見出し画像

変化を受け入れてくれる心地良さ

「お前、変わったなー」

いや、違う。それはあなたが僕を見る見方が変わったんだ。

僕自身、「変わった」と言われることが結構多くて、そしてその言葉はとても嫌いな言葉です。たしかに、僕は親しくなって以前よりはあなたに対して自己開示をするようになりましたが、僕の核自体は全く変わってないと思うから。この変化は僕とあなたの関係性の中で生まれたものなのに、どうしてその要因を僕に押し付けるのだろう、なんてひねくれたことを思ってしまうのです。第一、人がそう簡単に変われたら、生きていくのに苦労なんかありません。変われないから、僕たちはコミュニティによって仮面を使い分けるのです。自分の核を少しずつ変化させるのです。

村上春樹の『ノルウェイの森』を再読した。

~あらすじ~
主人公のワタナベは親友のキズキを自殺で亡くした後、そのキズキの恋人であった直子と大学1年生のある日、再会し恋愛関係?に発展する。しかし、直子は突如として姿を消し、京都の施設へと入所。一方、ワタナベは大学で緑という新しい女性と出会う。2人の女性の間で揺れ動きながら物語は進む。ワタナベはその過程で様々なものを喪失していく。その果てに手に入れるものは何なのだろうか。

最初に読んだのはおそらく大学に入学して間もない時期。ワタナベをはじめとした大学生の奔放的な「性」に対する認識に僕は少し興奮しながら読み進めたのをよく覚えている。その時、僕はワタナベの感覚がどうしても理解できなかった。この人は何がしたいのだろうか?直子は?永沢さんは?セックスに対する認識が貧弱だった僕には彼らの言動が全く理解できなかった。

しかし、今日読み終えた僕は登場人物たちに「変わったな」と言いたくなった。本の内容はもちろん一切変わっていない。でも、変わったように感じた。

そう、変わったのは僕自身だったんだ。

僕がセックスに対する認識が変わった。そして、自分の身をすり減らすことの意味を知った。二十歳になった僕は責任感が見えるようになってきた。あらゆるセリフが僕の胸に響いた。

「俺はもう二十歳になったんだよ。そして俺は生き続けるための代償をきちっと払わなきゃいけないんだよ」本文p.204
「恋に落ちたらそれに身をまかせるのが自然というものでしょう。私はそう思います。それも誠実さのひとつのかたちです」本文p.244

登場人物たちは一切変わらず、僕の変化を受け止めてくれた。それがとても心地よくて仕方なかった。

次に『ノルウェイの森』を読むとき、僕は彼らに何を感じるのだろうか。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?