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「特別な関係」の相手とは直接対話が大事ということ


はじめに

例えばですが、自分が世界を滅ぼす力を持っていて、同様の力を保持している相手と(きっかけは)些細なことで喧嘩になりそうだとします。

けど絶対にこちら側から「おれが悪かった」などと謝罪・譲歩してはいけません。世界の秩序が崩壊するので。ただし相手は一応は対話の意思は持っています。どうしますか?

制約として相手の考えを直接確認することはできません。なんとなく相手の雰囲気や仕草で察するしかないです。なお、相手と親しい(と自称する)人物が「実は○○について話し合いの余地があるかも」など囁いてきます。

ま~たオタクのキッショい妄想かよ…世界を滅ぼす力を持ったヒロインとイチャコラするラブコメの話か?と思われたかもしれません。けどこれは実際にあったんですわ。

───キューバ危機っていうんですけど。

本記事は「世界が無茶苦茶になった/なりそうになった出来事」という視点から、直接対話の重要性を書きました。なお、本記事の内容はご参考程度で、正確な情報は文献等をご参照頂くようお願い申し上げます。

※3200文字くらい

本編

時は1962年。今から60年以上も前。冷戦の真っ只中。資本主義の西側陣営と社会主義の東側陣営がバッチバチに対立し、終末時計が残り5分を指していたあの頃。

東側陣営のボスであるソビエト社会主義共和国連邦は、カリブ海に位置するキューバ共和国へ密かに核ミサイル基地の建設を行っていました。

これの理由や背景を書くと900000000阿僧祇(あそうぎ)文字くらいするので割愛するのですが、単純に「キューバってアメリカの近くなのに仲悪いじゃん。核ミサイル基地作ってみるか笑」みたいなノリで理解いただければと思います。

勿論アメリカに速攻でバレます。アメリカはこれに対してキューバへ海上封鎖を実施し、平行して「核ミサイル基地の建設を中止してよ」とソ連へ伝えます。自分の喉元に核ミサイルなんて突き付けられたらたまらんですからね。

なお、この警告の時点ではアメリカはキューバに核兵器は配備されていないと思っていましたが、ソ連は巧妙なカモフラージュを行い核ミサイル・核兵器を搭載可能な爆撃機を既にキューバに配備していました。

そのあと色々あってアメリカの偵察機がキューバに核ミサイルがあることを発見します。これを受けてエクスコム(国家安全保障会議執行委員会)が開催されます。ややこしいんで簡単に言えば「これからどうしようか会議」です。

外交交渉をするか、いきなりキューバを爆撃するか、敢えてなにもせず静観するかなど議論が交わされ、取り敢えず海上封鎖しようやくらいで落ち着きます。これに対してソ連も「やれるもんならやってみろ」と引く様子はありません。

本記事の主旨はキューバ危機の詳細な解説で無いので割愛しますが、こっから2週間ほどアメリカとソ連の間で駆け引きが続きます。押してダメなら引いてみろ、は通用しません。押しすぎれば核戦争で人類滅亡、引き際を見誤れば舐められて自陣営は終了で広義の滅亡です。

結論から言えばこのキューバ危機はソ連が引いたことで終わりました。ここからが本題なのですが、着目すべきは「トップが直接対話していない」ということです。していないというか、出来なかったと言うべきでしょうか。

今ではビックリかもしれませんが、当時は「いざという時に、国のトップが遠隔ですぐに直接対話する」手段自体がありませんでした。1960年代でこれですから、それ以前も当然です。文章だけのやり取りは電報などで出来ましたが。

けれども、これで相手に伝えられる分量なんてたかがしれています。勿論、文脈やニュアンスも伝わりません。LINEやSNSなどをご利用の皆様ならお分かりと思いますが「そんなつもりで言ったつもりじゃないのにな」という経験は多々あるかと思います。

というわけでアメリカとソ連は互いに、相手の一挙手一投足を見て「これはどういう意図なんだ…?」と探り合いをしていました。なお、互いに核兵器を持っているからこれだけ気を使っているだけです。国力に圧倒的な差があれば「よく分からんし潰すか」って選択肢が普通にあがります。

当時はアメリカ政府内部でも「キューバなんて小国だし爆撃して一気にケリつけようぜ!」という意見もありました。勿論!これを提唱したのは日本本土をB29で焼け野原にしたあの人です。

話は戻って、この「国のトップが遠隔で直接対話する」手段が無いせいで世界が無茶苦茶になったことが過去にもありました。その代表例が第一次世界大戦です。サラエボ事件とか世界史の授業で習った記憶があるんじゃないでしょうか。

これの経緯を超簡潔かつ要約して書くとこうなります。

  1. セルビア人の青年がオーストリア・ハンガリー帝国(以下オーストリア)の皇太子を銃殺

  2. オーストリアがセルビアに宣戦布告

  3. ドイツ・オーストリア同盟によってドイツ帝国がセルビアに宣戦布告

  4. セルビア王国の同盟国であるロシア帝国がドイツ帝国に宣戦布告

  5. シュリーフェン・プランの発動でドイツ帝国がフランス共和国に宣戦布告

  6. フランス共和国へ侵攻の途上にあるベルギー王国へもドイツ帝国が侵攻

  7. これに対抗してイギリス連邦がドイツ帝国へ宣戦布告

  8. なんか色々あってオスマン・トルコ帝国、アメリカ合衆国、大日本帝国、イタリア王国なども参戦

無茶苦茶じゃねーか。驚くべきは大戦の当事者トップが一堂に会して話し合いをしていません。第一次世界大戦の勃発についても書くと9999999999那由他(なゆた)文字を超えるので書きませんが、どこかで「クールダウンしよ!話し合おうよ!」が一度でもあれば防げたはずです。

もう一つ事例を紹介します。太平洋戦争です。これも戦争前に日本とアメリカの間で色々と交渉をしていたのですが、ついに一度もトップ同士(日本国首相とアメリカ大統領)が会談することはありませんでした。

交渉していたのは両国の外交官らです。日本は駐米大使(アメリカに常駐している外交官)です。そして、この交渉の経過は電報などで日本へ伝えられます。これには当然タイムラグもあり、伝えられる文章量も限界があり、さらに翻訳の問題があります。

最終的には交渉決裂でハワイの真珠湾へ日本軍が爆撃をかまし、最後は日本は焼け野原になりました。これも一度トップ同士が会談すればある程度の妥協点は探れたはずです。

長々といろんな事例を書きましたが、つまり「ごめーん!そんな意図はなくてさァ!目的としては○○なんだよ!」「これ文章だけだと伝わりにくいかも!ニュアンス的にはさァ!」「これどういう意味?」などを直接対話するのが、戦争を防ぐ一番の手段ではないでしょうか。

これは国家間といったクソでかいものに限らず、個人間でもあることです。何事も直接対話が大事。もちろん、当事者同士に相手を尊重する意思があり対等なコミュニケションという前提ですが。

閑話休題。何事に於いても対話・会話が必要です。キューバ危機の後、アメリカとソ連の両国は流石にこの重大性に気が付いたようで、両国の首脳同士を繋ぐホットラインが開設しました。

現代ではweb会議なんかも主流ですから、言葉だけでなく表情も汲み取れます。ボタンの掛け違いから戦争が起こる頻度が減って喜ばしい限りです。なお、頭おかしい独裁者が暴走した場合はこの限りではありません。ロ○アとか。

おわりに

「直接対話」の重要性を説くことに焦点を当てて本記事を書きましたが、自分の書きたいことだけ書いて、読み手に解釈を委ねるTwitterやnoteが僕は大好きです。一生抜け出せそうにありません。

※キューバ危機を描いた映画としては” Thirteen Days”って映画が面白いのでお勧めです。ドキュメンタリーではないため実際とは異なる描写もあるので要注意です。けど面白いですよ。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

以上

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