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会社を休んだら死亡説が流れた話

それは毎年恒例の、夏休み中に、間違いなく私が発した言葉だった。

私の勤めている会社には、毎年7月末に8連休、1月末~2月中旬頃に5連休の休暇が与えられる。そのうち強制的に有休が何日かは当て込まれるのだが、社会人になってそれだけの連休を気軽に取得できる方が少ないため、旅行したり少し遠出したりが割としやすく、私は良い制度なのではと思っている。

お金を貯めたい私は、もっぱら実家に帰省し引きこもることがほとんどなのだが、後半の数日は予定があったので自宅に戻っていた。そのうちの1つが、なにわ男子のライブ参戦である。

参戦を終え、会場から出ると一気に息苦しい暑さが襲ってきた。現実である。夢のような時間から、現実世界へ一瞬で戻ってきてしまった。そして私は、この現実に戻ってきた瞬間に、確かに言ったのだ。

「なにわ男子見られたし、働きたくないし、私もうコロナかかってもええわー」

その時は、本当に思っていたのだ。
想像もしていなかった距離で推したちを拝み、夢心地だったところを猛暑により一気に現実に引き戻され、「ああ、また社畜な日々に戻ってしまうのか……」と絶望に駆られ、「ああ、会社行きたくないよぅ……」って思ってしまうのは、もはや自然の摂理と言っても過言ではないのではなかろうか。いや、過言ではない!

でも、まさか本当にコロナに感染するなんて思わないじゃないか。こんな何の努力もせずに有言実行を成し遂げることが人生であるとも思わないじゃないか。

日曜日の夜、喉の異変を感じた私は翌日少しずつ高くなる体温に嫌な予感を感じながら病院へ行き、検査をした。しっかりと陽性を告げられた。

このタイミングでかかったコロナはどこからが重症なのかわからないのだが、私の場合は40℃の熱が3日半続いた。
「解熱剤って、熱を下げるためにある薬じゃないの……?」と解熱剤を見ながら問いかけてしまうほど、解熱剤が効かなかった。一瞬だけ38℃くらいに下がっても、1時間後には40℃に元通り! という、コロナならではと思える珍現象がひたすら続いた。この高熱地獄に終わりはくるのかと、割と本気で思った。

夏休みは終わってしまったため、上司やチームの部下たちに「コロナだったよ」と、上司にはプラスで「体調落ち着いたら連絡します」と連絡を入れた。チームの部下たちにはグループLINEでまとめて連絡したにも関わらず、個別で「大丈夫ですか?」とメッセージをくれた人もいて有り難く感じた。私も今度から真似しよう。

問題は、こちらが高熱にうなされていると知っていながら、特に緊急でも何でもない業務連絡をよこしてくる奴なのである。

社用メールで連絡をくれるならまだしも、個人LINEでポコポコと連絡をよこしてくるのだ。そして「体調落ち着いてからでいいので、ご確認お願いします☆」とか「元気になってからで大丈夫なので、ご返信ください♪」とか送ってくるのである。

…………。
「体調落ち着いてからでいい」とか「元気になってからで大丈夫」とか、本当にそう思うならこっちがほんまに「体調が落ち着いた」もしくは「元気になった」タイミングでその連絡をしてきてくれないか? そっちの方が本当の意味で気遣っていただけてると思えるのだが……?

私が神経質だったのかもしれないが、高熱の時はLINEの「ピコン」という音でさえも、非常に不快に感じた。必要以上に、頭に響いた。

私はひたすらこの高熱と向き合うことを心に決め、スマホをマナーモードにした。そしてベッドから離れたキッチンに場所を移動させた。この時点できていたLINEは、すべて未読無視した。その多くは会社の人たちからだったから、1人に返すと返信していない人に追々「あいつ、私には返さんくせに」と思われるのが面倒だからである。かといって全員に返す気力もない。そう、これは「汚いものには蓋!!!」作戦である。

こうして私はスマホを気にすることなく、寝ることと6時間毎に解熱剤を飲むことの繰り返しに徹した。

翌日の昼下がり、なんだかやたらと長くスマホのバイブが鳴っている気がする。「?」と思いながらロック画面を見てみると、会社の人たちからのLINEと着信がたくさんだった。

「!?!?!?!?!?」

脳内プチパニックを起こしながらも、とりあえず一番最新のLINEを読んだ。

『みんな連絡取れないから、倒れてるのかな? って心配して、家まで行くかって話が出てます。とりあえず大丈夫かどうかだけ連絡くれますか?』

「!?!?!?!?!? なぜ!? なぜそんな大事に!?」

他のLINEも読んでみると「生きてんの?」とか「無事かどうか連絡ほしいです」とか、そういった連絡ばかりだった。

何件か電話の着信もあったので、咳込みながらも折り返した。LINEの通知数や着信数を見ると、どんどん申し訳ない気持ちになってきた。
「あの……すみません……生きてますので、どうかご心配なく……」と弱々しく、時折、痰の絡まったオッサンみたいな咳を交えながら謝罪をした。

落ち着いたら連絡するって言ったんだけどなぁ……と思わなくもないが、もちろん連絡をしていなかった人も何人か、私がコロナにかかったと人づてに聞いて連絡してきてくれた人もいるわけで。というか、私が1日半ほどLINEの未読無視を決め込んだだけでそんなに心配してくれる同僚たちに囲まれて働いている私は、もしかしたら恵まれているのかなと思って少し涙が出た療養中の話であった(涙が出たことにより熱は再上昇し、鼻詰まりも悪化した)。


【余談】私を溺愛している先輩からの着信に折り返した際
先輩「おー、生きてた!」
私「いや生きてますよ、勝手に死亡説流さないでくださいよ」
先輩「だって誰が送ったLINEも既読にならんし電話にも出んしさー。家行く? それか、あいつの実家に『娘さんと連絡取れないんですけど……』って電話する? って話になってたんよー」
私「いや、実家はやめて。怖い」
実家にはコロナに感染したこと言ってなかったので(死ぬほど心配するだろうし、何なら来そうだったから)、間一髪免れた。

先輩が私を溺愛している話はこちら↓


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