夏の執筆BGM②~ホラーな作品のとき~
夏といえば、そう、ホラーである。
ホラーと聞いて、どの恐怖が浮かぶだろうか。
怪談?ゾンビ?生きた人間?
私は泉鏡花が書くような「妖しく美しい」ものや、内田百閒が書くような「地味に思い出して怖くなる」ものが思い浮かぶ。
あのような類の、日常に溶けているような恐怖を私も詩にすることがある。そんな時に聴くのが、この曲。
耽美で冷たい三拍子「フォルラーヌ」
これはモーリス・ラヴェル作曲「クープランの墓」という組曲に入っているひとつ。
組曲の中で最も「墓」という文字が似合う曲ではなかろうか。
ホ短調を基本としているので、冷たい、くすんだミントグリーンのような色の曲だと私は感じた。石造りの洋館か教会の、日陰のような涼しさを感じる。
ちょっとした「あたたかさ」が、また恐ろしい
基本のテーマはもちろん不気味だが、曲の中盤は「あたたかさ」がある。
上の動画の01:00や03:50、04:20あたりで一瞬だけ組み込まれる曲調は、どことなく優しく「あたたかい」。空調の効きすぎた部屋を一歩出たような安堵感がある。
この曲の普段の調子が冷たい廃墟だとすれば、あの曲調は一瞬だけ差し込む秋冬の西日のように感じられる。
これがなぜ恐ろしいかというと、どことなく諸行無常を感じてしまうからである。
暖かい陽は何百年も繰り返し射すのに、廃墟は人の影もなく崩れかけ、だんだんといわくつきになっていく──自分もそれに取り込まれてしまいそうな、そんな気分になってくる。
ラヴェルの幻想的な曲で、ぞっと冷える作品づくりを
ラヴェルの曲は、陰と陽が水底のように揺らいでいる。この雰囲気に気分が上手く乗ると、同じように独特のゆらぎを持つ作品ができるのではないか。
それを信じながら、夏の静かな涼しい部屋で、フォルラーヌを聴きながらものを書きたいと思う。
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