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型が身につく鍼灸臨床 -カルテの書き方-

カルテの書き方

 今回学ぶ内容は「カルテの書き方」についてです。


 医師がカルテを記載する理由は、①診療効率の向上、②病態把握と診断推論能力の習得、③医療連携に活用、④トラブルの防止とその対策などが挙げられます。鍼灸師がカルテを記載する理由は前述の理由以外に以下の点が挙げられます。


鍼灸師がカルテを書く理由

1.鍼灸臨床は予定調和的に進むわけではない
 鍼灸臨床では、基本予想外のことが起こり得る可能性があり、予定調和的に進まないことを前提としたプランニングが事前に必要となる。予想外のトラブルが顕在化した際にその都度、対応するということが求められるため、経過や治療内容の変化などの情報をカルテに記載しておくことが求められる。

2.患者の情報を細かく把握できる
 カルテに情報をアウトプットすることで自分自身が情報を整理し把握しやすくなる。

3.カルテ自体が教育媒体になる
 正しく記載されたカルテからは、記載を行った側の思考回路を読み取りやすいので議論することができる。議論するによって思考回路を修正することができるため、良いカルテは良い教育媒体になる。


カルテ記載の基本

 1968年にL.Weedが提唱したPOS(Problem Oriented Systems;問題志向型システム)があります。このPOSを採用しているカルテの記載法がSOAP形式となり、一般的な記載方法として活用されています。
 SOAP形式のカルテは、患者の抱える問題ごとに記述されており、そのため、膨大な情報を整理でき、論理的な診断推論や治療の計画立案が可能です。

 鍼灸医療面接では、「OSCA frame」や「Disease-Illnessモデル」、「解釈モデル」などを用いて患者さんの病歴を明らかにしました。この明らかにした内容をカルテに記載するのにも方法があるため把握しておくべき内容となります。

BEO frame

 よりマクロな視点で病歴を把握するためには、患者が症状・疾患を抱えるに至った病歴をBackground(患者背景)、Exposure(曝露)、Outcome(結果)の3つに分類して考えます。その際に使わる「BEO frame」について説明します。

BEO frameとは?

  1. Background:患者のもともとの医学的背景

  2. Exposure:患者が受けた何らかの介入

  3. Outcome:現在の状況

BEO frame

 OSCA frameと違い、患者の基礎情報やより経過の長い情報を含みます。この点からBEOのコンセプトをいつも考慮しておけば、よりマクロな視点でも診断へのアプローチが可能となります。
 一方、BackgroundとExposureの各項目は教わる規範的な病歴の項目を形式化したものですが、各項目の情報は病歴を交通整理する上で有用なものが多いです。
 しかしながら、多忙な鍼灸臨床の中ですべての患者さんのBEOを把握することは困難であるため、必要に応じて情報を取ることが望まれます。
 また、患者さんの基礎情報にMODIFIERが含まれる場合には注意が必要です。病歴を含め臨床情報のデータが患者さんの意図とは無関係な歪曲されて表現される場合があるからです。

MODIFIER

SOAP形式

SOAP形式とは?

 SOAP形式は、Subjective(主観的情報)、Objective(客観的情報)、Assessment(評価、病態把握、鑑別診断、治療計画)、Plan(治療内容)のそれぞれの頭文字をとったものです。

SOAP形式

Subjective

 Subjectiveの定義は、患者や家族、前治療者などの他人から収集した過去から現在に至るまでの間接的情報のことです。
 患者や家族の証言をはじめ、前治療者などからの手紙やカルテに記載された情報、前治療者の身体診察所見や検査所見などです。留意すべき点は、前治療者などからの情報はその精度も自らは保証できないためこの項目に入れるべきです。

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