁起物、ぜひ描いて欲しいですね。このご時世。」

「確かに。でもね、江戸へ戻ってきたあとも、なかなか運良く昔のご贔屓さんに上手く持ち上げてもらえましたからね。ラッキーでしたよ、画伯は。芸人活動も何とか続けられたみたいだし。」

一蝶「そうなんですよ。ホントに感謝の気持ちでいっぱいです。招福です。今度夏休みで江戸へ来た折には、ぜひ寄ってやってくださいな。深川の宜雲寺に。」


「そーです、そーです。『一蝶寺』。ここに1724年からいらっしゃるんですよね。73歳で亡くなってから。」

一蝶「そう…みたいですよね。」

「あー、この辺ね。清澄白河一度行きたいと思ってたんですよ。前から。この辺で、カフェ飯屋の『GINGER TOKYO』っていうのやってらっしゃる、下町のレコード屋さんがいて、前から覗いてみたいなー、と思っていたんでね、いいですよ、行っちゃいますよ、今度の夏休みは!」


一蝶「おー、いよいよ秒読み開始ですか!? 姐さん!待ってますよー。いや、目出度いなー。あっ、ここね! ヱビスビール追加! ボクね、嬉しくなってきたからね、じゃーんじゃん持って来ちゃってくださいねー!」




🍻 🍻 🍻 🍻 🍻




どうやら姐さんと一蝶画伯の宴はまだまだ続くようですが。

こちらはそろそろお開きにさせていただこうと思います。

またいつかお会いする日まで。



きゃうん♥

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?