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二番目の女。【5作目】「短編」

私は、やっぱり二番目の女だったみたい。
ここ最近、彼の様子がなんか変だと思った。
極め付きはさっきだ。
起きかけの朝の記憶。
急用なのか少し急ぎながら、
私を起こさないように用意をして、
彼は私には何も言わずに、
電話をしながら行っちゃった。
私が起きてるとは思わなかったのかな。
それに、普通に考えて
女の家で他の女と電話するかな。
でも、そんな抜けてるところも好き。
ただ、何か一言だけでもかけて欲しかった。
まだこのベッドにはあの人の温もりがある。
こんなことでも彼を感じられる。
そんな自分に嫌気が差しながら、
どこか悪くないような気がしている。
でも、最後の意地で私からLINEはしない。

彼はすごいモテた。
シンプルにイケメンなのもあるけど、
笑った顔の破壊力がやばい。
それでいて優しくて、どこか可愛くて、
遊び心があって、連絡も頻繁にしてくれる。
モテない方がおかしいくらいだ。
そんな彼から告白してくれた時は、
本当に夢かと思った。
だから、こんなことだろうとも
どこかで気づいていたのかもしれない。

とりあえず顔を洗いたい。
メイクもコンタクトもしていない
私は全部がボヤけてしまっている。
美希という名前が相応しくない見た目。
彼のために用意した歯ブラシが
恨めしそうに私を見ている。
私もこんなはずじゃなかったよ。
でも、こうなっちゃったら
もうどうしようもなかった。

用意を済ませてリビングに戻ると
見覚えのない紙が置いてある。
見ると彼の字。
私が起きる前に書いたのかな。
やっぱり彼から貰えるものは嬉しい。
ただ、内容は私が期待したものとは違っていた。

先に出るから
ゴミはついでに出しておくよ。
まだ若いからいいけど
酒も飲み過ぎないようにね。
日が落ちる前には起きるんだよ。
忘れないように書いて置くね。
美希、好きだよ。


これはなんだろう。
忘れないようにって。
馬鹿にしてるの。
マジで信じられない。
改めて怒りが湧いてきた。
それでも私は彼を嫌いになれない。
多分それもバレているんだろう。
ああ、私は
きみだけがすきなのに。

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