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レトロ詩まとめ

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明治大正、或いは昭和初期を思わせるような、レトロな詩をまとめました。
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記事一覧

レトロ詩Ⅱ「無垢なるものへ」

無垢であれかし、 高らかな金糸雀、 目覚め前の都会、 小さき自鳴琴、 片付かぬ文机、 手…

入山夜鷸
13日前
10

レトロ詩「幻燈」

幾枚の透明なフィルム サアサお選びくださいな 薄く色があるでせう どうぞ 閃きの向くまま…

入山夜鷸
1か月前
26

レトロ詩「亂心」

明日の出立早くして 憎き眼の冴え冴えに さうだ 塗つてしまはう いたづらごころをうち起こ…

入山夜鷸
1か月前
7

レトロ詩「書棚」

夜中 子の刻 本たちが、狹しと騒ぐものだから 童話、上 辭書、左 詩集、下 圖鑑、右 論…

入山夜鷸
1か月前
14

レトロ詩「展示臺」

小さな箒を持つて、硝子の外れた展示臺に上る。 ──なるほど、見世物は此のやうに。 仄かな…

入山夜鷸
1か月前
4

レトロ詩「灯の下」

盃をふるりと見る 浴びるほど、溺れるほど、 酒を飮まうとは思はぬものだが ゆら…… 大切…

入山夜鷸
2か月前
2

レトロ詩「默讀」

ひとり、默つて讀みます 未だ呟いてしまふけれど ひとり、默つて讀みます 聽かせる人も居りません ひとり、默つて讀みます 周圍はインテリ許りです ひとり、默つて讀みます 新しい|詩を見渡して ひとり、默つて讀みます 歸らぬ積りで耽るのです

レトロ詩「音色」

マンドリンが聞こえる 硝子の彩光を壁に透かすやうな 續く螺旋の段を天まで昇るやうな 踊る…

入山夜鷸
2か月前

レトロ詩「キヤラメル」

キヤラメルを三粒しのばせて歩く 驛舎に停まる列車の吐いた 白い白い溜め息に お生憎樣、と…

入山夜鷸
2か月前

レトロ詩「歸農」

兩手で構へてゐたものが なんと片手に收まつて ぽつぽとだいぶ上氣した 丸い林檎を切つてゐ…

入山夜鷸
2か月前

レトロ詩「洋傘」

そろそろ通る ほら通る 今紫の美人傘 小鳥のやうなレエスの御手が 長柄の先に留まつてゐる…

入山夜鷸
2か月前

レトロ詩「寝しな」

冬の下 あうあう三毛の遠吠えが 縋つてゐるよ 去りし昨日に 其れを聞く ただ其れだけであ…

入山夜鷸
2か月前

レトロ詩「困窮作家」

ものをば書けど閑古鳥 働けば心休まらず ものをば書くは遊びにあらず されど飯には成り難し…

入山夜鷸
2か月前

レトロ詩「梅」

今年も梅が咲きました 雪の解けるを待たずして メジロの醒めるも待たずして 一輪ぽつちで咲きました 去年もかうして待ちました 月が昇れど其のままで 里が眠れど其のままで 仲間の咲くのを待ちました 今年の梅も落ちました 枝のあちこち紅や白 ふわりと薫るを見屆けて 一輪ぽつちで落ちました