入山夜鷸

夜のカワセミと書いて、ヤイツです。詩や掌編を書く者です。 作品を、公募という旅に送り出…

入山夜鷸

夜のカワセミと書いて、ヤイツです。詩や掌編を書く者です。 作品を、公募という旅に送り出すのが密かな楽しみ。 民俗学を学んだ経験もあり、民話調の物語を書くこともしばしば。

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812番書庫への扉

私がサイト「貸し本棚」さまをお借りして管理している、個人作品ページ「812番書庫」です。 noteに未掲載の掌編小説や詩などを閲覧することができます。 狐や民話がお好きな方や、古風な文学がお好きなは、よろしければお立ち寄りください。

    • 薄田泣菫『泣菫詩抄』から学ぶ➀「つばくら」

      今回は薄田泣菫氏『泣菫詩抄』の「つばくら」をうつして学ぶ。 蛇腹のような詩 この詩で特徴的なのは、前の行の一番最後にある単語と、次の行の一番最初にある単語が同じものを差していることである。 一行目全体は、二行目の「いきな姿」を指す。 二行目の「つばくらさん」は、三行目の「お前」を指す。 このように行の最初と最後が繋がって、蛇腹状の詩になっている。 まとめ つまるところ、このような詩を書くことは連想ゲームの一種だ。 連想ゲームができる人なら、誰でも簡単に書ける詩なの

      • 三好達治『山果集』から学ぶ➂「石榴」「丘の上」

        今回は三好氏の『山果集』から二つ、赤色の詩を学ぶ。 石榴比喩表現で「くどさ」を薄くする 一行目の「石榴」は四行目の「火薬庫」と同じものである。 文字数の少ない四行詩で同じ単語を多用すると、くどさが生まれてしまう。 比喩表現を使うことでそれを回避しているというわけだ。 石榴といえばガーネットであるが、あえてルビーを使っているのも……というのは、さすがに考えすぎであろうか。 火薬庫、というのは、手榴弾(グレネード)が石榴から名づけられているのを知ってのことだろうか。 なんに

        • 三好達治『山果集』から学ぶ②「海邊」

          また三好達治氏の『山果集』を「うつし」た。 写し始めて三~四編目にして、三好氏のスタイルが見えてきたように思える。 海邊『山果集』の三編目の四行詩。 この詩から学んだことは「語感を揃える」ことと、「あえて改行する」こと。 語感を揃える 一行目は「雨後」、四行目は「わが」という言葉で始まっている。 「雨後」と「わが」の語感はよく似ている。 「仔羊」では最後の文字の母音を統一、つまり韻を踏んでいた。一方この詩では最初と終わりの “はじまりの響き” を揃えることで、統一感や締

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        マガジン

        • 『素人が「うつし」で詩を学ぶ』シリーズ
          4本
        • その他記事まとめ
          6本
        • レトロ詩まとめ
          22本
        • 「書く習慣」詩作まとめ
          20本

        記事

          アプリ「書く習慣」、今日のお題は「喪失感」でした。

          アプリ「書く習慣」、今日のお題は「喪失感」でした。

          三好達治『山果集』から学ぶ①「仔羊」

          初めて、誰かの詩をまるっと「うつし」た。 ただ写すというものではない。 校正のようにペンを入れていく。表現に込められた意味を真摯に考察し、参考にできそうな技法を吸収していくのが目的である。 仔羊『山果集』の、一番目の詩。 この詩から学んだことは「意味によって表記を変えてみる」こと。 小説や記事の書き方では「漢字の表記は統一させましょう」とよく説かれる。もちろん小説でも必要であれば、意味や登場人物の年齢によって表記を変えたりするだろう。 しかしこの詩とじっくり向き合ってみると

          三好達治『山果集』から学ぶ①「仔羊」

          好きだからこそ気になる「歌詞の表記」

          平田義久氏の「日本の夏」私が最近ハマっている曲に、平田義久氏による「日本の夏」がある。 モダンで妖艶な雰囲気の一曲。 通勤・帰路・空き時間でループ再生するほど気に入っている曲であるが、好きだからこそ気になってしまう点がある。 歌詞の「歴史的仮名遣い」が気になって仕方がない。けれど、動画のコメント欄などにありそうな “ご指摘コメント” も無い。 今回は個人的に「こうではないか?」と思う表記に直して、以下にまとめていく。 尚、私はただの「言葉が好きな人」であって専門家では

          好きだからこそ気になる「歌詞の表記」

          レトロ詩「胸の燈り」

          ちらちら焚いた胸の燈りが、 雨でかき消されさうになつて ──なんともおかしな話である、 雨は窓の外だと云ふに。 ちらちら焚いた胸の燈りが、 何色なのかも見えなくなつて ──なんともみぢめな話である、 自分の燈りの色だと云ふに。 ちらちら焚いた胸の燈りが、 消えない事に苦しくなつて ──なんともふしぎな話である、 胸に燈りなど點かぬと云ふに。 ちらちら焚いた胸の燈りが、 どうしやうもない夜の叫びが……

          レトロ詩「胸の燈り」

          夏の執筆BGM⑤~単に夏を感じたいとき~

          ラテンだラテンだ!! 前回の記事で「黒いオルフェ」を紹介したが、今回は歌詞のないラテンで夏の執筆を盛り上げていく。 大好きで何年も聴いているアレンジ 今の執筆のみならず、過去の試験勉強も散歩も通学・通勤も、この動画に何度お世話になったことやら。 これが聴けなければ夏に非ず! ラテン音楽に馴染みのない方にとっては、ぜんぶ同じ「サンバみたいな夏祭り」に聴こえるだろう。そのような方は飽きてしまうと思うので、作業用のBGMにする前に、動画をしっかりと見ることをおすすめする。

          夏の執筆BGM⑤~単に夏を感じたいとき~

          夏の執筆BGM④~情熱的な作品のとき~

          ①から③までは1つのアーティストに絞っていたが、今回は国も違う曲を3曲並べていく。 踊りたくなるようなジーグ 軽々として勇ましいアイルランド音楽、ジーグ。 夏の野を駆け回る動物をモチーフに書きたい日は、だいたいこんな曲を聴いている。 自由や自然への喜びを想像しながら、悠々と書くことができる。 ちょっとアンニュイなボサノヴァ 時々は執筆中も、歌詞のある曲を聴きたくなる。 そんな夏の日は、この「黒いオルフェ」一択。 冷房に疲れて窓を開けた時、熱風が吹いてくると、どんな作品

          夏の執筆BGM④~情熱的な作品のとき~

          夏の執筆BGM➂~不思議な作品のとき~

          前回の記事「夏の執筆BGM②」では、不気味な作品に合う西洋のクラシック音楽を紹介した。 今回は日本の民話のような、不思議な作品を作るのに合う曲を紹介する。 厳かでありながら、霞のように軽い「雅楽」 風のように吹き抜ける笙、尾を引いて泳いでいく龍笛、足音のような鈴……雅楽ユニット「天地雅楽」の曲は、故く良く、新しい。 まるで長い時を経て語り継がれた重さを持ちながら、子どもでも親しめる伝説のようである。 上でリンクを貼ったのは私のお気に入り「天香具山」であるが、もう2曲紹介

          夏の執筆BGM➂~不思議な作品のとき~

          夏の執筆BGM②~ホラーな作品のとき~

          夏といえば、そう、ホラーである。 ホラーと聞いて、どの恐怖が浮かぶだろうか。 怪談?ゾンビ?生きた人間? 私は泉鏡花が書くような「妖しく美しい」ものや、内田百閒が書くような「地味に思い出して怖くなる」ものが思い浮かぶ。 あのような類の、日常に溶けているような恐怖を私も詩にすることがある。そんな時に聴くのが、この曲。 耽美で冷たい三拍子「フォルラーヌ」 これはモーリス・ラヴェル作曲「クープランの墓」という組曲に入っているひとつ。 組曲の中で最も「墓」という文字が似合う曲で

          夏の執筆BGM②~ホラーな作品のとき~

          夏の執筆BGM➀~レトロな気分のとき~

          年中聴いている「執筆用BGM」。 年中聴いているということは、夏もそのBGMに支えられているということだ。 今回は「レトロな気分」を支えるBGMを掲載する。 近代の文学者を感じながらアニメのサウンドトラックは、なかなか侮れない代物である。 とくにこの『啄木鳥探偵處』は歌人・石川啄木の生きた時代を舞台にしているだけあって、大正ロマンを感じられるサウンドトラックが多い。 歌唱曲ではない ( オープニングとエンディング、劇中歌の3曲を除く ) ため、自分の書いている詩や小説の内

          夏の執筆BGM➀~レトロな気分のとき~

          アプリ「書く習慣」、先日のお題は「今一番欲しいもの」でした。

          アプリ「書く習慣」、先日のお題は「今一番欲しいもの」でした。

          今日は海の日です。 よろしければ画像の「さかな」という詩から、さかなを探してみてください。 一匹だけ、逆方向を向いていますよ。

          今日は海の日です。 よろしければ画像の「さかな」という詩から、さかなを探してみてください。 一匹だけ、逆方向を向いていますよ。

          レトロ詩「かはたれどき」

          窓越しで良かつた。 外では空の、 赤を無理矢理 青で覆つた、 うずぐるぐるのおどろおどろが、 要らぬ人間を探してゐる。 窓越しで良かつた。 向かうの藪に、 影を捏ねて ぼうつと纏めた、 熊とも猿とも違ふ何かが、 目も口も無く佇んでゐる。 ああ、良かつた。

          レトロ詩「かはたれどき」