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IR資料から広告を読み解く「わたしは私。さ、ひっくり返そう。」【西武・そごう】

新年早々、話題になっている「西武・そごう」の広告。普通に読むとネガティブな内容ですが、下から文章を読むと「逆転劇」が始まります。昨年は「女の時代、なんていらない?」という広告を打ち出した「西武・そごう」。賛否両論ありましたが、注目されたという点では広告として成功だったのではないでしょうか。そこで今回「西武・そごう」がこの広告を通じて「伝えたいメッセージ」は何なのかIR資料を用いて読み解いてみました。

1.西武・そごうからのメッセージ

今回の広告に出てくる「わたし」とは「西武・そごう」自身のことであり、伝えたいメッセージは「西武そごうが百貨店として大逆転する」だと読み解きました。

その理由を広告のセンテンスとIR資料を用いて説明していきます。

※前提として、この広告は「販売促進のための広告」ではなく「ブランディング広告」であると考えています。

2.土俵際、もはや絶体絶命。

メッセージ中に出てくる「土俵際、もはや絶体絶命。」とはどういうことなのでしょうか?

2020年2月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)によると、

百貨店事業
株式会社そごう・西武は、事業構造改革の一環として首都圏大型店舗へ経営資源を集中させる戦略を推進する一方で、郊外店舗の新しいオペレーションモデルとして、百貨店と専門店の融合を目指した西武所沢店のリニューアルに着手いたしました。しかしながら、当第 2 四半期連結累計期間における既存店売上は前年を下回り、営業損失は前第 2 四半期連結累計期間と比べ 7 億 85 百万円増加し、10 億 78 百万円となりました。

記載されています。

4章に詳細を載せていますが、百貨店事業はセブン&アイHDの中で唯一、営業損失を出している事業です。

さらに、2020年2月期第2四半期 決算説明会資料には

首都圏基幹店は前年を上回って推移。
地方・郊外店の苦戦により店舗計は前年割れ:99.0% (法人外商除く)

とあり、構造改革の骨子として

店舗政策 :不採算店の閉鎖、売場面積の縮小 (閉鎖5店、減積2店)

を掲げています。

これにより「西武・そごう」の総従業員6,608名(2019年2月末現在)の約19.7%にあたる1,300人の人員削減が見込まれています。

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つまり今、「西武・そごう」の置かれている状況こそが、まさに「土俵際、もはや絶体絶命。」なのではないかと考えました。

3.今こそ自分を貫く時だ。誰とも違う発想や工夫を駆使して闘え。

次は、この2センテンスについて考えてみます。

これは「“新・郊外型モデル店舗”西武所沢S.C. 」のことを指しているのではないかと考えました。

2019.11.07 プレスリリースによると、西武所沢S.C. のコンセプトとして

従来の婦人服偏重の領域バランスを、テナント比率を高め専門店を多く導入することで是正し、エリアに求められるコンテンツを充実させます。デパコスに代表される「ビューティーコンテンツ」をはじめ、「食」や「レディースファッション」、慶弔の贈答で多くご利用いただく「ギフトサロン」など、百貨店の強みは残し、生活に欠かせない家電や生活雑貨、生活をより豊かにするサービスコンテンツなどを導入。滞在性を向上させるレストスペースやベビー休憩室も拡充し「ハイブリッド型ショッピングセンター」として、従来ご愛顧いただいているお客さまはもちろん、増え続ける子育て世帯のお客さまにも愛される、商業施設を目指します。

と記載があります。

つまり、今まで培ってきた「百貨店として西武の強み」は残しつつ(=自分を貫く)、バランスを是正して「今の時代・エリアにあったコンテンツを提供」する(=違う発想や工夫を駆使して闘う)ということです。

今回、新しい発想によって誕生した「西武所沢S.C.」 。せっかくなので近々訪れてみたいと思います。

4.小さな者でも大きな相手に立ち向かえ。

セブン&アイHDに占める百貨店事業の営業収益は約8.5%です。

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海外コンビニエンスストア事業(約41.2%)、スーパーストア事業(約27.9%)、国内コンビニエンスストア事業(約14.7%)に次ぐ4番目ですが、決して大きいとは言えません。

また、営業利益をみてみると唯一、営業損失を出している事業となっています。

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グループの中で占める売り上げは小さいうえ、営業損失を出している状況にある「西武・そごう」。奇跡なんて起こらないと思われてしまうかもしれないけれど、「大逆転」を起こしたい。そんな想いが込められているのではないかと考えました。

5.まとめ

以上のことから「わたしは私。さ、ひっくり返そう。」を「西武・そごうが百貨店として大逆転する」というメッセージであると読み解きました。

西武は1940年(昭和15年)から、そごうに至っては天保元年(1830年)から続く老舗百貨店であり、ダイヤモンド・チェーンストア「百貨店売上高ランキング(2019)」によると、「髙島屋」「 大丸松坂屋百貨店」「 三越伊勢丹」に次ぐ第4位です。

個人的に小さい頃からよく行っていて、愛着のある百貨店。このように読み解いたからには、「大逆転」のために微力ながら力になりたいと思います。

最後に、企業理念に魅力を感じたので転載させていただき、結びとさせていただきます。

企業理念「想像以上の提案で、お客さまに発見を。」
私たちが、もっとも大切にするのは「今までにない提案」です。お客さま自身も気付かなかった「想像を超えた自分」に出会っていただく。しかも時代に合った方法で。私たちのご提案で、お客さまの表情が、またたく間に明るくなる。その瞬間に立ち会うために、私たちは心を尽くすのです。

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