80代のセンパイと暮らす。(33)

ここ数日、センパイはずっと頭が痛いと言っていた。珍しいことだ。

朝起きてくるのも遅くなった。イケメン好きのセンパイの大好物・福山雅治がNHKに出てるよ!と言っても、いつものようにテンションが上がることもなく、風邪引いたのかしら、リンパが痛いのよ、とぶつぶつ言っている。なぜか歯科医に行って解決しようとしたので、それは違うでしょ、とやめさせ、近所の内科医に行かせることに。

「一人で行けるの?」
「行けます」

しばらくして帰ってくると、薬を貰って落ち着いたのか機嫌が良い。

「風邪じゃないかって言われたわ」
「そう、良かったね。薬飲んでよく寝れば治るね」

が、センパイは寝なかった。
テレビを見ていた。
何やってるんだか、とイラつくがガマン。
機嫌が悪くなるより、マシである。

次の日、薬が効かなくて頭がまだ痛いと、またどんよりして起きてきた。

「昨日ちゃんと寝なかったからじゃない?」
「そうね〜」(あら、素直)

その日はベッドで寝ていた。それでも数時間ごとに起きる。また何やってるんだか、とイラつくが、ここもガマン。
そして、まだ頭が痛いのが治らないと3日目。

「えーっと、昨日ちゃんと寝てないよね?」
「私、長く寝られないのよ、背中が痛くなって。歳なのね」
「いやいや、歳じゃありません。誰だって長く寝ると背中は痛くなるんです」

3日目になると、段々と疲れてきた。真剣に治そうとしないくせに、ずっと痛いしか言わないことに。80も過ぎた人に冷たいかしら、と思いながらも、遂にとうとうと説教。

「私は風邪とか内科的な病気じゃないと思う。前にも腹痛で大騒ぎして病院に夜中に運ばれたことがあったけど、あの時は脇腹の筋肉痛だったよね。今回も目、肩から外科的痛みってことはないの?」

「そうねぇ。。。」

センパイは特に何も言わなかったが、首筋に温熱湿布を貼ったら痛みが治まったらしい。病院に行かないので、それで解決したのかは分からないが。

今回のことで、なんだか凹んだのは私のほうかも。病んだり弱ったりするセンパイを優しく受け止められない、労われない自分がいる。これからもっともっとこんなシーンが増えてくるだろうに、私の中に対応レパートリーがない。不安になった。老いていくセンパイと暮らすというのがどういうことなのか、ちゃんと分かっていないのかもしれない。

今日のセンパイは元気である。
サボってたから、今日は書を練習しなきゃと張り切っていた。
この元気に自分はいつまで甘えているのか、いられるのか。

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