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猫のいない庭

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綺蝶レナ初の長編小説 貴方はこの違和感に気づけますか
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#猫のいない庭

猫のいない庭⑦

猫のいない庭⑦

第一〇話『乱気』

私は山本さんちの庭で軽く雑談をした。奥さんやお子さんはいないそうだ。仕事に人生を捧げたんだとか。良い余生を送るために田舎に家を買ってたまに戻っているらしい。現役で印刷業の仕事を経営してらっしゃるだとか。本当に他愛もない話だった。私のことも少しは聞かれたが特にこれと言って何もなかった。『力になれずにすまないね、またもし会えたらお茶でもしようか。』やっぱり普通の人だと思った。あたり

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猫のいない庭⑥

猫のいない庭⑥

第九話『近隣』
花岡さんのいう新しく越してきた人を私は尋ねることにした。花岡さんよるとその人が引っ越してきてからこの超音波は酷くなったとのこと。また、その人はうちからも近いことが判明した。約40〜50m位かと思う。わざわざメジャーで測ったら変人だと思われるのでこれで勘弁して欲しい。前にもご近所さんにご挨拶に伺ったがその新しい隣人だけは不在だったことを思い出した。あまり家にはいないのだろうか。少し私

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猫のいない庭⑤

猫のいない庭⑤

第八話『超音波』
私は花岡さんには聞こえて金子さん達には聞こえなかった超音波について調べることにした。都内に住んでいた時に所々施設の前を通るとプチプチっと耳を刺すような感覚をみなさんは味わったことがあるだろうか。
そう、超音波だ。一般的には若者避けに使われたりする。屯したり非行を避けるためだろう。
そこで何歳までが聞こえるのかを検証すべく色々な資料をみて調べてみた。二〜三年前に某企業が実験をした。

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猫のいない庭③

猫のいない庭③

第六話『カステラ』

私は、すかさず家に帰りみぃちゃんを呼ぶ。
呼んだって来ないのだけれど、そんなことより心配した。

あんな音がずっと毎日聞こえていたのかと思うと。
本当に申し訳なくて辛かった。

カレンダーを見た。みぃちゃんを受け入れたのは4月20日で今日が24日なので5日目だ。
流石におかしくなってしまうのではないかとみぃちゃんをゲージに入れて訳もわからず抱きしめた。
猫の知識どころか、引っ

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猫のいない庭②

猫のいない庭②

第三話『猫の多い街』
みぃちゃんを飼うときに色々調べてみたら、この街は本当に猫の多い街らしい。
確かにホームセンターにも、犬雑貨より猫雑貨の方が心なしか多かった気がしている。

みぃちゃんはツンデレと言いましょうか、常に私にお尻を向けている。
みぃちゃんは、ちゅーるより煮干しが好きだと娘さんに伺いましたのでお徳用レベルのデカくて沢山入ってるやつをあげてみようと思う。

みぃちゃんは人馴れはしている

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猫のいない庭①

猫のいない庭①

この話は読んでいくうちに変化していきます。

第一話『引越し』

私は百猫市に引っ越した26歳作家だ。
元は都内に住んでいたが、パンデミックで仕事が減り家賃が払えず渋々田舎に引っ越してきた。
出身は神奈川だが、親元に帰るのはどうも私の性格上難しく、全く知らない街に引っ越してきたというわけだ。

この辺りは温泉などが有名らしい。ググって見つけた土地だが家賃も安く、近隣の人も色々教えてくれる親切な場所

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