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オーストラリア2400km自転車旅8日目🚴‍♂️

8日目「孤独と恐怖を超えたその先」

朝6時目が覚めた。思っていた通り、芝生がとてもきれいな大きな公園だった。真っ先におじーちゃんたちのバスがまだあるか見渡した。 ちょうど工ンジンをかけたところだったようで、声を掛けに行った。

「素敵な旅を!」とあいさつした。

「ってことは乗っていかないんだな! ?」

「俺が乗るのはアイツだけ!」めちゃめちゃ格好つけた。

「そうか、がんばれよ青年!シャワー浴びろよ!」握手をした。 しわしわでデッカい手だった。そうやって彼らも行ってしまった。

「じーちゃん・・・ありがとう・・・抱きつきたかった」

しばらくごろついた後、じーちゃんに言われた通りしっかりシャワーを浴び、洗濯もした。あと、やることは日が傾くまで寝るかマッサージだけ。マッサージをしながら、地図をずっと見ていた。いよいよ次の目的地はポートヘッドランド、ブルームから着ける最初の街だった。そこが一つの大きな区切りになる。そこまで行けばパースまでの4 分の1を走ったことに。ここから150キロ、その数字は俺を嫌な感じでドキドキさせた。距離的には昨日と同じくらい・・・あぁーでも怖い、やはり臆病になってしまう。いくら地図を見つめてもその150キロという距離は縮まない。だけどずっと見ていた。

「待ってやがれポートヘッドランド!」不安な自分を押し殺すように活き込んでみせた。体に登ってくる蟻んこと格闘しながら、頑張って眠ろうと心掛けたがなかなかうまくいかない。そうこうしているうちに、木の影はずいぶんと長くなっていた。

「さて相棒、行きますか」彼に荷物と満タンの水を積み、店で買ったツナ缶を口の中にかきこんだ。効果があることを期待して、じ一ちゃんにもらった錠剤を2錠水で流し込んだ。

「相棒、今日も期待通り風はきついなぁ!」嫌味を言いながら彼にまたがり走り出した。今回は意地でも明日の昼の1 1時までに目的地に着きたい。それ以降走るのはほんとに危険だと知ったから。昨日の夜走行が70キロ、今日は何とか午前6時までに100キロは稼ぎたい。

両膝を心配しながらきっちりゆっくり走った。それでいて昨日より早いペースを意識した。初日より、足に筋肉がついてきている実感があった。太陽は完全に沈み、灼熱の世界から黒の世界へとスイッチする。すっかり暗闇に慣れてきた。恐怖心はない、むしろ気持ちが良い。車もまったくといっていいほど通らない。空を見上げる。

流れ星を見つける気は無くとも、目の中にいくらでも飛び込んでくる。

「シュン。悪いが多分俺の方が流れ星をたくさんみてるぞ!」とか

「これだけの星があるなら、少なくともこの中のどれかーつには宇宙人いるよな。」何て思った。

宇宙を見ているとチンチンが縮こまる。あまりにも絶対的で圧倒的で、昼間の世界とは比較にならない「ひろがり」を知った。その「ひろがり」の中では、俺一人なんて「死」んでも死ななくても何も影響しない。

だけど、その虚無感がひっくり返って、力強い何かが芽生える。

世の中の全てのものは停止していて、自分だけが活動し思考している。

俺は何でもないし、何でもある。孤独と恐怖を越えたその先に、

自分だけの、自分だけに許された時間と空間があった。

この夜、俺は宙を跳んだ!

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