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小説のようなもの

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#保坂和志

「ぼくはさっき感じたズルズルと愛のようなものに自分が浸っていく気持ちを大事なもののように感じていたのだが、ズルズルがズルズルと一人で勝手に土俵に割っていったような気持になった」 保坂和志『草の上の朝食』

「ぼくはさっき感じたズルズルと愛のようなものに自分が浸っていく気持ちを大事なもののように感じていたのだが、ズルズルがズルズルと一人で勝手に土俵に割っていったような気持になった」 保坂和志『草の上の朝食』

 思いっきり芝生に飛び込んだシンをにこやかに眺めて、リュウはゆっくりと芝生に腰を下ろした。昨日まで降り続いていた雨も昼頃にはすっかり乾いていたが、芝はまだ少し湿っていた。こんなふうに芝生の上でブルーシートも何にも敷かずにまったりするなんて、おとなになって一度もなかったなと素直に思った。

 晴れやかな太陽のかがやきにあおむけになったシンは、五月の大気を肺いっぱいに吸い込んで気持ちよさそうにしている

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