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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#群馬

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

追いかけっこ【埴輪紹介所その179】

円筒の側面で追われるは 猿の親子。 親はともかく、子は単独で見たら猿かどうかわからない。 親の前脚が円筒に付いていたことを示している。 追うは犬。のんきな顔に見える。 円筒はだいぶ復元で、犬がくっついていた部分は出土しなかったらしい。 犬の尻の方に、突帯にくっついていた跡があるとのこと。 位置の復元は、犬の表情で決めたらしい。 反対側から見ると ただの円筒埴輪? わからない。どこかに埋もれた別の像があるのかも。 小さめの四角い透孔。 そんな円筒の側面でバタ

冠の影【埴輪紹介所その168】

堂々とした立ち姿がかっこいい。 なんといってもこの被りもの。 冠なのか 帽子なのか はたまた冑なのか とにかくすてき、お似合いです。 しかしそれを被っているせいでお顔に影が… 照明って難しい。 2018年には、影が軽減されていました。 ミズラについているのは玉か鈴か。リボンか。 後ろ頭は絶壁。 群馬県太田市鳥之郷町(長久手古墳)出土の男子埴輪。 所蔵は國學院大學。展示は國學院大學博物館。 撮影は2011、2015、2018年、國學院大學博物館にて。 またね。

強運強烈パイナップル【埴輪紹介所その164】

高さが足りないか。パイナップルの葉と見るには。 でも頭の形とあいまってパイナップルっぽい。 埴輪時代には正体がわかっていただろうパイナップルが、いつしか謎となってしまった。謎はいまだ解かれずにいる。 かみつけの里博物館で初めて見たときの衝撃は大きかった。びっくりというより、呆然。 なんと埴輪の世界は奥深いのか。想像の範囲を超えてくる。かるく飛び越えていく。追いつけない。 顔はだいぶ直してある。 パイナップルの葉も、盾もかなり欠けているのだが それでも残ったものが、

リボン2つ(「違うよ!」)【埴輪紹介所その163】

額のほうはハチマキでしょう。 てっぺんのほうは、髻(もとどり)説とかぶりもの説とがある。 どっちかな。 この埴輪のは帽子というか、頭巾っぽい。 でも 何を言っても「違うよ!」と返されそう。 ところで盾を持っています。 幅おさえめ。盾としてはどうか? 「うるさいよ!」? 群馬県高崎市の保渡田八幡塚(ほどたはちまんづか)古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ103.4cm。 所蔵は「かみつけの里博物館」。 同じ古墳から、まったく違うかぶりものの盾持ち人埴輪が出土していま

双耳杯を持つための手【埴輪紹介所その162】

勾玉を着けた彼女が捧げ持つのは 双耳杯(そうじはい)なるうつわ。 なにがのせられていたのか。 今は何もない。 横長の浅い器。 ペン皿のようにも見えるが、当時ペンはない。 全体の粗めの作りに対し、手は五本の指がしっかり表現されている。 埴輪の指は、ここまではっきり分かれていないことが多い。 特別な器を持つための特別な手なのか。 群馬県渋川市の坂下(町)古墳群出土の女子埴輪。高さ50cm。 所蔵は渋川市立古巻小学校。 撮影は2019年、『集まれ!ぐんまのはにわたち』

鼻の穴に石って【埴輪紹介所その157】

歯の代わりに石が詰められている。 それは分かるが なぜ 鼻の穴にも石を入れた? たぶん盾持ち人埴輪だろうとのこと。 その理由の一つが、歯をむき出しにしていることだそうな。しかし、さきたまで見た歯のある埴輪は、盾持ち人埴輪ではなかった。 ただ笑っている人物埴輪だったかも。 大きな耳環(じかん)とギザギザの被り物は、群馬県佐波郡玉村町の小泉大塚越7号古墳出土の人面付円筒埴輪との共通点。 人面付円筒埴輪だったかもしれない。 全体が残っていたらなあ、と思ってしまう。

あゆいの土鈴は落とさない【埴輪紹介所その155】

帽子と衣服に大小の鋸歯紋、特に袴は白い顔料で際立つ。 それもさることながら 脚結の鈴。 左右7つずつか。 こんなにもたくさんつけているのは初めて見た。 落とさないようにね。 埴輪の鈴は落ちると鳴らずに割れてしまう。 大刀の紋様はなんだろう。 帯にも鈴。 上衣の合わせがほぼ真っ直ぐというのは珍しい。 ちなみに、上着は胸に丸という、ちょっと変わった紋様。うまく撮れず。 こちらの埴輪の袴の紋様に似ている。 下記図録参照。 男子埴輪(出土は伝・群馬県)。高さ137

軍服を着た女【埴輪紹介所その154】

右手に頭椎大刀(かぶつちのたち)を持つ。 大刀持つ女子埴輪はめずらしい。これ1体のみかも。 個人的に感銘を受けたのは、たすきの薄づくり。見事です。 線刻や彩色も細かく丁寧。 甲冑をつけた女子埴輪はない。少なくとも、はっきり女子と分かる埴輪では今のところない。この埴輪も、甲冑をつけてはいない。 しかしこの埴輪のたすきは、どこか軍服を思わせる。 くび飾りは小さい玉をたくさん連ね、中央に勾玉を着ける。 たいていの埴輪の耳環(じかん)はドーナツサイズで頬に貼り付けられている

たまには放牧【埴輪紹介所その152】

バランスの取れた体型。 馬形埴輪にしては。 この埴輪は、埴輪ファン以外にもけっこう知られている。と思う。 なぜなら、馬具の説明を担当しているから。 トーハクの解説馬。 ただし、解説の図は別の埴輪。 おそらく埼玉県熊谷市上中条日向島出土の馬形埴輪。 解説馬には馬鐸(ばたく)がない。 そのぶん、杏葉(ぎょうよう)をたくさん下げている。 口元の鏡板(かがみいた)はだいぶ丸っこいが、おそらくf字形。 ところでこの埴輪、いつも壁のケース内に展示されています。 埴輪群像

カーディガンをはおって踊る【埴輪紹介所その139】

埴輪の上衣はたいてい左前の一枚物だ。 ところが彼女は 三枚着ている。 上着の上に一枚重ねて、さらにもう一枚はおる。 三枚目は前を開けている。カーディガン? 新しいモードなのか。左右対称も珍しい。 ところで 美人ね。 美人の埴輪は大勢いると思うが、いまひとつ活用されていなくてもったいない。 ヒビが入ってたりするから使いにくいのか。 いや、埴輪の真髄が、美とはまた別のものだからか。 髷は板状だが輪郭は曲線を描く。 額に、というかおそらくは前髪に、櫛。 耳玉あり。耳

ちょこんとのせた足にアンクレット【埴輪紹介所その136】

きれいな卵形の頭。 前髷の中央にかんざしのような櫛を挿す。 ところで 台形の椅子に座ってます。 薄い椅子。 腕はぎこちないがお行儀よい。手首に一重のブレスレットをしている。 腕に対し、脚はなんと細いのか。細いというより小さい。埴輪バランス。 足置きにちょこんとのせた足に 二重のアンクレット。 ほか、くび飾りや耳玉も。 斜めがけの袈裟状衣の上にたすきがけ。裳は省略されたか。 左の腰に鈴つきの鏡。 五鈴鏡。 椅子の前面と座面の端にギザギザ鋸歯紋。 帯にも鋸

パカッとひらくカブト【埴輪紹介所その135】

武装する埴輪。 弓を握る。弓形埴輪よりも、弓とわかる程度には弓らしい弓。 丸い冑の下は、ミズラも髷も見えない。この冑の原型がよくわからない。 同じ遺跡出土の冑に類したものか。 突起付冑(異形冑) 突起がパカッとあけば、埴輪と同じ形かも。 あかないかな。パカッと。サビてるから無理か。復元できないかな。 太ももを覆う膝甲(ひざよろい)も、腿を前面だけ覆う変わった形。 赤い顔料で市松模様。 背中にはユギを背負う。 しかし背負い紐がおかしい。 背負った状態では蝶結び

パンケーキでできている3人の女たち【埴輪紹介所その134】

3人で1つの椅子に座る彼女たち。 裳の後ろは パンケーキ5枚重ね? 背中の円板2つも、パンケーキに見えてくる。鏡だという説が有力だけど。同じ遺跡出土の埴輪の中で、この3人しかつけていない。 くび飾りもちょっと変わっている。2本の紐の間に玉が挟まれて連なる。 同じ遺跡出土の埴輪にはブッシュ・ド・ノエル女子埴輪もいます。 群馬県高崎市の綿貫観音山古墳出土の女子埴輪たち。高さ101cm。 所有者は国で、文化庁が保管し、群馬県立歴史博物館に長期貸与中。 撮影は2019年