おごりおごられの怪
先輩「じゃあ今日は俺が出すわ」
後輩「え?いいんですか?」
先輩「いいよ、でも、今日おごられた分お前の後輩におごってやれよ」
後輩「あ、じゃあ…割り勘でいいです。」
先輩「え?」
後輩「先輩におごられた分を後輩におごっちゃったら、僕の利益ゼロじゃないですか。
しかも先輩の利益はマイナスですよ?いいんですか?
利益で言ったら、先輩マイナス、僕ゼロ、後輩プラスですよ?
今ここにいる人は誰も得しないじゃないですか。
あ、『僕が後輩におごる』という行為自体が先輩にとって喜び、つまりプラスということですか?
だとしたらまず言いたいんですけど、僕が後輩におごる保証なんかどこにもないですよ?
普通に考えて、誰だってお金を失うのは嫌ですからね。
僕も人間なので得したいですし…。
あと単純に、『僕が後輩におごる』という行為が先輩にとってプラスになる意味もよく分からないんですが…
だってわざわざ僕に『今日おごられた分後輩におごってやれよ』と言ったということは、『僕におごること』は別にプラスとしてとらえているわけではないんですよね?
『先輩のお金が僕を媒体として僕の後輩に行き渡ること』に快感を覚えているわけですよね?
すみません。先輩の趣味趣向をとやかく言うつもりはないんですけど、こんなややこしいお金のやりとりするくらいなら普通に僕が自分の分出したらみんな平等だと思ってしまって…
あ、もしかして、先輩も昔自分の先輩にこう言われておごられてきたんですかね?
じゃあ先輩は金銭的な損はしてないかもしれませんが、先輩の先輩が損していることになりますよね…
でも、その先輩もそう言われておごられてたとしたら…
これ、繰り返したら、『祖』にたどりつきますね。
おごりの、祖。
世界で初めて『今日おごられた分後輩におごってやれよ』って言った、祖。
先輩が損してないとしても、祖が損してますよね。
すごくいい人なんだろうなあ。祖。
でもそんないい人に損をさせていいんでしょうか。
わかりました。
今日は先輩におごらせてあげます。
でも、その恩返しのために、今度は僕におごらせてください。
そして、先輩も自分におごってくれた先輩におごってください。
さらにその先輩にも、お世話になった先輩におごり返させる…
これを繰り返せば、祖にたどりつけますよね。
みんなで祖への借りを返しましょう。
逆流です。
今までおごりによって動いていた経済を、逆流させましょう。
これでみんなプラマイゼロです。
変だと思いますか?でもよく考えたら当たり前のことですよね。
バレンタインに彼女からもらったチョコを、ホワイトデーにお母さんに返すのはおかしいですよね。
もらった恩はくれた人に返すのが普通です。
そしてこれを機に、こんな風習、終わりにしましょう。
学年、年齢、上司、部下じゃないんです。
機械的に選別できる『条件』でお金を出していたら、確実に先輩が損してしまいます。
感謝、期待、謝罪、お祝い…
おごる『理由』がある人にだけおごればいいんです。
こうしていけば、誰も損せずに済みませんか?」
先輩「その通りだ!!!!!!!!!!!!
2軒目行くぞ!!!!!!!!!!!」
サポートは生命維持に使わせていただきます…