【第二十九話:開戦前夜】そして、僕らは鯨になる(小説)

・前回までのあらすじ
 PVP歴史シュミレーションゲーム「バーチャル戦国大乱戦」。真田隼は真田家の家臣・矢沢頼康としてゲームをプレイしていた。織田家と北条家の間では、きたる合戦に向けて壮絶な情報戦が行われていた。

 出目金が生放送をした次の日、上杉と北条が同盟を結ぶ。長宗我部と毛利は北条と同盟は結ばずとも、毛利軍は備中の高松城に、長宗我部は阿波の勝瑞城に兵を集結させる動きを見せた。これは実質的に、出目金の放送に三勢力が呼応したことを示した。

木全忠澄「毛利と長宗我部の動きは気になりますが、北条征伐は予定通りに行います。既に信長様率いる本隊が二万五千の兵を率い、尾張の清洲城まで到達しております」

真田昌幸「我々はどのように動けば良い?」

木全忠澄「真田様は北条と手を組んだ北方の上杉を警戒していただきたい」

真田昌幸「北条と上杉を繋ぐ補給路を断つには、沼田城が要となりますな」

木全忠澄「仰る通り。元々、沼田城は殿が真田に与えよと命を受けている城。真田様は準備が整い次第、沼田城に入城していただき上杉の侵攻に目を光らせていただきたい。信濃方面からの進軍は海津城にて森長可隊が警戒する予定です」

矢沢頼綱「信長様及び織田本隊はどのように動かれる予定か?」

木全忠澄「徳川軍一万五千は東海道を東進し山中城に進軍予定。また、それと同時に河尻秀隆隊五千が甲州街道を南下し、岩殿山城に入城して北条方に睨みを効かす。信長様の本隊は情勢に応じ、以上二隊のどちらかに合流予定です」

真田昌幸「関東管領たる滝川一益様はどうされる?」

木全忠澄「上記三隊の動きに合わせて、箕輪城を南下し鉢形城の奪取を狙いまする」

真田昌幸「あいわかった。一益様が安心して鉢形城攻略に動けるよう、我らで沼田城は死守致しましょう」

木全忠澄「ありがたい。是非お願いいたしまする」

 直後、真田家は真田信幸と矢沢頼康率いる約千の軍勢が沼田城に入城。北方の上杉に備えた。その動きを察知した北条方は鉢形城に五千の兵を派遣。北方からの織田侵攻に備えた。しかし、その数は北条家の兵力、ごく一部でしかなかった。その一方で、下総国を支配下に収めた北条綱成隊一万五千は里見氏と和睦。僅かな兵力を残して、西方に軍を進めた。

 沼田城にて、真田信幸と矢沢頼康は、北条氏と里見氏が和睦した知らせを聞く。

真田信幸「北条綱成隊が織田我に控える北条本隊に合流すれば、北条征伐も難しくなりましょう」

矢沢頼康「となると、こちらはすぐに動いた方が良いと?」

真田信幸「基本的には。とはいえ、北条綱成隊も連戦の疲れがあろう。どこかで補給が必要となるはず」

矢沢頼康「問題は彼らがどこに向かうかですな」

真田信幸「距離的には鉢形城に向かう可能性が大きいでしょうな。鉢形城方面に向かえば、滝川隊に対して数的に有利を取れる」

 信幸の読み通り、数日後に北条綱成隊は鉢形城に入城した。

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