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知ってると得するあいづちの意外な機能

【この記事のまとめ】
あいづちには、相手との関係維持や、発想力を高める機能があり、さらに様々な心理的役割も報告されている


日常会話の中で何気なく使うあいづちですが、普段意識することってあんまりないですよね。


それもそのはずで、あいづちはほとんど会話上の習慣みたいなものです。余程意識しない限りは、どんなタイミングで、どんな頻度で打つかには個人差があります。


ぼくはあいづちをめちゃくちゃ大事にしているので、人よりは多く打つ方です。とはいっても実践し始めたのは2〜3年ほど前からなので、比較的最近ではありますが…。


そこから相槌を意識し始めてからふと感じたことと、それに伴って思い出した情報がありました。こちらです。


女性は男性の2倍あいづちを打つ?


昔このような情報を目にしたことがあったのですが、いざあいづちを意識してみるとこれはたしかにそうかもしれん、と思ったのです。


ただそのデータにアクセスしようと調べてみたのですが、論文形式であいづち回数の性差に関する研究は見当たりませんでした。


ぼくのリサーチが甘いのか、以前見た情報が根拠のない話だったのかはわかりませんが、体感としては納得できるお話だったので記事にしてみます。


ということで今回はあいづちの機能に関するお話です。論文をいくつかもってきたので、研究の結果から分かったことをまとめていきます。


またその中に予想してなかった意外な事実もわかったので、メモ書き程度に記しておきます。


あいづちの機能① 関係維持

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あいづちの機能には大きく分けて2つあります。

関係維持」と「創造性」です。


まず関係維持については、過去の研究から以下のような機能をもつことが知られています。

【あいづちがもつ関係維持の機能
会話を円滑にする
・話の展開をコントロールする
発話速度を調節する
対人魅力を上げる


話の展開をコントロールする


話の展開をコントロールする、というのはつまり、話が膨らみやすくなるかどうかということです。


あいづちは「あなたの話ちゃんと聞いてますよ」というメッセージを相手に伝える役割をもつので、話し手はその安心感から、次の話題を引っ張り出そうとするようです。


発話速度の調節


発話速度の調節については、相槌を極端に早く打ったり、話の途中に挟み込んだりするなど、あいづちのタイミングによる会話に変化を観察した実験から分かったことです。


例えば、通常よりも早いタイミングであいづちを打たれると、その後の話すスピードがゆっくりになるといった傾向がみられるそうです。


対人魅力を上げる


対人魅力については、大学生を対象にした、グループでの会話を調査した研究から明らかになりました。


あいづちを打ったときと打たない時の、話し手と聞き手のそれぞれがもつ印象を調査しました。それが以下のような結果です。


あいづちの対人魅力
話し手はあいづちが多い聞き手に好意的な印象をもつ
聞き手はあいづちを多く打った話し手に好意的な印象をもつ
対人魅力は感情や社交的な魅力であり、知性や道徳的な魅力ではなかった
・話し手の方が聞き手より対人感受性が敏感である


このことから、あいづちを打たない人の対人魅力度は、打つ人に比べて相対的に下がってしまうということがわかります。


あいづちの関係維持まとめ


つまり、これらのことから、あいづちは受動ではなく能動的なコミュニケーションだといえます。


会話においては聞き手も重要な役割を果たしているため、聞き役に回っているから会話に参加していない、ではないということですね。


POINT①

・あいづちは相手に「聞いている」というメッセージを届ける
・あいづちは対人関係を良好にする機能をもつ
・あいづちは能動的な会話参加


あいづちの機能② 創造性

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続いて創造性について。

【あいづちがもつ創造性の機能】
・あいづちを多く打つほど、話し手のアイデアが生まれやすくなる


これは意外な効果ですね。たしかにいわれてみれば、話が膨らむということは新しい話題や発想が生まれるということでもあります。


これを観察した実験では、擬似的な会議を行って調査しています。司会(聞き手)が参加者(話し手)に打つあいづちの数を変化させて、生まれるアイデアの量にどう影響するかを確認しました。


その結果、あいづちがいれる方がアイデアの量が増え、さらに生まれるアイデアの質も高まることがわかりました。あいづちすげえ。


POINT②

・あいづちを打つほど、話し手のアイデアの量と質が高まる



あいづちを打たない人

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冒頭でも触れましたが、ぼくの体感でもあいづちを打たないのは圧倒的に男性に多いです。


女性はやはり基本的に対話能力が高いというか、話をするだけではなく、聴く態度をみても上手な方が多いです。


また、極端にあいづちも打たない人がたまにいますが、そうすると会話にすごく変な間が生まれます。こちらも話す気力もなくなるし、おそらくこちらに興味もないでしょうから、ぼくはたいていそこで会話を止めるようにしています。あんまりいい気分ではないですけどね…。


このことに関する研究もありました。以下のように示されています。

あいづちの肯定・否定
・聞き手が話し手を肯定・承認・賛同をするほど、話し手の発言が増加
・聞き手が話し手の否定・否認するほど、話し手の発言が減少


また、あいづちを打たない人には、「会話上の想像力・共感性が薄い」という心理があると指摘されています。


ちなみに、この話し手への肯定によって会話がどんどん進んでいくことを「言語的強化」というそうです。言語的強化のおもしろい点は、肯定された意見は、その態度が半永続的に続く効果をもつことがわかっている点です。


例え話で考えてみます。

A「おれ、きのこ派なんだけど、周りの友達はみんなたけのこ派なんだよね…。」

B「いやきのこ美味しいじゃん!おれも好きだよ!」

とこのように肯定されたAくんは、その後もきのこ派であり続ける。そんなイメージです。


プレゼンの準備などの場面で、自分の意見に自信を持ちたいときは、似た意見の人と話してみるのもいいかもしれませんね。


反対に、危なそうな考えをもっている友達の意見を、下手にその場しのぎで肯定してしまうのは、友達のことを想うならちょっと危険かもしれません。


POINT③

・男はもっとあいづち打ってくれ
・肯定は相手の意見を強化する効果をもつ



まとめ:生返事でもいいからなんかいってくれ

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これまであいづちの機能や効果など、いろいろとみてきました。あいづちがもたらす効果は、発想力や意見の強化など、意外なところにまで影響していることがわかりました。


じゃああいづちが少ないと感じる人は結局どうすればいいのかというと、「意識的にあいづちを打ってみる」に尽きるのではないでしょうか。


あまり他人に興味がない人に朗報ですが、海外の研究によると、話を真面目に聞いていなくても、適当にあいづちを入れるだけで聞き手の役割が果たせることがわかっているそうです。


ちなみにあいづちを入れるベストなタイミングは、話し手の音声が1番弱まるとき、つまり「話の区切れ目」です。

よくあるパターンだと、こんな感じですよね。
「〜したんだよね」→あいづち
「〜でさ」→あいづち
「〜なんだよ」→あいづち


人の話を聞かない人生はありません。

ぜひあいづちを積極的に打って、聞き上手な人になってみましょう。


参考文献

稲井文『あいづちの心的効果』京都大学大学院教育学研究科紀要 (51), 218-231, 2005
大森晃; 土井晃一. あいづちが発想数に与える影響. 認知科学, 2000, 7.4: 292-302.
川名好裕. 対話状況における聞き手の相づちが対人魅力に及ぼす効果. 実験社会心理学研究, 1986, 26.1: 67-76.

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