見出し画像

本よみ日記 みえない棘

はなす、うたう、なく、わすれる。ひとのする動作を軸に、著者のこころのうちへじっくり耳を傾けていくように読んだ。

石田千さん『からだとはなす、ことばとおどる』。年に一度のマンモグラフィの結果を「まつ」、会社をやめ、年賀状をやめ、さけ、いろ、うまもやめれるかどうかの「やむ」。「おす」では鱈を見て、こんなことをつぶやく。

女と名まえがついてから、べつの頁の生きもののように暮らし、日ごろは雌だなんて自覚しない。すっかり忘れて笑っている。

「おす」


先日は会ってあやまりたいひとに会い、伝えたいことを伝えた。忙しいひとで優しさも手伝い、すっかり忘れてた、と返ってくる。こちらの曖昧にできない、難儀な部分に付き合わせてしまっただけになったが、これでようやくまた、曇りなく話しかけることができるようになってホッとしている。

日常に紛れこませて先延ばしにしていること。こちらに後ろめたさがあって、見ないふりをしていること。本を読んでことばに感応し、動きだせることに助けられている。

見えないけれど、いっぱい刺さっている、小さいちいさい棘を少しずつぬいていく。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?