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東京から福岡にUターン移住して1年間を経てわかったことや感じたこと

2020年の12月に20年間暮らした東京から福岡にUターン移住しました。旧知の土地なのでそんなに大きな問題はない、と思っていたのですが、結果的にはいざ移住してみるとこんなにも違うのかと驚くこと頻りの1年を過ごしました。

あくまでもわたしの行動範囲内での個人的所感であることは予めご容赦いただきつつ、馴染みの土地であっても移住には驚きや戸惑いは発生するものです、という一例としてご笑覧ください。

お散歩天国の東京と車中心設計の福岡

まず、大きなギャップを感じたのは、街づくりのコンセプト/設計思想の違いです。

東京は23区内都下問わず比較的隈なくお散歩天国だったんだなぁと感じます。公共の交通機関があちこちに張り巡らされていることで徒歩率が高いこともあってか、歩行者の安全性や快適性が確保されています。
また、意外に緑や史跡も多く、一見華やかな銀座や原宿も表通りから1本入ると一変閑静で散策するには魅力的です。まさに歩行者中心設計がなされている印象でした。

一方、福岡は徹底して車中心設計の街です。駅周辺の一部地域はともかく、少し外れるとあらゆる路面店に広大な駐車場が完備されています。東京のように狭い坂道や難解な車線変更が少なく、ドライバーとしては広くて走りやすい道路環境が整っている印象です。
しかしトレードオフで、歩道は総じて狭かったり傾いているものが多く、お散歩にはいささか不向きです。

ちなみに、福岡県/市をあげて「まち歩かんね、クルマ減らさんね運動」(訳:町(を)歩きなさいよ、車(を)減らしなさいよ運動)という取り組みを推進している模様。インフラの方針転換と住民の意識改革という難易度鬼な施策ではありますが、盛り上がるのかどうか継続ウォッチしたい気持ちです。

完全キャッシュレスの東京とまだまだ現金派の福岡

Yahoo!のお膝元ということもあってPayPayは比較的普及しているように思いますが、他のキャッシュレス決済は東京ほどは浸透していないと感じます(わたしはiD派)。東京ではスマホ1つで出かけることも多くありましたが、福岡のスーパーやホムセンではまだまだ現金が手放せません。

これについては統計数値で顕著です。​

地域別に見ていくと、1位と47位で倍以上の差が生じているキャッシュレス払いですが、ワースト5はすべて九州地方。ほか「熊本県」が41位、「福岡県」が29位と、全国的に見ても現金至上主義的な傾向の強い地域だといえるでしょう。

上記は2019年のデータですが、体感として2022年現在そこまで劇的に浸透しているようには思えないので、今後PayPay以外のキャッシュレスも使える町になって欲しいなぁと切望しています。
というのも、メイン口座が都市銀行のままなので、手数料をケチろうとするとコンビニATMで高頻度に出金できないのです。地銀に口座開設しようかとも思いましたが、引き落とし口座変更が億劫でズルズルと今に至ります。そういう人多いんじゃないかなぁ。

福岡が少ないんじゃない、東京の美術館・博物館の数や規模が異常だったんだ

毎年ぐるっとパスを購入する美術館・博物館マニアだった上に、最後の4年間は上野徒歩圏内に住んでいたこともあって、福岡の企画展の少なさや規模の小ささをいささか寂しく思っていたのですが、こればっかりは東京の方が異常だったに違いないと思い直しました。国立や都立のみならず、民間の美術館の数や規模が尋常じゃなかったんだなぁと。

ちなみに、規模感比較は難しいものの、美術館/博物館の数ではいずれも長野県がダントツ1位とのこと。そういえば、水玉模様の松本市美術館もみんな大好き北斎館も長野ですもんね。また行きたい。

生鮮食品の質と価格の差は歴然

実はよく言われる家賃相場の差は、もはや市内主要地域では驚くほどの開きはありません。駐車場代を足してしまうとほぼ変わりない印象すらあります(ただし駐車場代単体だと東京と福岡の差はかなり大きいです。というか東京の駐車場代はオバケ)。

しかし、肉や魚、野菜の鮮度(つまり味)の良さと価格の安さは驚くほど違うんだなぁと改めて実感しました。金額的には微々たるものでは?とも思うのですが、◯◯専門店まで足を伸ばさなければ口にすることができなかったクオリティが近所のスーパーで入手できることの価値は、金額以上のものがあるかもしれません。

「食事がおいしいと思う都道府県」というアンケート調査でも1位を獲得(N=12,299)。そういえば、東京で「わたし福岡にUターン移住するんです」と伝えると大半の方が「あらぁ・・・でも食べ物が美味しいしいいところよね!」と何故か励ましてくださったことを思い出しました。

コンパクトシティ福岡は仕事も遊びも捗る

福岡の繁華街はギュっと小さなエリアに凝縮されています。おのずとオフィスもイベントごともその界隈で完結するため、移動距離が比較的少なくて済みます。
東京の場合23区とその周辺にくまなく仕事や遊びのスポットが点在していて、どうしてもあちこちに移動が発生していたように思います。赤坂六本木界隈で飲んでいるときに池袋に呼び出されると若干躊躇してしまっていたものですが、福岡に置き換えると太宰府↔︎天神間の移動時間とほぼ同じなのだからさもありなんです。
また、終電を逃してもタクシー代は大抵3千円前後。東京時代より躊躇なく利用できます。

我が東区ではこんなプロジェクトも動いているそうです。

パーソナルスペースやコミュニケーションの文化が違う

これは実話なのですが、
Google Mapを見ながらウロウロ歩いていると通りかかったおじさんやおばさんが「どこ行きよーとね?」と声を掛けてくるのです。
そこは繁華街ど真ん中という訳ではありませんが、人の往来もあるそこそこ中心地に近い福岡市内。東京ではスマホを見ながらウロウロしている人などごまんといますし、基本的に他人に干渉しないことをよしとしている空気があります。なので、「ああそうだった、福岡人はサービス精神旺盛だった」と思い出しつつ、帰ってきたんだなぁとニヤニヤしてしまいました。

近いです。距離感。

まとめ

移住には当然様々なトレードオフが発生しますし、生活のそこかしこで生じるギャップに衝撃を受けることもあります。それなりの覚悟は必要です。そして、100点満点非の打ち所のない移住というものはおそらく不可能だと思います。しかし、自分や家族の大切にしたい価値観を疎かにしないことと、折り合いをつけられるポイントを明確にしておけば、大抵の諸問題は目を瞑れるのでは、というのがわたしの所感です。

わたしの場合、超アナログ派の旧友たちと頻繁に会える距離になり、且つ東京のデジタル派な友人たちはリモートで変わらず相手をしてくれるので、交友関係は移住によって寧ろ向上しました。

テクノロジーも行政等の仕組みも、わたしが上京した20年前とは比べ物にならないほど移住者に優しく、居場所を問わない社会に成熟しつつあると感じます。検討中の方、興味がある方は、思い切って試しに半年なり1年なり移住してみるのも良いかもしれません。こればっかりはご自身の感覚器でテストしてみるしかないですもんね。

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