人間って変な生き物

青い透明な空を見上げると、白い太陽の光が目を細めさせる。冷たい空気が心地良い。

何年振りだろう、と少し目線を落とし、見渡す限り広く大きく広がる青々とした木々を見ながら思う。

ここには初めて来るはずなのに、懐かしかった。

気づけば、薄汚く淀んだ空気に包まれた街中で、毎日同じ時間、同じ順序で、同じ場所に行き、同じ事をしている毎日だった。

それが人間の住む世界なのだと、疑いもなく信じ込み、日々をやり過ごしていたその街のすぐそばに、こんなにもかけ離れた空気の流れる世界が、あったなんて。

いや。知っていたはずだ。

幼い頃は、むしろこの心地良い世界が当たり前だった。

歳を重ねるうちに、いつの間にか、なりたくなかった種類の人間になろうとしている。

行きたい場所に行き、見たいものを見て、時間と心身を存分に味わうことが、この社会では許されない。

それこそが「生きる」ということなのに、それをすれば社会から孤立してしまう。

街を行き交う人々のほとんどが、孤立しないように影を薄め、壊れないために自分を殺しながら生きている気がする。

こんなのは嫌だ、とみんなおもっていながら、なぜ我慢しなくてはならないのだろう。

人間は、優れた頭脳を持ちながら、それを無意味な方向に使っている。それはきっと、与えられた恵みに目を向けず、持っていないものを欲しがる、欲深さのせいだ。

「人間って変な生き物だ」

って、動物たちはきっと不思議に思いながら、人間を見ているのだろう。

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