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【私と本】スプーンおばさん

 茶さじくらいに小さくなってしまうおばさんのお話。

 おばさんは、あるとき急に小さくなるのだけど、小さくなったことを騒いだりしない。「なるほど。スプーンみたいに小さくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃならないわね。」といって、受け入れる。
 小さくなったおばさんにはやることがたくさんあった。うちの中の掃除や洗濯もの、お昼ごはんのパンケーキまで焼かないといけない。おばさんは、ねずみとネコとイヌに話しかけ、掃除を済ませる。次に雨と南風と太陽に文句を言うと、洗濯物を終らせた。パンケーキのたねを入れたつぼとフライパンをおだててパンケーキを焼いた。パンケーキがお皿に30枚積みかさなったところでご亭主が帰ってくる。
 ご亭主がドアを開けたそのとたん、おばさんはいつもの大きさに戻って一緒にパンケーキを食べる。茶さじみたいに小さくなっていたなんて、おばさんは言わない。

 この辺のおばさんの態度に好感がもてる。おばさんはこうやって、小さくなったり、もとに戻ったりしながら暮らしている。

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 著者のアルフ=プリョイセンはノルウェーの作家で、この本のノルウェーでの出版は1957年とある。長い間読まれてきた物語というのはやっぱりいい。挿絵はスウェーデン版のビョーン・ベルイによるもので、スウェーデン語版から英語版になり、それを日本語版でも使用したとある。ノルウェー版の挿絵は知らないけれどずっとこの挿絵で育ったので、私がこのお話を思い浮かべるときはこのビョーン・ベルイ版のおばさんやご亭主ということになる。 扉絵の書体や装飾がうつくしい。
 アニメの方は観たことがなく、エンディングのテーマソング「リンゴの森の子猫たち」だけを知っている。いい歌だとおもう。

小さなスプーンおばさん

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