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キム・ジヨンさんと斎藤さん

1冊の本を読み終わり、韓国に住んでいる友人へやや興奮気味にメールをしました。友人からは「本も映画もまだ見てない〜」とのこと。まあそんなものです。笑

『82年生まれ、キム・ジヨン』は、ひとりの女性を通して見えてくる男女格差、男尊女卑の話。主人公キム・ジヨンは女性として生まれたことによって起こりやすい、小さいささやかな事が積み重なり心を壊してしまいます。心の壊れ方は「憑依する」という形で現れ、キム・ジヨンを通して実母や先輩など女性たちのその時は言えなかった心の内を夫に気づかせるという構成。

読み終わった女性たちは、ほぼこの本を私事として共感しまくるらしいですが、もれなく私もひと通り共感し、妹が2人いる父も夕食のおかずがよく俺だけ違ってたなぁと話していたことや、専門学生の時の同級生(男性)がお互い決まらない就職で悩んでいると「女の子はでもいいじゃない」と口癖のように言っていたことが走馬灯のように思い出されました。

よく「男女は違う生き物だからわかり合うことは難しい」と言われます。同じ景色を見ていても全然違う所を見ている、と。

私も以前、夫の発する言葉(氷山の一角)の内に全然気づいていなかった、ということが何度かありました。
解決策として、とことん相手の立場を想像してみる。それでもまだモヤモヤが発生するなら、なるべく穏やかに、すぐに話し合うよう心がけることにしました。

「とことん相手の立場を想像する」ということの難しさ。口喧嘩など、お互いが負の感情に包まれていたら尚更です。

読んでいる途中から女性たちとグローバルサウスの人々が重なり始め、これは男女格差の話だけど、一見離れているように見える環境問題とも大いに重なるのでは、と思いながら最後まで読み終えました。

グローバルサウス
グローバル化した現代資本主義による負の影響を色濃く受ける国や地域のこと

ファストファッションがどのように作られているのか、加工食品やお菓子によく使われるパーム油の原料のアブラヤシを育てるためにどのくらい森林破壊されているのか、リサイクルしているはずのプラスチックをどのくらい海外に輸出し、現地の人々の健康に被害が出ているのか…など書き切れないくらいまだまだたくさんあります。

男性が活躍できるよう女性が我慢してきたように、先進国の「豊かな暮らし」を支えるため、グローバルサウスの人々を犠牲にし搾取し続けてきたことを本やSNSから知りました。

本に戻ると、あとがきに書いてあった進歩的な考えを持つ男性たちの「全く気づくことなく生きてきたが、娘が同じ経験をしてはかわいそうだから、何をすればいいのか考えるようになった」という感想が印象的でした。

やっぱり気づかないらしいです。当たり前や思い込みを手放すことは誰しも簡単ではないということなのでしょう。

『82年生まれ、キム・ジヨン』を読む前に斎藤幸平さんの『人新世の資本論』を読んでいたのもあり、環境問題とフェミニズムがぼんやり繋がったのだと勝手に考えています。

このぼんやりしたものを少し調べてみると「エコフェミニズム」という考え方にぶつかりました。

エコフェミニズム
女性の抑圧と自然破壊には関連があるとして、環境問題を解決するためには男性優位の社会構造を変え、支配と被支配の構造を変える必要があるという考え方。

安いものはなぜ安いのかと考えたり調べたりして現実を知ること。知った上でおかしいと思ったら小さくていいから行動すること。私にできることはとりあえずこのあたりからです。

さきほどの男性がこの本を読んで何をすればいいのか考えるようになったように、まず「知ること」であり、隠されている不都合な事を言葉や映像などの可視化されているものから学ぶことで、優劣や上下ではない、お互いを生かし合い尊重する関係性が築けるのではと思いました。

1人ひとりはもちろん、身近な木も鳥も虫もそれぞれに計り知れない能力、得意なことがあり、そこから学べることはまだまだたくさんありそうです。資源としてただ使い果たすだけではなく、食用としてただ食べ尽くすだけではない、新しい関係性を築くことができたなら。

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