記憶の遺留物
瞳が綺麗だとよく言ってもらえます。この瞳に夕焼けを映すのが好き。
夜道にスリッパが落ちていた。両足分。不思議な気持ちになった。私だけが面白そうに写真を撮っていた。散歩中の犬だけが少し興味深そうにしていて、自転車に乗っている人も歩いている人もみんな避ける、次の日スリッパは無くなっていた。誰が持ち帰ったのだろう。
布団を一部新調した。マットレスを買って、毛布を買い替えた。寝具レベルが500くらいになった気がする。部屋がとても冷えるので、これくらいぬくぬくしないと眠れない。
最近は夜更かしして中古で買ったポケモンをしています。夜が深くなっても孤独を楽しむ術があるのは、寧ろ健康に良い。ということにしておく。
なんで自分は音楽が好きだと言っておきながら一年分聴いた音楽を振り返らないのだろうと思った。考えていた。なんだろうな、その年によく聴いた音楽はその年にリリースされたものだけじゃあきっとなくて、私の場合何かしらの記憶に結びついた形で思い出として保管されたりする。そこに一年とか単位は関係ない。けれどその記憶は殆どが忘れ去られてしまうもので、記憶の遺留物として感情だけが遺る。こんな話、昔にもしたな。
だから、音楽を聴くとたまに苦しくなったりする。遺留物の感情が音楽に解けている。
まあ単に、面倒なのかも。身体から溢れてしまうくらいに音楽を享受しているのだから、振り返って纏めるなんて法外な量になってしまうし、取り纏められるのも取り纏めるのも、苦手。
靴下と本を買った。友達にも会った。半年近くワーホリに行っていて会えなかった、大学で初めてできた友達。四年間一緒に居てもらえて嬉しいな。私にはもったいないくらいの、優しくて誰のことも決して傷つけない友達。本当に同じ人間なのかな?と思う。会話していると自分の言動が思うよりもずっと否定の言葉に溢れていることに気づく。それが酷く野蛮に思えて、もっと気をつけようと、背筋がしゃんとする。受け入れる、認めることのしなやかさと強さを教えてくれる友達、大切にしなきゃな。
深夜一時に少しだけ外に出る。マンションの廊下灯は一つおきに消えていて、息を深く吸い込みたくなる、冷えていて澄んだ空気。呼吸の仕方を少しだけ思い出す。迷惑にならない程度に小さく小さくかすれた声で歌ってみる。こんな日のことも忘れてしまうんだろうな。いつかきっと忘れる。けれど、夜の冷たさに触れた時またこの感情だけを思い出せたら良いと思うよ。
久々に彼に逢える日が近づいていて、実感が一つも湧かないことにびっくりする。何をするでもなくぼんやりきょとんとした毎日を送っていて、本当に彼に逢えるのだろうか、と意味もなく不安になってみたりする。雪で新幹線が止まったりしませんように。
また性懲りもなく愛について考えてみたりしていて、大切に想う、ということがすなわちそれなんだろうけれど、大切に想っていることを証明する術もなく、できることならば貴方に手にとってもらいたいのに、ともどかしくやるせない。
貴方が金縛りに苦しむことなく健やかに眠れるにはどうしたらいいんだろうか、喘息気味の貴方が苛まれることなくよく眠れるにはどうしたらいいんだろうか。貴方のささやかで愛おしい日常が素晴らしいものであるように守りぬいていきたくて、それがいつか貴方自身だけの役目ではなくなることを祈っている。
来週からは少し暖かくなるらしい。
そうしたらまた深呼吸がしたい。生きていて良かったと思いたい。
ずっと貴方のおかげで生きてこられているよ。
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