【唯一続いていること】出会って13年目の夫との仲②〜初めての共同作業〜
前回のあらすじ
俗世を諦めた仙人みたいな(恋愛回避型、とでも言っておこう)思考回路の私は、恋愛や結婚への願望がなかった。
初めての共同作業
これは持論だが、何はともあれ、まずは相手と共同作業からはじめることがおすすめである。
付き合うとか付き合わないとかの話になる前、意中の人でもそうでなくても、まず最初に、という意味である。
それは13年前に遡る。
私も彼(のちの夫)も大学生。
同級生たちと一緒に過ごすことが多かった私たちは、もちろんまだ付き合っていなかったが、ある時行事の役割分担で偶然ペアになった。
作業は短時間で終わるものだったが、私たちは目の前の役割を全うすべく奔走した。
「もうちょっとこうしよう」とか「このくらいの方がわかりやすいんじゃないか」とかを議論し、2人で決め、うまくできたらアイコンタクトで合図を送り合った。
私は、直感的に心地良さを感じていた。
普通は、仲良くなろうと思ったら、相手を知ろう、自分を知ってもらおうとしてコミュニケーションを図ると思う。
だけど急に前のめりに質問されたり、好きなものをアピールされたり、すぐにデートっぽいことに誘われるのが、私は苦手だった。
彼はそんなことは一切しなかった。
そして、相手のことは、共同作業をすることで結構わかった。
どんなことを考えているのか。
どんな姿勢で臨むのか。
どんな言葉を選ぶのか。
彼には終始ゆったりした空気が流れていて、そんなところが魅力的だと思った。
それに、彼と議論をすると、自分一人で考えるよりも良いアイデアが出てきて、なんだか前に進める気がした。
そういう意味では、私はもう彼のことを好きになっていた。
とはいえ、相変わらず恋愛回避の思考回路を持ち合わせていたので、その先を考えることはなかった。
ただ、親しく話せる異性の友人ができたことが嬉しくて、たまに心配して田舎から連絡をくれる母には「楽しく話ができる男の友達ができた」と報告した。
母は、「よかったね、大事にしなね」と言っていた。
かくして、初めての共同作業は無事に執り行われた。
つづく
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