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マノミコト

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こころのおくのほう。毎日更新。     マルハダカ。
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#言葉

2021/8/28 「彫り師」

誕生日、好きなもの、好きなこと、嫌いなこと。およそ、友人関係と呼べる間柄の人達ならわかり合っていると推測できることをまったく知らない。授業中だけ成り立つ関係性。 それでも、その人達に救われることがある。励みの言葉を投げ掛けられるより、ずっとホッとする、安心するものだ。ただ名前を聞くだけで、解きほぐされる。先人の名は偉大だ。 しかし、何に救われて、どこを満たしてくれて、なぜ、安心したのか。何もわからない。違う時に同じことが起こったとして、今日と同じような感覚を受けるのか。そ

2021/8/13 「探しているもの」

ずっと何かを探している。まだ見たことのない何かを求めて、歩き続けてきた。何が見たいのか。何がこの目に映れば、私は満足するのだろう。 それは多分「あい」だと思う。多分ではない。必ず、そうなのだ。まだ見たことのない「あい」。私は「あい」が見てみたい。見たことのない。これも嘘だ。見たことは、ある。一度だけ。それももう、5、6年前のこと。それでもまだ、鮮明に思い出されるあの景色。あれだけは、忘れたくない。お年を召したとして、孫ができたとして。その景色だけは語り継ごうと決めている。ど

2021/7/21 「フラット」

この雑誌はカタカナがよく出てくるなと毎回思う。暗闇に光を落とせばすぐ消えて。また落としたと思ったら、またすぐ、暗闇に戻っていく。そう、いうなればホタル。カタカナがホタルのように一つ一つの文章の中に潜んでいて、私は毎回、アッ!アッ!と光の誘いにまんまと乗っかってしまうのだ。 わざとだと思う。多分、距離をとるために。文字が文字としてそこにある。 文章を書いていると、ここぞ!という時に妙な力が入る。伝えたい私からのメッセージに、良い言葉とか美しい言葉を多めに、そして大胆に。「見

2021/7/17 「初心」

思って、感じ取ることが好き。面白い見方、私なりの見方は要らない。相手の本当の一部分に近づけたらそれが一番良い。これ以上の嬉しさはないのである。 「本当」に指先で触れてみたい。掌全体ではなく指先で、皮膚に触れないよう産毛だけにタッチしてみたいのだ。「本当」はきっと青い炎だ。それを守るのが皮膚で、産毛は何だろう。守ることはできないが、体温を保つために外側から柔らかに包み込むのがそれだろうか。 汚い外界の空気に全面が触れ「守る者」や「本当」が腐ってしまわぬよう、無数の仲間と、高

2021/6/11 「バラバラ」

バラバラにしたい。一個一個丁寧に、バラバラにしたいのだ。一語一句間違えないように音読するし、その後でもう一度、指先で文章を追いかけてノートに映していく。 二段階目の行いはまとめているわけではなく、感じようとしているのだと最近になって気が付いた。音読段階では声を通して文章を感じ、ここでは書く営みを通して、全体の世界観と、一語一句それぞれの持つ温度を感じようとしているわけだ。 正直とても愉しい。共感が得られるとは思わないが、それでも声を大にして伝えたくなった。とても愉しいのだ

2021/6/3 「汚れまみれ」

「作り物の世界で一瞬の本物を。」「僕らの作っているものはすべて作り物。」 あの世界は真実じゃない。作っている本人達も、占い師も、父も。みんなそうやって言っていた。「嘘を息のように吐き出してる。」こんな感じで言っていた人もいたなと、眠気覚ましのカフェラテを作っている時に思い出した。スプーンで泡を混ぜる。そろそろ冷たい飲み物にしたいと、それが最近の願望。 作り物の中に本物を。ってこれはすごく面白い。その一瞬があるらしい。私にはわからない。でも、その瞬間が好きだと言って、それを

2021/5/31 「叶えたい夢」

もし、自分が本当に夢を叶えたら。自分のやりたいことをやれるようになったら。誰か涙を流してくれるような人は目の前にいるのだろうか。ふとそんなことを考えてしまったわけである。そんな暇はないというのに。調子に乗ってしまっているのかもしれない。 これだけやってきて、やっと夢が叶うという時に、自分以外の人が一人も喜んでくれないかもしれないという光景を想像すると悲しくなった。想像できてしまったことが何より私を苦しめた。 もし本当に、つくることができて名前が載ることになって、本当にそれ

2021/5/27 「人生とは舞台」

水を汲みに来るお客さんの姿が映る。コップを探していたけれど、見つけたみたいだ。自分の分と友人の分。あ、注ぎ口もう少しちゃんと閉めて。と心で伝えてみる。あ、後で、閉めに行こう、と心に刻む。 カップルで来たお客さんが席移動の希望をお願いしてくる。もちろん、オッケーである。お二人のために、と思い、流し入れた生地はいつの間にかきつね以上の色になっていた。まぁ、大丈夫だろうと思いながらも若干の不安を抱えたが、上からかけていくメイプルシロップにいつも以上の愛を込めて上書きすることにし

2021/5/23 「脳みそ出血」

これは昨日、文章を書き終えて、さぁ眠りに着こうとしていた矢先に起きた出来事である。些か珍しく、この先グロティスクな文体になってしまうことをここらへんでご了承いただき、先に進んでいただけるとありがたい。なお、そのグロティスクな文体にも、暖かさや、澄んでいる世界を。と思いつつ描いていこうとは思っているので、もしよければ、ここで終わらずに進んでもらえると幸いである。 早朝4時になっていたかもしれない時間帯だった。詳しくは覚えていないのだが、確かそのくらい、一瞬でも眠りにつけたのか

2021/5/22 「笑ってる」

「らおたん、笑ってる」と、私の叔母はよく言います。らおたんとは、トイプードルとチワワがミックスされた、10月25日生まれのワンちゃんですが。「どしたの、嬉しいの」と、まるで孫をあやすかのように話しかけるわけです。今日もまたうちに遊びに来て、たかいたかいをして、抱っこしながら部屋を探検し、そそくさと自宅へ帰っていきました。 従姉もまた同じように、「らおたん、笑ってるねぇ」と言うわけです。表情が豊かだって言うのです。 たしかにらおたんは、去勢手術の後うちへ来た時、どこか不安そ

2021/5/20 「鳥かご」

鳥かごの中の人間ってたくさんいる。数的じゃない。種類的。数的にもなのかな。みんな、どこにいるの。私は、どこにいるのだろう。 あの人は、檻を自ら創って、自らその中に閉じこもっているように見える。それは私も同じなの。 出ていきたくない。もしこの鳥かごが開いて解放されたとしても、私はまた鳥かごを作り、その中に閉じこもる。そのようにしか生きられないの。誰かが助け出そうとしてくれても、きっと無理。幸せなんてどうでもいい、自由になりたい。 あの人が鳥かごを創っているのは、人のことを

2021/5/17 「論理」

綺麗ごとばっかりいうよね。理想だけは高いよね。言われ続けた長い月日です。なんだかんだずっと夢を持ち続けて生きてきましたが、その時々でかけてもらった言葉たちに、今はもう、どれだけ本気で言ってくれてたのかなと疑いを持ってしまうような人間になりました。 自分でも、綺麗ごとだよなと疑い始め、前置きをするようになりました。それでも「そんなことないよ」って嘘つかれて、綺麗に打ち返されるよりはよっぽど信頼できたけど。綺麗ごとっていう人も、前置きをする自分のことも。 綺麗ごとだったのか、

2021/5/16 「告白」

「貴方のレジュメ、私好きです。」告白されました。私。ついに。文章の中か上で生きる私、興奮いたしました。受取人として相手の告白を直に頂戴した生身の人間である「私」、あまりに予想だにしていなかった出来事で、あはは~という薄笑いと、戸惑いの表情をお返しするので精一杯でございました。 これがもし、文体×文体の文章上であれば、こんなことには致しません。倍の倍の倍以上の、愛文体でお返しできたはずなのです。それが、顔対顔の画面上だったものだから。相手のお顔も確認できておりまして。想像以上

2021/5/12 「自傷行為」

なぜ自傷行為は受け入れられないのだろう。「自分のことをもっと大切にして欲しい」言葉が付き纏う。「メンヘラなだけでしょ」安っぽい言葉が付き纏う。 自分で自分の檻を作って、そこに自分自身を閉じ込めている。だからこそ、その檻は一生付き纏う。映画の中でオードリーヘップバーンがしていたことも同じ自傷行為だ。 でも、彼女は美しかった。何を言っているのか、彼女の語りの内容はほとんど分からない。最高に頭のおかしい女性だった。でも全然退屈じゃない。どんな人間よりも最高に惹かれる、檻の中で美