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#オススメしたい一冊:イトウ編

みなさまこんにちは、イトウでございます。

本日はおすすめしたい一冊について。
助走なしのいきなりの本題ですが、そんな私のおすすめがこちら。

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お恥ずかしいくらいに年季が入っております。
味…というかボロボロです。

梅雨時期だし、コロナ禍だし、どこにも行けない今だからこそおすすめしたい一冊でもあります。
なんてったって、手のひらサイズであなたを世界に誘ってくれるのですから。

▼沢木耕太郎著「深夜特急」

インドからロンドンへ、ユーラシア大陸を乗り合いバスで旅をする。
全六巻の紀行文になっておりまして、“バックパッカーのバイブル”なんて呼ばれる本になっております。
1980-90年代にかけて青春時代を過ごした方にはなじみ深い本かもしれません。

かくいう私は全く世代ではないのですが、高校生の時に父から全六巻を譲り受けました。
父は“読んでみなさい”と言うわけでもなく、時々“はい、どうぞ”と本を渡してきます。
“はい、どうも”と受け取り、素直に本を読んでみると、たちまちど田舎の女子高生は浪漫を覚えました。

難しいこと抜きにして、やりたいことを気の向くままに。
鉄道でも、飛行機でもなく乗り合いバスなのは、なんとなく地球の大きさってやつを感じてみたいから。
訪れたことのない異国の描写はその空気の肌触りや香りを感じさせ、その憧れを助長させました。

なんて格好良くて、クレイジー、それでいて知的なんだろう、と。

一方の私は、小学生の時には通知表で「going my wayといった感じです」という評価をいただき、母にこれはいったいどういう意味なのかと尋ねながらも、部活して、地元の中学を出て、隣町の高校に行って、帰り道に買い食いをして…という、
もしも図鑑に“平成の標準的な女子学生”のページがあったのならばぜひ載せてもらって問題ないくらいに足並みそろえた毎日を送っていました。

しかし、この本との出会いが、他の人がどうとかではなくて自分のやりたいことをやってみるという好奇心に行動力を与えてくれたような気がします。

大学を休学して海外へ一年間の冒険へ出発したときもこの本と一緒。
復学しても、友人とは学年もずれるし授業全部一人ぼっちになるかもしれないけどそれでもいいか、自分のやりたいことなんだし、とそう思わせてくれました。
(実際には、幸運にも心優しいゼミメンバーにも恵まれて楽しい大学生活後半を過ごすことになるのですが。)

今こうして、地元とも学生時代を過ごした土地とも違う長野県にいるのも、元をたどればこの本との出会いが根底にある気がします。
長野には知り合い誰もいないけど、やりたいことがあるなら行ってみようか、と。

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全六巻もあるうちの何でこの一冊なのかといいますと、一巻は飛行機に乗るときの必携文庫なんです。
持っていくのは決まって一巻、深夜特急の旅の始まりと自身の旅の始まりを重ね合わせてワクワクを加速させてくれるから。
持っていくだけで読まないときもあるのですが、上着を羽織るようにさっと持っていく一冊です。
それで鞄に無造作に突っ込んでいくのでこんなにボロボロなわけです。


さらに、著者である沢木氏の言葉に「ソロで生きる意識を」というものがあります。わたくしイトウはこの考えにものすごく共感し、非常にそうありたいと思うのです。


「ソロで生きると、一人で道を覚え、選択するが、集団だと全体について考えない。同じ時間を生きていても濃さが違う」
「問題はソロで生きていける人たちがパーティーを組んでいるかどうか。パーティーに加わりながらソロで生きていく力を蓄えるあり方は、その人の自由度を増す」

ソロで生きるっていっても独身でいるべし!という意味ではありません。
一人で生きていく能力をつけた上で、集団に属することで時間や行動の幅が増すということ。
問題に直面した時どう立ち向かい、どう対処するのか。
なにを選択して生きていくのか。
昔からgoing my way、言い換えてしまえば協調性に欠けるということなのかもしれませんが、そんな私に自分で思考し行動することの意義を提示してくれる言葉でした。


最後に。

作中に、冒険が日常と化し、前進をやめたときに廃人のように安宿の粗末なベッドの上で天井を眺める。というような描写があるのですが、身をつまされる思いがするのです。他人事ではなく、自覚が無くとも誰もがそんな廃人になりうる可能性をはらんでいるのです。
せっかくの人生だもの、楽しく生きていきたいじゃない。というわけで毎日小さな冒険を積み重ねていきたいものです。
それがスーパーでいつもとは違うめんつゆを買ってみる程度の冒険でも。

内容にはほとんど触れないままにこれにてイトウのおすすめの一冊とさせていただきます。
スマホがない時代の旅ってどんな感じだろうかという方も、いやあ、懐かしいなあ!の方も、深夜特急を手に取るきっかけになれば嬉しいです。
目の前の数十平方メートルの景色がきっと動き出しますよ。

それでは、


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