937gi(掌篇小説を書いてみよう)

売れない物書きにて候。 大昔「小説すばる」の新人賞となって以降、ノンジャンルの長短さま…

937gi(掌篇小説を書いてみよう)

売れない物書きにて候。 大昔「小説すばる」の新人賞となって以降、ノンジャンルの長短さまざまな小説を書きおり候。 noteでは、掌篇小説や一般書サンプルの掲載なども企てており候。 なお他頁ながら、blogsは https://blog.ameba.jp/ucs/top.do

マガジン

  • まれに天使のいる場所(上巻)

    月刊誌「優駿」で7年間連載したJRA競馬にまつわる人間模様等。 1話20分ほどで読める、読み切り掌篇小説44篇+それぞれの後書(上巻)。

  • 我々はいま、超人類へ進化している

    138億年前のビッグバンから2045年と言われるシンギュラリテ ィーまでの、万巻の書物を串刺しするような大風呂敷なテーマ。  我々はいま、次の超人類へ進化している真っ最中に居るという、ド文系物書き目線からの理系展望の一般書原稿。

記事一覧

まれ天サンプル(第49回)『キューピットと馬券必勝法』

草薙 渉  世の中には絶対などというものは、ない。二十四年間生きてきて、そんなことは痛いほどよおわかっとる。だがじっくりと研究を重ねて来たこの方法は、絶対に近い…

まれ天サンプル(第71回)、『草食系ライオンと肉食系シマウマ』

草薙 渉 「風間だろ。そうだろ。うーん、変わってないなあ。十年ぶりか」  美浦トレーニングセンターに近いパチンコ屋。風間は派手なジャケットの男にいきなり肩をたた…

まれ天サンプル(第44回)、『ピンクのケータイ』

札幌競馬場、『ピンクのケータイ』  草薙 渉  無数の背中や後頭部。JR桑園駅から、同じような風体の男たちが同じ方向に流れていく。この一人一人が全部、一個一個の…

東京競馬場(4篇)

  (第18回)ホテル・カリフォルニア   (第19回)二の足   (第20回)たそがれトライアングル   (第21回)役者馬鹿

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中京競馬場(3篇)

  (第15回)二百万本の彼岸花   (第16回)紙ヒコーキ   (第17回)有馬記念のスナップ写真

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まれ天サンプル(第30回)、『大女優』

新潟競馬場 まれに天使のいる場所(第30回)、『大女優』 草薙 渉 「社長の長年の夢が、いよいよあと十分以内に叶うわけですね」  秘書の宮本が緊張した顔でそう言…

栗東トレセン(4篇)

  (第11回)一瞬の犬   (第12回)大きな声では言えないが、小さな声では聴こえない   (第13回)仁さんの勝負服   (第14回)一期一会、二会三会

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まれ天サンプル(第27回)、『源さんの臨死体験』

美浦トレーニングセンター まれに天使のいる場所(第27回)源さんの臨死体験 草薙 渉 「まったくよお、あんな口向きの悪い馬は見たことねえ」と、引き綱を肩に担いだ…

京都競馬場(3篇)

  (第8回)淀の二月   (第9回)オジサンと呼ばれて   (第10回)常ならぬ人

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まれ天サンプル(第38回)、『今親鸞』

函館競馬場 まれに天使のいる場所(第38回)『今親鸞』 草薙 渉 「2番、2番逃げろ。そのまま、そのままだ!」  函館競馬場の一階スタンド。場内テレビに向かって…

阪神競馬場(3篇)

  (第5回)超スクープ   (第6回)悲惨な復讐   (第7回)昇級戦

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まれ天サンプル(第35回)、福島競馬場『色違いの毛虫』

色違いの毛虫 草薙 渉  鹿又(かのまた)陽一はその前夜に辞書を引き、『凱旋(がいせん)』という漢字がスラスラと普通に書けるよう練習した。そして高校卒業の寄せ書きに…

小倉競馬場(4篇)

  (第1回)白馬の椅子   (第2回)消えもの   (第3回)ダンディー・ドライバー   (第4回)天網恢恢、疎にして漏らす

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まれ天サンプル(第41回)、札幌競馬場『原始読者』

原始読者 草薙 渉  小説が好きだったから、植野は出版社に就職し文芸を志願した。入社後十年。単行本や文庫の手伝いからスタートして、五年ほど前から文芸誌編集部に所…

我々はいま、超人類へ進化している(仮)

(ド文系物書きによる理系展望) 草薙 渉 目次 第1章 我々は何処から来たのか  換算修正後のコズミック・カレンダー  生命誕生(真核細胞→光合成→共棲)   (シ…

まれに天使のいる場所(上巻、全44篇)

草薙 渉 目次 前書き 小倉競馬場   (第1回)白馬の椅子   (第2回)消えもの   (第3回)ダンディー・ドライバー   (第4回)天網恢恢、疎にして漏らす 阪…

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まれ天サンプル(第49回)『キューピットと馬券必勝法』

まれ天サンプル(第49回)『キューピットと馬券必勝法』

草薙 渉

 世の中には絶対などというものは、ない。二十四年間生きてきて、そんなことは痛いほどよおわかっとる。だがじっくりと研究を重ねて来たこの方法は、絶対に近い。というか、ほとんど絶対と言い切ってもええ。
 第一回阪神競馬初日。陽介は競馬新聞を握り締め、確信に満ちた目で阪神競馬場の正門のど真ん中から入場した。そしていつものように、まずは馬頭観音へ直行した。
 まぁ、見とってや、と馬頭観音の賽銭箱

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まれ天サンプル(第71回)、『草食系ライオンと肉食系シマウマ』

まれ天サンプル(第71回)、『草食系ライオンと肉食系シマウマ』

草薙 渉

「風間だろ。そうだろ。うーん、変わってないなあ。十年ぶりか」
 美浦トレーニングセンターに近いパチンコ屋。風間は派手なジャケットの男にいきなり肩をたたかれた。サングラスを外して、にやりと笑ったその顔に見覚えがあった。
「島崎か。なんだ、帰って来てるのか」
「ちょっとな、土地のことで帰ったんだ。どうだ、この先の吉野鮨で一杯やらないか」
「そうだな、じゃあこの玉がなくなったら行くよ」
「お

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まれ天サンプル(第44回)、『ピンクのケータイ』

まれ天サンプル(第44回)、『ピンクのケータイ』

札幌競馬場、『ピンクのケータイ』

 草薙 渉

 無数の背中や後頭部。JR桑園駅から、同じような風体の男たちが同じ方向に流れていく。この一人一人が全部、一個一個の人生や事情を抱えているのだ。
 そしてそれはまた全部途中で、その場その場の一瞬でしかない。そんなとりどりに様々な人生が集合し交錯する場所、などと、とりとめのない思いにひたりながら、谷は無数の背中や後頭部を見やった。

 それにしても、明

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東京競馬場(4篇)

東京競馬場(4篇)

  (第18回)ホテル・カリフォルニア
  (第19回)二の足
  (第20回)たそがれトライアングル
  (第21回)役者馬鹿

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中京競馬場(3篇)

中京競馬場(3篇)

  (第15回)二百万本の彼岸花
  (第16回)紙ヒコーキ
  (第17回)有馬記念のスナップ写真

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まれ天サンプル(第30回)、『大女優』

まれ天サンプル(第30回)、『大女優』

新潟競馬場

まれに天使のいる場所(第30回)、『大女優』

草薙 渉

「社長の長年の夢が、いよいよあと十分以内に叶うわけですね」
 秘書の宮本が緊張した顔でそう言う。新潟空港の到着口には、出迎えの人々が三々五々とたたずんでいる。福岡からの便が、あと五分で到着するとアナウンスが流れていた。
「まぁな」と、麻のスーツに真新しい縦縞のシャツ、同系色のハットを被った香田がにやりとする。「経団連の理事を

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栗東トレセン(4篇)

栗東トレセン(4篇)

  (第11回)一瞬の犬
  (第12回)大きな声では言えないが、小さな声では聴こえない
  (第13回)仁さんの勝負服
  (第14回)一期一会、二会三会

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まれ天サンプル(第27回)、『源さんの臨死体験』

まれ天サンプル(第27回)、『源さんの臨死体験』

美浦トレーニングセンター

まれに天使のいる場所(第27回)源さんの臨死体験

草薙 渉

「まったくよお、あんな口向きの悪い馬は見たことねえ」と、引き綱を肩に担いだ源太が言う。「ゲートは嫌がるし、坂路じゃ口割って右に左にアカンベしやがって、真っ直ぐ走ろうとしねえんだ。ありゃただのバカ馬だ」
「先週来たツヨシクンですか」と、持ち馬の栗毛にシャワーをかけながら坂田が笑う。「まだ美浦の馬場に慣れてない

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京都競馬場(3篇)

京都競馬場(3篇)

  (第8回)淀の二月
  (第9回)オジサンと呼ばれて
  (第10回)常ならぬ人

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まれ天サンプル(第38回)、『今親鸞』

まれ天サンプル(第38回)、『今親鸞』

函館競馬場

まれに天使のいる場所(第38回)『今親鸞』

草薙 渉

「2番、2番逃げろ。そのまま、そのままだ!」
 函館競馬場の一階スタンド。場内テレビに向かって法衣の坊さんが絶叫していた。海老反りになって、顔を真っ赤にして叫んでいた。「よーし、3番も7番も来るな。そのままだ。2番、行けぇーー!」
 周りの客が呆れ顔をしている。冷笑しながら、テレビと坊さんを交互に見ている。なりふりかまわず絶叫

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阪神競馬場(3篇)

阪神競馬場(3篇)

  (第5回)超スクープ
  (第6回)悲惨な復讐
  (第7回)昇級戦

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まれ天サンプル(第35回)、福島競馬場『色違いの毛虫』

まれ天サンプル(第35回)、福島競馬場『色違いの毛虫』

色違いの毛虫

草薙 渉

 鹿又(かのまた)陽一はその前夜に辞書を引き、『凱旋(がいせん)』という漢字がスラスラと普通に書けるよう練習した。そして高校卒業の寄せ書きに、「東京で大学を出たら、超ビックになって福島へ凱旋する」と太い文字で書きつけた。会心の思いだった。その後大学時代は毎年何度か福島へ帰り、ずっと続けていたテニス部に顔を出して先輩風吹かせたりもした。
 だが社会に出てからは、福島には一

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小倉競馬場(4篇)

小倉競馬場(4篇)

  (第1回)白馬の椅子
  (第2回)消えもの
  (第3回)ダンディー・ドライバー
  (第4回)天網恢恢、疎にして漏らす

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まれ天サンプル(第41回)、札幌競馬場『原始読者』

まれ天サンプル(第41回)、札幌競馬場『原始読者』

原始読者

草薙 渉

 小説が好きだったから、植野は出版社に就職し文芸を志願した。入社後十年。単行本や文庫の手伝いからスタートして、五年ほど前から文芸誌編集部に所属になった。平均すると、日に本一冊分の原稿を読むことにもすっかりと慣れた。さまざまな作家とライヴで関われるのは、嫌なことも多かったがそれなりに充実していた。

「いつか大柴さんに、源氏を書かせたい」
 編集長のその言葉はもう何度も耳に

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我々はいま、超人類へ進化している(仮)

我々はいま、超人類へ進化している(仮)

(ド文系物書きによる理系展望)

草薙 渉

目次
第1章 我々は何処から来たのか
 換算修正後のコズミック・カレンダー
 生命誕生(真核細胞→光合成→共棲)
  (シアノバクテリアの地球的繁茂)
 そして大いなる疑問
第2章 我々は何者か
 思考革命
  (時間という虚構)
  (思考革命の中での時間)
 農耕革命
  (農耕革命後の思考革命)
 ここで宗教について
  (仏教)
  (神道)

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まれに天使のいる場所(上巻、全44篇)

まれに天使のいる場所(上巻、全44篇)

草薙 渉

目次
前書き
小倉競馬場
  (第1回)白馬の椅子
  (第2回)消えもの
  (第3回)ダンディー・ドライバー
  (第4回)天網恢恢、疎にして漏らす
阪神競馬場
  (第5回)超スクープ
  (第6回)悲惨な復讐
  (第7回)昇級戦
京都競馬場
  (第8回)淀の二月
  (第9回)オジサンと呼ばれて
  (第10回)常ならぬ人
栗東トレーニングセンター
  (第11回)一瞬

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