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レトロ詩まとめ

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普段書いている詩です。 明治大正、或いは昭和初期を思わせるような作風で書いています。
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記事一覧

レトロ詩「胸の燈り」

ちらちら焚いた胸の燈りが、 雨でかき消されさうになつて ──なんともおかしな話である、 …

入山夜鷸
2か月前
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レトロ詩「かはたれどき」

窓越しで良かつた。 外では空の、 赤を無理矢理 青で覆つた、 うずぐるぐるのおどろおどろ…

入山夜鷸
4か月前
24

レトロ詩「あぢさゐ」

雨けぶるなか おおぶりな 玉の花束かかへつつ 征くに征かれず散りもせず あぢさゐは 還り…

入山夜鷸
4か月前
14

レトロ詩「無垢なるものへ」

無垢であれかし、 高らかな金糸雀、 目覚め前の都会、 小さき自鳴琴、 片付かぬ文机、 手…

入山夜鷸
5か月前
12

レトロ詩「幻燈」

幾枚の透明なフィルム サアサお選びくださいな 薄く色があるでせう どうぞ 閃きの向くまま…

入山夜鷸
6か月前
26

レトロ詩「亂心」

明日の出立早くして 憎き眼の冴え冴えに さうだ 塗つてしまはう いたづらごころをうち起こ…

入山夜鷸
6か月前
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レトロ詩「書棚」

夜中 子の刻 本たちが、狹しと騒ぐものだから 童話、上 辭書、左 詩集、下 圖鑑、右 論文、其のまた下の右 さて如何です 「それなりです」 綺譚 怪談 戀愛譚、十册まとめて彼方行き 二册、其処 それ、彼処 これだけ、此處 あれ、何処 揃へて燈りを消しますと 夜中 滿月 本たちが、今度は讀めと騒ぎ出す

レトロ詩「展示臺」

小さな箒を持つて、硝子の外れた展示臺に上る。 ──なるほど、見世物は此のやうに。 仄かな…

入山夜鷸
6か月前
5

レトロ詩「灯の下」

盃をふるりと見る 浴びるほど、溺れるほど、 酒を飮まうとは思はぬものだが ゆら…… 大切…

入山夜鷸
7か月前
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レトロ詩「默讀」

ひとり、默つて讀みます 未だ呟いてしまふけれど ひとり、默つて讀みます 聽かせる人も居り…

入山夜鷸
7か月前
5

レトロ詩「音色」

マンドリンが聞こえる 硝子の彩光を壁に透かすやうな 續く螺旋の段を天まで昇るやうな 踊る…

入山夜鷸
7か月前
1

レトロ詩「キヤラメル」

キヤラメルを三粒しのばせて歩く 驛舎に停まる列車の吐いた 白い白い溜め息に お生憎樣、と…

入山夜鷸
7か月前
1

レトロ詩「歸農」

兩手で構へてゐたものが なんと片手に收まつて ぽつぽとだいぶ上氣した 丸い林檎を切つてゐ…

入山夜鷸
7か月前
1

レトロ詩「洋傘」

そろそろ通る ほら通る 今紫の美人傘 小鳥のやうなレエスの御手が 長柄の先に留まつてゐる 羽を廣げた かうもりに 顏は隱れて影匂ふ 何處へ行くのかバツスルの裾 馬車にも乘らず西を向く