BANANA FISH 感想 20巻 ブランカの個人的意見
もう10月中旬なのに本当に暑いね。また大きな地震でも来そうで怖いな。
つー訳で今回は短くできそうかな?もう本編は終わったのでかるーく番外編の20巻の感想いきます。
PRIVATE OPINION
ブランカとチビアッシュの出会いの話。タイトルの
PRIVATE OPINION=個人的意見。
つまりブランカの個人的意見って意味でしょうね。痺れるわあ。語呂もいい上に意味を成している短編のタイトル。
吉田先生はセンスがアートよりなのにメッセージ性を盛り込んでくるからもうこれ以上褒めようがないんですよねぇ。。。私の語彙力では。。。
「器ならば創造した者に背くことはない だが彼は人間です」
この短編すごい完成度高いんですよね。ブランカのこのセリフなんて真理じゃん。
人間を創るってことはね、人間にはできないわけ。人間は人間から生まれてくるけど、創られるわけではない。
神は人間を創ったよね。でも人間は絶対に神にそむけない。なぜか?神を見ることすらできないから。
私たちは神が創りし地球に息をして生きている。
アッシュはゴルツィネに許されなければ生きていけないかもしれない。
でも、ゴルツィネは触れるし、見れるんだよね。
驕るのも大概にすべきだよ。私たちは人間でしかない。アッシュもゴルツィネも神の前では平等だ。
それはアッシュが生涯をかけ証明してくれたしね。
確かに地位や金、権力は私たちを区別する。
でもプライドを持って生き抜くことは、どんな地位の人間でも可能だってね。
そして最後、本編につながるこのシーン。
生きるすべを教えてくれたブランカを思い出しているようなアッシュの表情が素晴らしい。
もし敵になったら敵わないと思っている。アッシュは、権力に屈さずすむ術を教えてくれたブランカに感謝もしているでしょうね。でも彼の天秤は、英二に出会った瞬間からいつも英二側に傾いている。どんなときだって。
だから自分を救ってくれた、ブランカと英二、二人を天秤にかけたくないアッシュは複雑な表情をしているわけです。
でもブランカは理解してくれるよ、アッシュ。
それもわかって甘えてるんだと私は思うな。
天秤が英二に傾き、アッシュはブランカに牙をむく。
でもそれは、それすらブランカが理解するという信頼あってのこと。
だよね?
Fly boy, in the sky
英二に救われた伊部さんの話。
例えば私たちがBANANA FISHにある意味で救われたように、英二に伊部さんは救われたんです。
英二という棒高跳び選手は、伊部さんとってのアートみたいなもんってわけ。
胸を掴んで離さないわけ。
最後のこのシーン。
ホームラン・ボールのコマ。
センスの塊やん。
もう言うことないぜ。
野球ってアートだよね。夏の高い水色の空。それに浮かぶ白いボール。誰もがすぐ頭に浮かぶ美しい絵。共通認識。それが私たちの頭を掠め、芸術的に心をつかむ。
大好きな小説の一説「博士の愛した数式」
野球つながりで、「博士の愛した数式」の最後の一説が大好きで何度読んでも天才だと思うんだけど、紹介させて。
文字だよ?文字なのにね。目の前にまるでテレビみたいに映像が浮かぶのよ。
背景は暗く、観客もスコアボードも闇に沈み、江夏はただ一人が光に浮かび上がっている。今まさに、左手を振り下ろした瞬間だ。右足はしっかりと土をつかみ、ひさしの奥の目は、キャッチャーミットに吸い込まれてゆくボールを見つめている。マウンドに漂う土煙の名残が、ボールの威力を物語っている。生涯で最も速い球を投げていた江夏だ。縦縞のユニフォームの肩越しに背番号が見える。完全数、28。(「博士の愛した数式」より)
マウンドの江夏がまず私の目の前に現れ、振り下ろされた腕に呼応するように土煙が舞う。カメラワークは江夏の表情をアップに捉える。そしてまたカメラは引いてグランド全体が映る。阪神のユニフォーム。暗いマウンドに28の数字だけが見える。
確かに見える。
素晴らしい語呂で構成されたスピード感すら感じられる文章。そしてカメラワークすら浮かぶ的確な描写。
話は逸れたけれど、これが文字だとは思えない、素晴らしい一説でしょ。
博士の愛した数式もとてもおすすめですので読んだことがない人は是非。読みやすいよ。
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