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型が身につく鍼灸臨床 -鍼灸医療面接(2)-

 私がなぜ鍼灸師を対象とした情報を発信するかというと、理由は大きく2つあります。

1.鍼灸師の資質向上と社会的地位の向上のため
 現在、全日本鍼灸学会では『認定鍼灸師』を制定し、医師と同じように「2階建ての構造」を目指しています。1階部分にあたる基本領域では、「医療機関との連携」について触れらています。現状では、鍼灸師同士の連携も出来ていない(諸文書の記載方法や鍼灸院間での紹介・逆紹介のシステムなどが確立していない)ため、医師との医療連携は夢のようなお話しです。しかし、一部の標準に達している鍼灸師であればルールに則った医療連携が行えてしまうので、今よりもさらに市場の独占を招く可能性があります。それによって生み出されるのは、鍼灸師の「貧困の格差の助長」です。社会的地位の向上のためにはこのような課題にも取り組まなくてはいけません。また、医療には数多くのルールが存在するため、医療連携を実施するにあたっては、そのルールを把握しておく必要があります。それらを実践することができる臨床力の高い鍼灸師の育成ならびにそうした人材が活躍することがこの課題を解決するための必要条件であると私は考えています。

2.切磋琢磨できる鍼灸師を探すため
 私は、24歳から外来に立ちはじめ、26歳になる頃には年収も大台に乗せることができました。現在でも右肩上がりを達成しています。国民の鍼灸療法の年間受療率は低下しているのに、なぜこうした結果が生じるのでしょうか?それは、医療の特性として、質の高い医療を提供することができれば受療者は増えるからです。
 一方で、現状では鍼灸師の臨床力の低下や力量のある鍼灸師が少ないことも推測することができます。つまり、鍼灸師の臨床力が向上し、質の高い鍼灸臨床を提供することができれば、競合相手が少ないため、必然的に年収などの結果にも反映しやすいとも言えます。また、この質の高い状態を維持するためには、学び続けることが重要で、同じ目標を持った同志と一緒に取り組むことで、お互いに成長し切磋琢磨できる関係を築くことができます。

 このnoteでは、鍼灸師として成長したいけど、その方法が分からないという方に対しても情報を発信しています。また、私はゴリゴリの臨床家でもあるため、医学的に正しいことだけでは、お金が稼げないことも知っています。臨床上の押さえておくべきテクニックやどのような対応を行えば、次に繋がりやすいのかもある程度は知っています。それでは前回の復習から始めます。


前回の復習

 前回は鍼灸医療面接の重要性や副作用、医療面接を行う上での注意点などをお話ししました。また、鍼灸医療面接の本質は、患者さんが体験した物語を映像化されて浮かび上がるように再現する行為だとお伝えしました。
 そして今回お話しすることは私自身も実践していることです。効率的かつ適切で、再現性のある鍼灸医療面接を行う上では半構造化された手法を用いていきますが、私は「OSCA frame」や「Disease-Illnessモデル」、「解釈モデル」などを用いて患者さんの病歴を明らかにしています。今回はこれらについて解説していきます。

OSCA frame

OSCA frameとは?

 OSCA frameとは、半構造化された医療面接の手法のひとつでOnset、Sensation、Course、Affectorsの頭文字を取ったものです。


  • 一般的に現病歴で重要となる情報を4項目に分類し並列化した。患者の問題点が痛みや感覚を伴う知覚関連の症状であれば以下の4項目を、伴わなければSensationの項目は不要である。

OSCA frame

 また、以下の4STEPも知っておくとスムーズに進みます。これは一般的なビジネススキルとしても多くの方が活用されています。


  1. 「状況」を聞く

  2. 「問題」を聞く

  3. 「リスク」「影響」を聞く

  4. 「提案」の合意を得る


 それでは臨床力を高めるために、実際の病歴の進行を交えながらこの4STEPの運用方法に関しても説明します。

「お待たせしました。こんにちは。そちらにおかけください。本日、担当する松浦と申します。よろしくお願いします。」

 まずは挨拶自己紹介からはじめます。そして、鍼灸医療面接に移行していきます。
 鍼灸医療面接では相手の「状況」を把握するためにOpen question(開かれた質問)から必ず始めます。それは、できるだけ解答に自由度を持たせて病歴を語ってもらえるようにしたいからです。
 「どうして」、「どんな」、「どのように」など3つの「ど」を用いる拡大質問と呼ばれる手法で質問を行い、解答に自由度を持たせます。これは、病歴を聞く早期に意図的に用いることが望ましいです。

「今日はどうされましたか?」とか「こちらの問診票にも書いてありますが、〇〇はどのように起こったのか経緯をお聞かせいただけますか?」、「どんな感じですか?教えていただいてもよろしいですか?」

 そして、ここで最も重要なのが、最初の30秒間は口を挟まないことです。そこが患者さんの病歴の中心テーマになるからです。
 最初の30秒間は患者さんの話しに集中して、なにに困っているのかを施術者自身がよく考え、相手の「状況」を聞くことが大切です(STEP1)。
 それでも患者さんの話しが冗長であったり、周辺のバックグランドの話しだけに終始する場合、または主訴がつかみにくく曖昧で要点を得ない場合には、否定的な語や逆説的な言葉は挟まないで、以下のように言葉を挟むと良いです。

「なるほど…わかりました。それでは、今日〇〇さんがこちらを受診されたのはどうしてですか?」や「そうですか。それでは××と△△の症状があったのですね。では1つずつ教えてください。××についてはどのような経過だったんですか?」

 患者さんと信頼関係を構築する上で、まずは患者さんの話しを聞くことに徹底することが重要です。途中で話しを遮ってしまうと、患者さんも本心を語ってくれなくなります。最初の30秒間は、口を挟まずノンバーバルコミュニケーションで対応するのが好ましいです。

 それでは、発症に関する情報を聞くときのポイントを学んでいきましょう。

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