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型が身につく鍼灸臨床 -鍼灸医療面接(1)-

Q.鍼灸師として成長するためにはどうすればいいですか?
A.良い指導者を見つけることです。

 例えば、ゴルフをこれから始めようとするときに「打ちっぱなし」に行って、とにかく数をこなす方がいらっしゃいますよね?私からしたらその行為はマイナスでしかありません。基本が分からず型もないため、変な癖がついてしまったり、誤った身体の使い方になってしまいます。どれだけ才能があっても一定以上の成長は見込めず、ある時から伸び悩んでしまいます。ここで大切なのは、良い指導者を見つけることです。身体や道具の使い方などを、自ら実践しながら説明できる人と出会えるのがベストです。正しく成長できるならお金を払ってでも学びますよね?そして、分かりやすく説明してもらえると、成長するスピードも早くなり、楽しみながら上達することができます。これは、鍼灸でも同様のことが言えると思います。鍼灸師として成長するためには良い指導者を見つけることが重要です。それでは本題に入っていきましょう。


鍼灸医療面接について

 今回お話しする内容は「鍼灸医療面接」についてです。通常の医療面接と鍼灸医療面接とでは異なる点があります。それは、鍼灸において医療面接自体が治療の一部として機能するということです。不適切な鍼灸医療面接はのちの治療にも影響が出てしまいます。適切な鍼灸医療面接は患者さんとの信頼関係にも良好に作用し、継続した治療への動機づけにもなりますので、押さえるべき点と言えます。


◎ 鍼灸医療面接の重要性

鍼灸師が実施する医療面接には以下の役割がある。

  1. 患者さんとの信頼関係の構築

  2. 鑑別疾患の想起と病態把握のための情報収集

  3. 鍼灸治療の適応・不適応の判断

  4. 患者教育と治療への動機づけ

☆ 不適切な医療面接は後の治療にも影響を及ぼす。


鍼灸医療面接の副作用

 鍼灸医療面接は重要ですが、その一方で、「副作用」があると私は考えています。医療面接自体に「話す」と「聞く」という介入は欠かせません。この中で特に「話す」という介入のほうが「聞く」よりもはるかに適切さを求められ、副作用も生じやすいです。ここでいう副作用とは、鍼灸医療面接によって症状がかえって増悪したり、トラウマを与えてしまったり、あらたな症状や問題行動が出現することです。したがって、医療面接に時間をかけることを「目的」にしてしまうと、この副作用が生じやすくなってしまうため、医療面接に長い時間をかけるということは相当の修練が必要となってきます。

 ある流派では、初診の患者さんに2~3時間もかけて医療面接を行います(その鍼灸院はかなり繁盛していて、鍼灸師も相当な人数がいます)。こうした緻密な医療面接が重要であることは紛れもない事実ですが、人数の少ない鍼灸院(1~2人)で同様の時間をかけてしまうと、経営面に多大な損害が生じてしまうだけでなく、前述した副作用の発生頻度も高くなります。したがって、ある程度の時間で区切って身体診察ならびに施術に移行することが望ましいです。

鍼灸医療面接の本質とは?

 鍼灸医療面接の本質は、患者さんが体験した物語を映像化されて浮かび上がるように再現する行為だと私は考えています。つまり、病歴収集のためのチェックリストを埋める作業ではなく、患者さんを通して物語を完成していく行為が本質です。患者さんを通して物語を完成していくためには半構造化された手法を用いますが、その運用には注意が必要です。


◎ 医療面接の注意点

  • 従来使用されている半構造化された手法(例えばOPQRSTやLIQORAAA)による医療面接は情報収集が主体であり、得られる情報の量は多いが、医療面接自体が治療として機能することは少ない。

  • 集めようとする情報が患者の気にかけている問題と異なっていたりすると、その後の治療にも悪影響を及ぼす可能性がある。


 これらの注意点も踏まえて私が行っている鍼灸医療面接は、「OSCA frame」や「Disease-Illnessモデル」、「解釈モデル」などを用いて患者さんの病歴を明らかにしています。

 次回はこれらを説明していきます。


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