マガジンのカバー画像

埴輪紹介所

183
はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

80%子馬【埴輪紹介所その141】

かつて犬形埴輪とみなされていた。 しかし子馬形埴輪に訂正された。 決め手は足元です。蹄です。 しかしこれだけでは犬ではないと言い切れない、とはにこは思う。 安定のために足の下端を広げただけかもしれない。吉備器台のように。 そして決定的な部分がない。 しっぽがない。 しっぽが巻いていなければ犬の可能性を完全に否定できるのだが。 ただ、しっぽがあったと思われるお尻の上側の孔の大きさからいって、根本はかなり太い。 犬形埴輪のしっぽは細く、お尻の上にちょろっと巻いて乗ってい

鳴き声を失った馬【埴輪紹介所その140】

蹄がちゃんとある馬。 馬具つきの馬。 しかし 口のない馬。 ない、というかぼやけているので表情があいまいなのが惜しい。 そのぶん、まぶたで語る。 巻き上げられたしっぽ。 実際の馬では見たことがない。 上向く尾は馬形埴輪の最大の特徴でしょう。 大阪府四條畷市の南山下遺跡(みなみさげいせき)出土の馬形埴輪。高さ54㎝、鼻からしっぽまで86.5㎝。 所蔵は四條畷市立歴史民俗資料館。 撮影は2020年『「ベゾアール(結石)」シャルロット・デュマ展』銀座メゾンエル

カーディガンをはおって踊る【埴輪紹介所その139】

埴輪の上衣はたいてい左前の一枚物だ。 ところが彼女は 三枚着ている。 上着の上に一枚重ねて、さらにもう一枚はおる。 三枚目は前を開けている。カーディガン? 新しいモードなのか。左右対称も珍しい。 ところで 美人ね。 美人の埴輪は大勢いると思うが、いまひとつ活用されていなくてもったいない。 ヒビが入ってたりするから使いにくいのか。 いや、埴輪の真髄が、美とはまた別のものだからか。 髷は板状だが輪郭は曲線を描く。 額に、というかおそらくは前髪に、櫛。 耳玉あり。耳

石の八重歯【埴輪紹介所その138】

お腹を抱えて笑う。 手は胴に溶けてゆく。 左に石の八重歯を見せる。 どうやら右にも石を入れていたらしい。 右脇の下の二重丸は何を意味するのか? 腰の後ろに何か差している。 この角度、鎌であろうか? いろいろ気になるが なにより、固まりかけた粘土にぐいっとあけた目と口。 粗い曲線ならではの表情。 つながった左右の眉。 ミズラは短く突き出す棒状。 かぶりものは頭巾か。 まだまだ気になるところいっぱい。 人物埴輪。出土地失念。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物

半月形の垂れ目【埴輪紹介所その137】

二本足埴輪ならではのプロポーション。 まるくふくらんだ太もも。 短い腕に籠手をつけ、頭椎大刀(かぶつちのたち)を佩く。甲冑はなし。 申し訳程度の武装。礼装か。 大粒の玉のくび飾りが目立つ。 半月形の垂れ目。 おちょぼ口。 顔や首は、黒と赤に塗られているようだ。入れ墨か化粧か。 服は白いかな? 色を再現した画像をつくってほしい。 ところで、山高帽は埴輪時代の重要アイテムらしい。 しばしば遭遇するトンカチミズラ。 どうやって結ったらトンカチ形になるの? 栃木県下

ちょこんとのせた足にアンクレット【埴輪紹介所その136】

きれいな卵形の頭。 前髷の中央にかんざしのような櫛を挿す。 ところで 台形の椅子に座ってます。 薄い椅子。 腕はぎこちないがお行儀よい。手首に一重のブレスレットをしている。 腕に対し、脚はなんと細いのか。細いというより小さい。埴輪バランス。 足置きにちょこんとのせた足に 二重のアンクレット。 ほか、くび飾りや耳玉も。 斜めがけの袈裟状衣の上にたすきがけ。裳は省略されたか。 左の腰に鈴つきの鏡。 五鈴鏡。 椅子の前面と座面の端にギザギザ鋸歯紋。 帯にも鋸

パカッとひらくカブト【埴輪紹介所その135】

武装する埴輪。 弓を握る。弓形埴輪よりも、弓とわかる程度には弓らしい弓。 丸い冑の下は、ミズラも髷も見えない。この冑の原型がよくわからない。 同じ遺跡出土の冑に類したものか。 突起付冑(異形冑) 突起がパカッとあけば、埴輪と同じ形かも。 あかないかな。パカッと。サビてるから無理か。復元できないかな。 太ももを覆う膝甲(ひざよろい)も、腿を前面だけ覆う変わった形。 赤い顔料で市松模様。 背中にはユギを背負う。 しかし背負い紐がおかしい。 背負った状態では蝶結び

パンケーキでできている3人の女たち【埴輪紹介所その134】

3人で1つの椅子に座る彼女たち。 裳の後ろは パンケーキ5枚重ね? 背中の円板2つも、パンケーキに見えてくる。鏡だという説が有力だけど。同じ遺跡出土の埴輪の中で、この3人しかつけていない。 くび飾りもちょっと変わっている。2本の紐の間に玉が挟まれて連なる。 同じ遺跡出土の埴輪にはブッシュ・ド・ノエル女子埴輪もいます。 群馬県高崎市の綿貫観音山古墳出土の女子埴輪たち。高さ101cm。 所有者は国で、文化庁が保管し、群馬県立歴史博物館に長期貸与中。 撮影は2019年

ブッシュ・ド・ノエルな彼女【埴輪紹介所その133】

手を重ねる。手首には二連のブレスレット。 何かを持っていたらしい。 くび飾りは大きな玉からなる。上衣はおなじみギザギザ鋸歯紋。 彼女のスカート(裳)はロールケーキ状。 あるいは丸太。ブッシュ・ド・ノエル? 埴輪時代の埴輪地域では、クリスマスもケーキもなかっただろうけど。 同じ遺跡出土の埴輪にはパンケーキ派もいます。 群馬県高崎市の綿貫観音山古墳出土の女子埴輪。高さ101cm。 所有者は国で、文化庁が保管し、群馬県立歴史博物館に長期貸与中。 撮影は2019年、群馬

赤のメイクが引き立てる色白【埴輪紹介所その132】

白塗り? いや脚部まで白いから、もともとの地が白いらしい。 白に赤のメイクが映える。 いや、赤のメイクが色白を引き立てる、と言うべきか。 これほど赤の顔料がしっかり残っているのはすごいことだ。 しかし、赤が目立ちすぎておてもやん感は拭えない。 おてもやんといえば熊本。熊本と言えばくまモン。くまモンは黒に赤のほっぺ。 ちなみに 赤い地に白を塗った埴輪もある。 オレンジでメイクする女子もいる。 色もだが、色を塗る場所も違う。 髷や襟や袖にも赤。 茨城県水戸市愛

おおきなタメイキ?【埴輪紹介所その131】

これほど大きな口の馬を見たことがない。 おおきなタメイキ? 埴輪時代の馬にもいろいろあったのか。 その口元に、轡(くつわ)の鏡板。 J? 定番はf字形。 ところで ちゃんと蹄がある。 腰とお尻の孔は通気孔。 千葉県香取市の鴇崎(ときざき)天神台遺跡3号墳出土の馬形埴輪。 所蔵は香取市文化財保存館。 撮影は2018年、香取市文化財保存館の常設展にて。 またね。

サルエルパンツ【埴輪紹介所その130】

脚が。いや腰が。 サルエルパンツ? 笑顔だが、 泣き笑いなのか。 苦笑か。 上半身と下半身を別々に作られ組み合わされた彼。 設計図が間違っていたのか。計算ミスか、連絡ミスか。 そもそも計画的に作っていなかったのかもしれない。 ほかにもいろいろ。 冑、いくらなんでも鋲が多すぎる。 その鋲と区別のつかない頸飾り。 赤の市松もよう、おしゃれだが甲にしては派手すぎる。 そして この足もとよ。 こういうクツがあったの? だとして、足はどう入っているのか... 栃木県

巻き上げられた朝顔【埴輪紹介所その129】

大きい。というか細長い。 そして突帯(とったい)が全部で9条。巻きに巻いた。 上から見たいけど 大きすぎて無理。 そもそも 近づけない。 茨城県小美玉市の玉里舟塚(たまりふなづか)古墳出土の朝顔形円筒埴輪。高さ110~120cmぐらい。 所蔵は明治大学博物館。 撮影は2014,2017年、明治大学博物館にて。 玉里舟塚古墳からは、家形埴輪も出土しています。 またね。

気まぐれな外面と内情【埴輪紹介所その128】

訳あって ネアンデルタール人(の骨格標本)と並ぶ円筒埴輪。 ホネより粘土。その表面。 二段にわたる斜格子紋。全周していないとのこと。気まぐれ。 上からのぞき込む。 粘土紐を積んだ跡が見えます。 なでつけは甘め。 のぞき込むと、作り方がわかる。 と同時に、この埴輪は内側はあまり完璧には仕上げなかったこともわかる。 高さ75~85cmぐらい、突帯が6条と立派。 それだけに、内側までは手が回らなかったか。合理的な省略は埴輪の得意技。 茨城県小美玉市の玉里舟塚(たま