三好達治『山果集』から学ぶ➂「石榴」「丘の上」
今回は三好氏の『山果集』から二つ、赤色の詩を学ぶ。
石榴
比喩表現で「くどさ」を薄くする
一行目の「石榴」は四行目の「火薬庫」と同じものである。
文字数の少ない四行詩で同じ単語を多用すると、くどさが生まれてしまう。
比喩表現を使うことでそれを回避しているというわけだ。
石榴といえばガーネットであるが、あえてルビーを使っているのも……というのは、さすがに考えすぎであろうか。
火薬庫、というのは、手榴弾(グレネード)が石榴から名づけられているのを知ってのことだろうか。
なんにせよ、同じものについて述べているだけで、内容を深くできるのは技である。
丘の上
それ一色の世界を表現する
この詩の色は、夕日の赤色をしている。
一行目には赤いサクランボ。
二行目の裸麦そのものは赤くは無いが、三行目に「夕刊売り」という単語があるので、夕日に照らされて赤く見えるのではないかと想像できる。
三行目にはホトトギスも登場する。「夕刊売り」は鈴を鳴らしたり声を出したりして移動するものなので、その役目のあるホトトギスは真っ赤な口の中を見せて鳴いている、と考えられる。
四行目の燈も、ヒナゲシも、これまた赤い。
けれどこうしているのは、赤いものを並べるのが目的だからではなく、夕方であることを表現する手段としてであろう。
詩を書くとき、表現の目的と手段を履き違えてはいないか。そこに気を付けることが出来れば、より多くの人が親しめる詩になるのだと思う。
余談ではあるが、同じ山果集にある「黄鶲」は対照的で、カラフルな詩なので比べてみると面白い。
《参考および一部引用:三好達治『山果集』より「柘榴」「丘の上」https://www.aozora.gr.jp/cards/001749/files/55867_64338.html 》
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