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ありがとう

そりゃ中2の頃は頭が沸いていた
洗面器に35度〜36度の人肌なお湯を張っておちんちんを突っ込み
「くぅ〜これがおまんおまんの温度だべ〜」痺れていた

そんな僕でも中学校へ行けば真面目な顔をして授業を受けている
自分なんてそんな人間じゃないのに平然としている
まるで街中に潜みちゃっかり平気な顔で生活している犯罪者の様
人混みでおならをかます様な気持ち良さと不純な安心を噛み締める愉快犯と似ていた

隣の席のたっけんは僕を余裕で凌いでくれる変態だった
MDにAVの音声を仕込んでおりウォークマンでその喘ぎ声を聞きながら密かにクラスの女子を見つめるといった手に負えない渋みは遥か彼方

僕はもちろん女子に嫌われたくなかったしそんなリスクのある狂暴な動きはできないでいたしこんな輩から女子を守った方がモテるだろうと考えていたし家に帰ればクソークソーと言いながらおちんちんを物差しで測りすぎたりしていた

自己中心的なたっけんだったがテレビデオを持っていなかった僕を哀れんでは家に招いてくれたし必ずAVを一人きりで見せてくれた
お茶なんかを持ってきてくれる際にもノックしてから必要以上に間をおいて「開けてもいい?」と聞いてくれる繊細で優しい男だった

4時間目の音楽の授業ではスピッツが流れ
窓からは「凡」が見える
地元から愛されている激ウマ中華テイクアウト専門店
店主は強面坊主で決して愛想は良くないが味は抜群に良いといったゴリゴリ昭和ストロングスタイル
俺たちゃ一生ついてくぜとしか言いようがない油ぎっしゅ味濃いめ濃いめだった
その日も当然工事現場の兄ちゃん達がボリュームたっぷりの唐揚げやチャーハン(なんも味せえへん海老が上にちょこんとのった。味しかせえへんチャーハンと相性ばっちし)を目当てに列をなしている
ニヤニヤと笑いながらこっちを見ている
暇を持て余した茶髪ほど危ない生き物はいない
きっとあいつらはウチの女子が笛吹いてるのを見て俺のんも吹いてくれやなんや下品なこと叫んでくるに違いないぞ
バシン!!!窓を閉める
はい俺女子守った
誰も触れない1人だけの国
こんなにもスピッツにぴったりの眩しい太陽と爽やかな風をシャットダウンしてしまうが許してくれ君達の為なんだおおわかってくれ愛しのベイビーちゃん
空も飛べるほど頭が沸いていた

僕の初体験は卒業式が終わり中3から高1になろうとしている期間だった
今でもよく覚えている
初めてお口でして頂く時だった
僕は「ちょっと持って」と言った
彼女は「え?」
なんのことですかといったリアクション
僕はおちんちんを「握って」と言うのが何故か恥ずかしかったのでそれを紛らわす為にクレープかの如くファッション感覚で「持って」と言う作戦に出たのだが全く伝わらなかった

「緊張するからちょっとタバコ吸っていい?」
「あどうぞ」

彼女が初めてタバコを吸う人なんだと知った
リプトンのレモンティーを飲みながらセブンスターをふかしている
馬鹿みたいだ
ウンコの横でカレー食ってる様なもんだ
これからレモンティーみたいなん出してるとこ食べて下さるというのにええのんか
レモンティーでおしっこ彷彿せえへんのんか
気持ち悪やっぱやーめたってならへんのんか
大丈夫なんか大丈夫なんですかいと強烈に愛しく思いながら横顔を見つめた

彼女とは付き合っていなかった
僕は好きな人とSEXするなんて考えられなかった
性欲だけで彼女を見つめる僕は糞みたいだった
ことが終わった後
僕は感謝の気持ちを込めて僕に何かできる事はございますでしょうかと尋ねた
彼女は「キスして抱きしめてほしい」と言ってくれてしまった
僕はそれを言われて初めてキスも抱きしめたりもせずにSEXをしてしまったんだなと痛感した

高校生になって彼女とは会わなくなっていた
偶然出会った時には彼氏ができていて僕も知ってる馬鹿で良い奴だった

「あいつなんか最近坊主なってたけどなんか悪いことしたん?前のパーマめっさ似合ってたのに」
「坊主の方が似合ってないしモテへんからいいねん」
なんちゅう可愛い考え方だと思った

この人はすごく可愛い子なんだなあという事に今更ながら気付いて少しうずいた

可愛いと言えばウチのおかんである
一緒に金曜ロードショーでプリティーウーマンを観ていた時
リチャードギアが大好きなおかんは何故かジュリアロバーツに敵対心むき出しでどこがええねんこんな女の勢いで「やらしわ〜ジュリアロバーツはやらし!!こんな大っきい口いやらし下品やわ!」と何度もほざく何言うとんねんこいつは全くプリティーウーマンだなあだった

そんなおかんから産まれた僕は馬場だけにサラブレッドで小2の頃からエロ本を読みまくっていた
エロ本の世界を現実だと信じていた小5の僕は覚えたての「おまんこ」に興奮していた
この言葉を耳元で囁けば女性は感じてしまうと信じてしまっていたのである
どうしようもない僕は自転車で通りすがりのOLなんかに「おまんこ」と囁いてからダッシュで逃げた
襲ってくれるんちゃうか襲ってくれるんちゃうかと期待しながら
誰も襲ってくれない世界に嫌気がさして今に至る

公園で小さい男の子が自転車に乗る練習をしている
何度か倒れた後に横たわる自転車をコツコツと蹴りながら「じてんちゃのばか」と目を擦った
めさめさ可愛いかった
そんな気持ちあったなあと思う
何にでも命が宿っていると信じておもちゃにもよく話しかけたもんだ

それが今ではどうだ
臭い布団にくるまって天井を見つめながら過去のエッチなハイライトを永遠と巡らしている
夜の体重が全て自分にのしかかってるみたいな足取りで一歩一歩が重たく溶けかけのチョコレートの様にぬかるんだ地面を吸い込まれそうに辛うじて歩く
街灯に群がる蛾の様に自然と松屋を目指して特盛りを頼む
あんまり噛まないでかきこむ
米はあんまり噛まんと飲み込んだ方が美味いはずなのに全然美味しくない
自分にも松屋にも飽き飽きしているけど付き合わなしゃあない

ふと隣のサラリーマンのおじ様に目をやると
一人で丁寧に頭を下げてから頂きますをしている
情けない気持ちになった
グサッと刺さった
忘れかけていた僕の大切が少しだけ蘇った気がした
不安や悲しみは感謝を忘れている状態かもしれない
かかってこい絶望とは言えないがよろしくお願いしますいたします絶望と真剣に向き合うことはできるかもしれない

パンツを干す時に銘柄がちゃんと向かいのマンションに見える様に干している俺は何をしてるんだ
なんて微かな希望を抱いてるんだ
なんて微かに奇跡を望んでるんだ
自分を嘲笑う

だからもうちょっと生きてみないか
今は絶望に感じるかもしれないけど
人生から逃げずに現実と向き合ってできたその傷は美しい
大人になったらうんことおしっこに値段がつくんだぜ
嘘みたいな本当が未来で待ってる
糞みたいな夜に
乾杯



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