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島の暮らしを覗かせてもらった

 五島列島の南部、下五島地区に久賀島(ひさかじま)という島がある。福江島から定期船で30分程度で行ける。島は馬蹄のような形をしている。島全体が重要文化的景観に指定されていて、「世界文化遺産 長崎と天草地方潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産に含まれている。
 登録前から観光のためこの島に訪れる人が増えた。二次離島であるためアクセスは限られていて、行きやすいとはとても言えない。この島にかかわらず、12の構成資産はどこも「ついで」に行けるような場所ではない。苦情のような声も聞かれるが、巡礼と考えてもらうといいのじゃないかとおもう。

 長崎港からは高速船と定期船を乗り継いでいく。構成資産の目玉のひとつ、「旧五輪教会」へ行くのであれば島内の移動はレンタカーがいい。大きなツアーだと、教会の目の前の船着場まで海上タクシーで来島する。ツアー客は30分程度の見学で、次の目的地に向かって去ってしまう。なんだかもったいないようにおもってしまうが、再訪する人もいるだろうし、なにか感じとって後にする人もあるだろう。
 これまでこの島に4回行った。初めての訪問で案内してくれたのはWさんだった(昨年も)。久賀島の出身で、島の外に出たこともあるが現在は久賀島で暮らしている。とても気さくで朗らかで、よくしてもらった。石に絵を描いていて、かわいらしいお土産になる。

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Wさんのストーンアート。

 「通信販売で水ば買う人のおるとよ、島の水がおいしかとに」「ほら、島の味(といってぐべをくれる)」「一生懸命牡蠣うちしたけん、持って帰って食べてね」。島の話をあれこれとしてくれる。
 久賀島に宿泊施設はないから、1度の訪問で滞在できるのは6時間程度となる。大きな島ではないし、カフェや休憩するような店もないので退屈ではとおもわれるかもしれないが、いつも時間が足りない。

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 五輪集落に建つ旧五輪教会は、現在五島市の所有となっている。聖堂としての役割を終えているため、内部公開とともに内観写真撮影も許可されている。車が入れるところから、ほとんど舗装されていない道をしばらく下って歩いていかなくてはならない。椿の道ができていた。

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 昨年(2020年)2月の訪問が最後だった。その時にまだ行ったことのない永里(えいり)地区や細石流(ざざれ)地区あたりまでWさんに案内してもらったが、やっぱりぜんぜん時間が足りなかった。Wさんとも3年ぶりくらいに会う。懐かしいし、うれしかった。また会いたい。

 この島の北には「奈留島(なるしま)」がある。すぐ近くなのに天気が違ったりしているそうだ。久賀島では米づくりなども行われていて、ちょっと小粒のおいしい米だった。Wさんの言うように、水がおいしいから米もおいしいのだろうと勝手に理解している。

 久賀島の人口は300人程度と聞いている。小さな島だし、前述の通り食事をとるような店や、みやげ物屋、宿泊施設はない。ツアーなどでたくさんの人が訪れるようになって、島にとって「イイコト」はあるのだろうか。
 潜伏キリシタンに関する歴史的出来事があり、それらは人の心を打つだろう。私だって通りすがりのうちの一人にすぎないので、なにが「イイコト」かは容易には言えない。立場によってかわってしまうことだからだ。でも、多くの世界遺産などと同じく観光被害が気にかかる。暮らしている人たちがいる。

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旧五輪教会の目の前は、海。

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ぐべ。

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牢屋の窄殉教記念教会 信仰の碑。

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