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【唯一続いていること】出会って13年目の夫との仲⑤〜偶然を信じる〜

この記事では、飽き性な私が唯一続いている夫との仲について、出会った頃の出来事と感情(13年前の記憶)を言葉にしてみています。

前回のあらすじ

彼と議論するのは楽しかったが、それ以上のお近づきはなく、私はそれを思い出にして日常生活を送っていた。


偶然を信じる

電話は突然だった。
彼からだった。
私は、日が暮れた自室で新学期の科目選択に苦戦していたので、パッと脳みそが切り替わるようだった。

何の電話だろう。
思い当たる節がなかった。

電話に出ると、向こう側はちょっと賑やか。

「先輩たちと飲みに来てるんだけど、来ない?」

彼はそう言った。


春休みを長く感じたのは、気持ちの部分もあるが、事実震災の混乱が続いていたからだった。
私はなんとなく自分を見つめ直したくなっており、何をするとも決めず、アルバイトを辞めていた。


バイトを辞めておいてよかった。

私は「行く!」と返事した。


外に出ると暖かい風が吹いていて、
さっきまでの暗い気持ちは、もう晴れていた。


その夜は、4人で薄暗いテーブルを囲んで、真ん中にある石の上で肉を焼いて食べた。

火ではなく石の熱で湯気を出して焼ける肉。
それは初めての経験で楽しかった。


次第に、新しいことをやりたいよね、という話になった。

私は、その気になっていた。



その日、私が狭い部屋に閉じこもってもやもやした時間を過ごしていたのも、
彼が先輩たちと飲んでいたのも、
急な電話も、
初めて石の上で肉を焼いたのも、
震災も、アルバイトを辞めたのも全部、
別になんの計画もない、ただの偶然だけど、
私は新しいことをしてみたいという気になっていた。

勘だけど、うまく行く気がした。

偶然を信じてみよう。


そういうわけで、私は彼と、また一緒に何かをすることになったのである。


つづく

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