『夢』を見つける作業 その1
さと先生とひなこさんに出会い、色んなことを教えてもらった中で、私はひとつのことを意識し始めました。
それは、大学進学です。
今とは全く環境で、親元を離れ、自分がしたい勉強をすることが出来る。夢のような話です。
ですが、両親が、私にお金を出すことを良しとしてくれるとは思えませんでした。実際、高校受験を懇願に行った時、母にも父にも即刻拒否されましたから、ほぼ諦めていました。
この時点での私は、頑張ることを止め、完全に諦め癖がついてしまっていました。なんとかして大学に行かせてもらえるように何か策を考えなければいけない、説得しなければ、というよりも、「頑張ったってどうせ無理」と、大学進学を夢物語に思っていました。
それに、私にはなりたい職業や夢がありませんでした。理想の大人が周りにいなかったことと、他の人と話す経験が少なすぎて情報を集めることが出来なかったです。それに何より、自分の未来に興味がありませんでした。
しかし、前回の自分とは少し違う点がありました。
それは、「ちゃんとした大人」の存在です。大学に行き、ちゃんとした分別を持つさと先生と、ひなこさんがいます(あの時もひなこさんはいましたが、相談する間もなく勢いで言ってしまいました。若さってやっぱり勢いですよね)。
信じられないかもしれませんが、
1人でも良識のある大人が隣にいてくれるだけで
世界は一変するんです。
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特に、大学受験に関してはもうさと先生がとても心強い味方でした。先生自身も大学に通っておられたし、もちろん何人もの生徒を大学に送り出しているわけです。
何度も相談に乗ってもらう中で、先生はいつも私に言ってくれていたことがありました。
「何かしらの形で、子どもに関わってみたらどう?」
正直、初めていわれた時には驚きました。
触れられたことも、抱きしめられたことも、愛されたこともない私が、他人の子を愛せるわけがない。子どもたちを愛し、守らなければならない職業に就いた時、私はその職に全うできる自信がない。
そう伝えました。
しかし、さと先生は私にこう言ってくれました。
「この間のインターンシップで、幼稚園に行ったよね。あなたが、自己犠牲を厭わず、自分が損するということに関してあまり興味がないことも十分知っていたつもりだよ。でも、あれらの出来事には本当に驚いた。」
あれらの出来事、というのは、インターンシップに行った時に起こったちょっとした数個の出来事のことです。
まず1つ目は、子どもさんが、すべり台の上から落ちかけたところを、私がスライディングで下敷きになってクッションになったという出来事でした。
2つ目は、人見知りで引っ込み思案だとその園で有名らしい子どもさんにとても懐いてもらって、1週間のインターンシップの最後の日に鬼のように泣きながら折り紙で一生懸命作ってくれた餃子(私が好きな食べ物は餃子なのです)をもらったという出来事。
3つ目は、子どもさん同士の喧嘩を比較的穏便に解決出来て、保護者さんに謎に感謝してもらったという出来事。
それらを、そこの幼稚園が巡回の担当だったさと先生が見ていて、覚えてくれていたのです。
私の家の周りには幼い子どもさんが多く、その当時高校生だったのは私だけだったので、家にいるのが嫌で、勉強の休憩時間に立ち寄った公園でその子たちとよく遊んだりしていました。そういった点では多少幼い子どもさんと遊ぶことには慣れていたのかもしれません。
しかし、そもそも幼稚園に行こうと思ったのは、家から遠いので帰るのが少し遅くなっても問題無いということと巡回の先生がさと先生だったからというとんでもなく不純な動機からでした。
そんな理由なのに、「教育はどう」と言ってもらえても、私にそんなことをする権利は無い、と思っていました。
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そんな時、さと先生がある1つの提案をしてくれました。
それが、「青少年育成事業への参加」というものです。
勉強を教えたり、一緒にキャンプをしたりする事業に、参加者としてではなく企画者・運営者として行ってみてはどうか、という提案でした。
当時、スポーツマンだった父親は部活については家を空けても許してくれていたため、さと先生の全面協力のもと、3日間のキャンプに、キャンパーとしてではなくリーダーとして参加することになりました。
大人、私と同じような高校生、参加者の子どもさんも、誰も、本当に誰1人として知らない環境に飛び込み、キャンプをする。
広がる未知の世界に、どんな感情を抱けるのかが
不安で、楽しみで、仕方ありませんでした。
そして、このキャンプが、
私の真っ白なキャンバスを、
私の真っ黒な未来を、
鮮やかに彩ってくれることになるのです。
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